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戦乙女イェルメイド  作者: 丸ごと湿気る
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百五十二章 デスウォーリアー その5

百五十二章 デスウォーリアー その5


 次の日、ヒラリーたちはモニュメントの前に陣取って、アンネリの報告を待っていた。

 アンネリはサリーとジェニを連れて、地下二階と地下三階の探索任務を遂行していた。そして、一通り見て回ったアンネリは地上に戻ってきた。

 ヒラリーは尋ねた。

「どうだった?」

 アンネリは不思議な笑みを浮かべて言った。

「…なんか、面白い事になってた!ちょっと、来て見てよっ‼︎」

 アンネリがしきりにヒラリーを手招きするので、ヒラリーはアンネリ、サリー、ジェニの後にくっついてモニュメントを降りていった。

 地下一階は平和だった。地下二階に降りると、ちらほらと青緑のスライムが天井や壁を徘徊しているのが見えた。

「こいつら、しぶといなぁ…。アナが嫌がるなぁ…。」

 そう感想を述べて、ヒラリーはアンネリたちに従って地下三階まで降りた。地下三階にはスライムの類はいなかった。そこで、サムから貰った「ライト」の魔法が掛かった小石をポケットから出して、デスウォーリアーの方向に放り投げた。

「…見えるかい?…盾を持ってる左腕をよく見てみて。」

 アンネリの指示に従って、ヒラリーはデスウォーリアーの左腕を目を凝らして見た。左腕のプレートアーマーの関節部の隙間から白いものが見えていた。

「なんだ、あれっ…もしかして…骨かっ⁉︎」

「そうっ!あいつ…左腕は骨だけになってるんだ。」

「何で…どうして、こうなった??」

「推測なんだけど…一匹だけ、壺トラップの中に青緑のスライムがいたんだ…。そいつはまだカーズドスライムになりきってなくて、デスウォーリアーに攻撃されても平気で、左腕のプレートアーマーの中に潜り込んだ…だと思う。一日経って、呪いでカーズドになって…デスウォーリアーの左腕を食っちゃったんじゃないかなぁ…。」

「なるほど…これはありがたい!肉がついてるとついてないじゃ、全然耐久力が違う…突破口になるなっ‼︎…で、そのスライムはどうなった?」

「…死んだ。あたしが見てる前で、あの斧の一撃を喰らって…。」

「…そうか…骨も残さず全部、食ってくれりゃ良かったのにな…。」

 ヒラリーたちは一度地上に戻り、みんなと協議した。そして、作戦を立案した。

 デスウォーリアーの左腕を攻撃して、その左腕を脱落させる。その後、デスウォーリアーの大きくて強靭なタワーシールドを奪って、その盾で防御しつつ戦局を維持する。そして、デスウォーリアーのプレートアーマーの一箇所に集中攻撃を仕掛けて…穴を開ける。後はサリーとジェニがその穴に銀矢を打ち込めば終了だ。

「言葉にすると簡単そうだが…ほぼ、これは決死の特攻に近い。みんな、気を引き締めて、各々の役割を十分理解して動いてほしい。いいか…死ねとは言っていない。ベストを尽くして、みんなで生きて帰ろう!」

 ヒラリーはレイピアを抜いて空に掲げ、みんなを鼓舞した。

 デスウォーリアー攻略は午前十時頃に始まった。これからみんなは…今までにない長丁場の死闘を経験する事になる。

 前衛は松明を持って前を進んだ。地下二階に降りると、松明をかざして青緑のスライムを焼き、追い払った。これで、アナが気分良く参戦できる。その中で、ワンコは早々に参戦辞退を表明した。ジェニがどんなに急かしても、ワンコは地面に根を生やしたように地下二階からお座りの状態で動かなかった。

 お留守番確定のワンコを尻目に、みんなは地下三階に降りていった。そして、十一人は石棺の上に座って動かないデスウォーリアーと対峙した。

 ヒラリーは前衛を二つに分けた。陽動班はオリヴィアとアンネリ…回避能力の高い二人でデスウォーリアーを引っ掻き回し、ターゲットを取り続ける。それと、左腕攻撃班のダフネ、デイブ、カール、ガスだ。タワーシールドを迂回して、隙を見つけて左腕の関節部…手首か肘を攻撃して左腕の欠損、脱落を目指す。ヒラリーは総指揮を執り、サム、ベンジャミン、アナはバックアップ、そしてサリー、ジェニは最後の瞬間のために待機だ。下手に遠距離攻撃を仕掛けると、デスウォーリアーの「ウォークライ」を発動させてしまう可能性が高いので、極力、弓の攻撃は控える事にした。

 オリヴィアは武器を持っていなかった。そのかわり、両手の皮のグローブの第一関節部にニカワで木片をくっつけ、その上から布をぐるぐる巻きつけていた。

「そいじゃぁ〜〜…いっくぞぉ〜〜っ!」

 オリヴィアは「飛毛脚」「鉄砂掌」「鉄線拳」を発動させた。

 オリヴィアの声にサムとベンジャミンは、あらかじめ用意していた「ライト」を付与した小石をデスウォーリアーの方に投げ込み、それからオリヴィアに「シールド」「アディショナルストレングス」「アディショナルデキシタリティ」のバフを掛けた。

 オリヴィアはデスウォーリアーに突進していった。オリヴィアが床に散らばった金貨を踏んで、デスウォーリアーが腰を上げた。オリヴィアは宙を飛んでデスウォーリアーの胸部めがけて渾身の飛び蹴りを放った。

 デスウォーリアーはそれをタワーシールドで防いだ。オリヴィアはタワーシールドを蹴って、後方宙返りして着地した。オリヴィアをターゲットとみなしたデスウォーリアーは斧で袈裟斬りしてきた。オリヴィアは三才歩でそれを回避すると、大振りで隙ができたデスウォーリアーの右腕にしがみつき、両足を絡めて腕ひしぎ十字固めに持っていった。

 …が、怪力で体重のあるデスウォーリアーは、倒れることはなくオリヴィアをぶら下げたまま、右腕をブンブンと左右に振り回した。

「ぎゃあああぁ〜〜っ…!」

 絶叫するオリヴィアを見て、ヒラリーは言った。

「ナイス、オリヴィアッ!第二班、突撃っ‼︎」

 ダフネたちはそれぞれありったけのスキルを発動させて、右側からデスウォーリアーに接近し、四人でタワーシールドを掴んで抑え込んだ。

 デスウォーリアーは右腕にオリヴィア、左腕にダフネたち四人の拘束を振り解こうとして巨体を大きくゆすって暴れ回った。

 五分ほど静観していたヒラリーは叫んだ。

「アンネリ、スウィッチッ!」

 アンネリが突撃して、デスウォーリアーの腹あたりに取りつき、両手のナイフで腹部を攻撃し始めた。

 それを見とめたオリヴィアは両手両足を離し、床に落ちてゴロゴロと転がってヒラリーのところまで帰ってきた。

「ひいいぃ〜〜…目が回るうぅ…。」

 帰還してきたオリヴィアにサムとベンジャミンが「ヒール」を掛け、アナはすぐに傷や骨折がないか触診した。


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