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戦乙女イェルメイド  作者: 丸ごと湿気る
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百六十六章 ワイン取扱い始めました その5

この小説を時々、読み返しております。

重大なミスを発見いたしました。貨幣の価値がバラバラであることに気づきました。

随時、訂正をしていきたいと思います。

金貨1枚の価値を、ひとりの冒険者がつつましく暮らして約1年生活できるぐらいに考えております。

色々と計算してみて…銀貨は銅貨100枚、金貨は銅貨10000枚に決定いたします。

おかしいな、変だなと思われた読者の方…大変申し訳ありませんでした。

百六十六章 ワイン取扱い始めました その5


 次の日の朝、リヒャルドは大工を連れて、ワイン倉庫に来ていた。

「角材は15cm以上の太いのを使ってくれ。ここのワイン樽を積むから、頑丈な棚を…あれ?」

 ワイン倉庫は空っぽだった。

「ははは、キャシィ…やるなぁ。」

 キャシィはユーレンベルグ男爵の三階の部屋を訪れた。

「ユーレンベルグさん、ワイン…全部売っちゃいましたよぉ〜〜!」

「何っ…早いな…!」

「…それでぇ、六樽は手売りをしたので金貨90枚、あとの二十四樽は卸し売りしたので金貨180枚です、どうぞっ!」

 キャシィはユーレンベルグ男爵にお金の詰まった皮袋に売り上げ帳簿を添えて渡した。男爵は帳簿を精査して、ニンマリと笑って言った。

「まずまずの成果じゃないか、大したもんだ。それじゃぁ、これがキャシィの取り分だよ、受け取りなさい…」

 そう言って、男爵はキャシィに金貨12枚を渡した。ワイン三十樽の原価が金貨150枚で、純利益が金貨120枚…キャシィの取り分はその10%だ。

「うひょひょぉぉ〜〜っ!ひと晩で金貨12枚っ‼︎」

 男爵は有頂天になっているキャシィを諌めるように言った。

「…しかしだ。少し売り切るのが早すぎるな…。」

「…え?」

「こういった商品は、一度売り始めたら在庫を切らせてはいけない。欲しいという客を何日、何十日も待たせると…客が引いてしまうんだよ。売るのを少し抑えてでも…在庫を確保しておくのが、長く売っていくコツだ。難しいことだが、商品の入荷のタイミングを見計らって売っていくことが大事だな…。」

「…そうなのかぁ…勉強になりました。…ああ、しくったぁ…。今からワインをエステリックに発注するにも、早馬でもエステリックまで一週間…それから荷馬車で届くのは早くても十日、十七日もかかっちゃう…。」

 ユーレンベルグ男爵は大笑いした。

「わはははは…それは大丈夫だ、十日ぐらいで来るよ。」

「…なんでっ⁉︎」

 男爵は部屋の隅に置いてある30cm四方の籠を持ってきた。中には…なんと、鳩が入っていた。

キュックルルルゥ〜〜…。

「知ってるかい?『鳩屋』の鳩だ。こいつに手紙をくくりつけて飛ばせば、一日足らずでティアーク城下町の『鳩屋』の鳩舎に飛んでいく。そうすれば、『鳩屋』がすぐに私のワイン工場にその手紙を持っていくという寸法だ。」

「おおおおおぉ〜〜…ユーレンベルグさん、天才っ‼︎」

「商売は、奥が深くて…面白いだろぉぉ〜〜?」

「面白いっ!」

「…で、ワイン…次はどのくらい欲しいんだい?」

「三倍…九十樽でお願いしますっ、絶対売りますっ!」

「同じワインでいいのかな?実はうちのワインは五つの等級に分かれている。今回持って来たワインは全て一番下の五等級のワインだ。」

「んん〜〜…どう違うんですかぁ?」

「寝かせた年数が違う。等級が上がるごとに、味がまろやかになって美味しくなる。ただし、それなりに原価も高くなる…等級がひとつ上がると、原価はほぼ1.5倍になると思ってくれ。その代わり、付加価値で売値も高くなって利益率も高くなる。どうだい…売ってみるかい?」

「…そうですねぇ。ここは田舎だから、一番安いのでいいんじゃないかと思うんですよ。…でも、チャレンジしてみようかな…。九十樽の中に、真ん中のヤツを五樽ほど混ぜてください!」

「よし、分かった。五等級が八十五樽、三等級が五樽だな。」

 早速、男爵はインクで小さな羊皮紙に注文を書き込むと、くるくると丸めて筒に入れ、鳩の足にくくりつけて飛ばした。

 キャシィは一階の厨房に戻ると、グレイスに金貨一枚を差し出した。

「…お?」

「今月の護衛料です。これをイェルマに支払ってください。」

「…いいのかい?…養蚕の授業料だと私は思っていたんだけどねぇ…。」

「グレイスさんが護衛に雇ってくれてるおかげで、私は結構、好き勝手やらせてもらってます。感謝してます!…それに、養蚕については、まだ何ひとつ役に立ってないしぃ…。」

「あはははは、言われてみりゃ、そうだねぇ。ありがとう…もらっとくよ。」

 キャシィはこの辺りでは養蚕に最も詳しい。養蚕に疎いグレイスは名目上「護衛」としてキャシィをそばに置いたが、養蚕が稼働を始めるのは四月頃で、冬の五ヶ月の間、利益のない状態で月々金貨一枚の護衛料をイェルマに支払うのはなかなかにきつい。それで始めたのがキャシィズカフェだった。

 お昼が近づいた。そろそろイェルマ橋駐屯地のイェルメイドたちの休憩時間だ。グレイスとキャシィ、そして子供たちはせっせと準備をした。

 最初のイェルメイドの集団がやってきた。…げっ!先頭に…ベレッタとルカがいた。一昨日、駐屯地の隊長をやっていたはずなのに…今日も⁉︎…さては、当番を交代してもらったのか⁉︎

「キャシィはいるかっ⁉︎」

「ど…どもぉ〜〜…。」

「おい、昨日…連中が来ただろう…どうなった?」

「どうなったって…散々でしたよ…。ベレッタ師範、約束と違うじゃないですかぁ〜〜!」

「すまんすまん…で、売ったのか?」

「…売りましたよぉ〜〜。いくらでも構わんって言ったのにぃ…チェルシーさんに思いっきり値切られましたよぉ〜〜、もぉぉ…。」

「すまんすまん…で、買ったワインをどうするとか…何か言ってなかったか?」

「…そう言えば…ボタン様の祝い事とか…」

「祝い事?」

 ルカが思い出した。

「あ、きっとボタン様の誕生祝いだ。その時に、ワインも振る舞い酒に追加するんだっ!」

 ベレッタとルカは満面の笑みを浮かべた。きっと、今からただ酒の飲み放題が待ち遠しいのだろう…。

「そうか…ふふふ。まぁ、何はともあれ、ワインくれっ!」

「ありません!」

「何だと⁉︎…冗談はよせっ‼︎」

「冗談じゃありません。チェルシーさんが全部、買っていきましたよ。」

「うぬぬぬぬぅ…女王の誕生日まで…待てる訳がないだろぉぉ〜〜っ⁉︎」

「わ…私に言われても…宿屋と酒場にひと樽ずつ卸したから、多分、そっちで飲めるんじゃ…」

「それを早く言えっ、それを!…じゃなっ‼︎」

 ベレッタとルカはイェルメイドたちを連れて、キャシィズカフェを足早に出て行った。…何と言うか…自分勝手な人だ…。

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