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戦乙女イェルメイド  作者: 丸ごと湿気る
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百六十九章 再びユニテ村

百六十九章 再びユニテ村


 早朝、ヒラリーたちはユニテ村に出発した。デュリテ村で武器、食糧を補給し、万全の体制で再びデスウォーリアーを攻略するためである。

 馬車には小麦粉、レンコン、ウシガエルの燻製、そして少しばかりのブタの干し肉を満載して、乗車しているのは病み上がりのヒラリーだけだった。

 他のみんなは馬車の後を徒歩で着いていった。その中に、大きなリュックを背負った鍔広帽子のローブの若者もいた。若者の名前はマックスと言った。

 昨日の夜の村のお祭りで、オリヴィアの逆鱗に触れてあわや大乱闘になりかけたが、何とか和解した。その後、ヒラリーたちがユニテ村でデスウォーリアーなる怪物退治に出発することを聞きつけ、ヒラリーに同行を願い出た。

 セコイア教の僧侶見習いの彼は、魔法はおろか棍棒を振ることもできない。はっきり言って…何もできない。ヒラリーは危険だから同行を拒否したが、オリヴィアという女英雄の実物を目の当たりにして、この機を逃すまいと無理に着いてきたのだ。

 オリヴィアとマックスは二人して連れ立って歩いていた。

「オリヴィアさん、僕はですねぇ…あなたの偉業を後世にまで語り継ぎたいんですよ…ただそれだけなんです。」

「偉業⁉︎…ウン○まみれが偉業なんかっ!」

「違いますってば…あれはオリヴィアさんの美しい金髪を例えているんですよ。まるで金の星屑を散りばめたような金色…オリヴィアさんの金髪は明るい色調でいて深みがあります。そんじゅそこらの金髪とは全然違いますよ!それにその美貌!…勿体ない…女神様が顕現したようなその美しさを万民に知らしめないのは、実に勿体ない!」

「むふふ…それは否定しない…。」

「なので…これからもあなたの英雄詩を語らせてもらえませんか?」

「ダメェ〜〜〜ッ、絶対にダメェ〜〜〜ッ!」

「あの…オリヴィアさんが引っ掛かっているのは、ムニャムニャ…の部分ですよね?そこを…『金色こんじき』に変えます!…いかがですか⁉︎」

「む…『金色こんじき』…悪くはないわねぇ…。」

「金色のオリヴィア…ほらっ、語呂も良くなった!…オリヴィアさん、ロットマイヤー伯爵の手下どもを全滅させて、その後オークジェネラルを倒したんでしょう?…それを詩にしてるんですよ。」

「むふふふふ…まぁねぇ。嘘ではないわねぇ…。」

「そしてっ!今度はデスウォーリアーを倒すっ‼︎…その偉業を僕が余す所なく詩にして世に広めます。…ですので、『金色のオリヴィア』の英雄詩、今後も…許可してくださいよ!」

「ぐふふふふふふっ…どっしよっかなぁ〜〜…。」

 オリヴィアの妄想が始まった。


 コッペリ村で二人は劇的な再会を果たした。

 セドリックが駆け寄ってきて、熱い抱擁をしてくれた。

「オリヴィアァ〜〜ッ、会いたかったよっ!」

「セドリックゥ〜〜ッ、わたしもよぉ〜〜っ!」

「…もう、絶対に離さないぞぉ〜〜!」

「強く…もっと強く抱きしめてぇ〜〜…」

「…そう言えば、聞いたよ、オリヴィア。オークジェネラルとデスウォーリアーを倒したんだって⁉︎…凄いなぁ。」

「え…それをどこで…?」

「キミの英雄詩だよ。吟遊詩人があちこちでふれ回っていて…今、世界じゅうで知らない者はいないよ!」

「まぁ…恥ずかしい…。大した事はしておりませんですのにぃ…。」

「そんな事ないよ…僕の妻はこんなに美しいのに、その上世界で一番強い女性なんだって…僕は鼻高々だよ!」

「うふふふ…オークジェネラルやデスウォーリアーを倒すぐらい…妻のたしなみですわぁ…。」

 二人は道のど真ん中で熱い口づけをして…コッペリ村唯一の宿屋に急ぎ足で入っていった。…以下省略。


「…ぐへっ…ぐへへへ…。」

 呆けて口角からよだれを垂らしているオリヴィアは少し気持ち悪かったが、マックスは粘った。

「オリヴィアさんの英雄詩が全土に広まったら…もう、大変ですよぉ〜〜!どこに行っても、奢りでただ酒が飲めるかもしれませんよ!」

 オリヴィアは妄想から現実世界に戻ってきて…言った。

「…うひっ…仕方ないわねぇ…。そこまで言うなら…許可しましょう。いい事?…絶対に『金色のオリヴィア』でっ‼︎」

「了解しました!」

 一行はお昼を過ぎた頃、ユニテ村に入った。十数体のスケルトンが現れたが、あっという間に蹴散らしてジョット邸のモニュメント…地下墓所を目指した。

 アンデッドが出現する度に、慣れていないマックスは腰を抜かさんばかりに驚いていたが、それ以上に作詩に情熱を持っているのか、すぐに羊皮紙と簡易ペンを取り出して自分の体験を走り書きしていた。

 モニュメントに到着すると、ヒラリーたちはベースキャンプを設営した。

 ヒラリーがみんなに言った。

「…あれから一週間。地上のアンデッドはかなり減らしたつもりだけど、元に戻っている可能性は高い。みんな、アンデッドの奇襲に注意、周辺警戒を怠らないで!」

 そして…マックスにも念を押した。

「いいかい、本当に命の保証はできない…自己責任だからね。自分の命は自分で守ってね。」

「は…はい。」

 アンネリがやって来てヒラリーに言った。

「偵察、ちょっと行ってくる。」

「ああ、頼む。」

 アンネリはサリーとジェニとワンコを連れて、モニュメントの中に入って行った。…みんな、手慣れたものだ。以前のままだ…ヒラリーはそう思った。

 しばらくして、アンネリたちが偵察から戻ってきた。

「どうだった?」

「…元に戻ってた。」

「んむむ…やっぱりか。」

「地下一階は青緑のスライムがいっぱい…まぁ、これはどうでもいいんだけど…地下二階はやばい…。」

 ヒラリーとアンネリはチラリとアナを見た。アナは馬車の荷台から麻袋を降ろしていてそれがウシガエルの燻製肉だと気付くと、ポイッと地面に投げ捨てて知らんぷりしていた。…好き嫌いがはっきりしているな…。

「カーズドスライムも戻ってたかぁ…。どうしたものかなぁ…。何か、良いアイディアを考えないとなぁ…。」


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