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戦乙女イェルメイド  作者: 丸ごと湿気る
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百二十二章 ジョット邸二階

百二十二章 ジョット邸二階


 ヒラリーパーティーはジョット邸一階の探索をしていた。正面玄関の広間から左側の廊下の三つの部屋に入ってみたが、金目の物は何もなかった。

「…拾得物が…ない。」

 オリヴィアは失意のどん底だった。

 ヒラリーは羊皮紙にマップを書き込んで、みんなを連れて正面玄関まで戻った。

「じゃあ、今度は右の廊下を探索してみよう…」

 すると、オリヴィアが何を思ったか、突然猛ダッシュで右の廊下を突撃していった。

「おいこら、オリヴィア!ひとりじゃ危ないだろぉ〜〜っ⁉︎」

 みんなで追いかけると、オリヴィアは突き当たりの部屋に入っていった。

 みんながオリヴィアが入った部屋に到着すると…そこは食堂だった。

「あ…まさか…。」

 アンネリは何か思い当たる節があった。

 食堂は散乱しており、そこにオリヴィアの姿はなかった。右手に扉があったので入ってみると、厨房に続いていた。その中で、オリヴィアが床に這いつくばって食器棚の隙間に手を突っ込んでいた。

「オリヴィア!」

 ヒラリーが声を掛けると、オリヴィアはパッと直立してにこにこしながら両手を上に挙げてブルブルと振った。

「ん…どしたのぉ?…なぁんもなかったよぉ。」

 オリヴィアの様子を不審に思い、ヒラリーはオリヴィアを下からずっと注意深く眺めた…。レザーアーマーを着込んでいてもなお目立つオリヴィアの胸が…両胸ともなぜかぺったんこだった。…と言うか、不自然に平らになっているのである。

「…オリヴィア、胸元に何か隠してる?」

「なぁ〜んも…隠してないよぉ〜〜?」

 ヒラリーはオリヴィアに近づいて、レザーアーマーの襟口に手を入れようとすると…オリヴィアはにこにこしながらヒラリーの手を掌で何度も払った。

「…ダフネ、アンネリ、ちょっと抑えて。」

「うひゃあぁ〜〜…やめてぇ〜〜っ!」

 オリヴィアを三人で抑え込み、胸に手を突っ込んでみると、銀の小皿が二枚出てきた。

「おい、拾得物は後で均等にみんなで分ける決まりだろぉ〜〜っ⁉︎…猫ババ、だめっ‼︎」

「…いやあぁ…違うのよ。いざという時、皮鎧だけじゃ…ね⁉︎プレートアーマーにしてみたのよ。…分かるぅ?」

「分からんっ!没収だっ‼︎」

 銀の小皿を没収され、オリヴィアはヒラリーの後ろで何かをぶつぶつ言っていた。そんなオリヴィアの背中にアンネリが忍び寄った。

「ロットマイヤーのお屋敷もそうだったけど…貴族のお屋敷って、どれも似たようなもんだねぇ。オリヴィアさん…右端に厨房があるって思ったんだよね…?」

「んん…アンネリ、何が言いたいのかな?」

 アンネリはオリヴィアの背中側の腰に少し触った。

「あぁ〜〜っ…ちょっ…!」

 アンネリはオリヴィアがベルトの後ろに挟んで隠していた銀のスプーンを摘み上げて、ヒラリーに手渡した。

「ああっ…裏切り者ぉ〜〜っ!」

 右の廊下と中央廊下もくまなく探索したが、これといったものはなかった。

「よし、一階は終わったな。次は二階だ…」

 ヒラリーたちは二階への昇降階段がある正面玄関の広間に戻った。先行していたサリーが弓を構えた…アンデッドか⁉︎

「待て…待ってくれ…撃つなっ!俺は傭兵のガストンだ、話があってきた…。」

 男は皮鎧にラウンドシールドとロングソードを装備していた。多分、剣士だ。

「傭兵が何の用だい?」

「…俺たちと組まないか?一緒にユニテ村のクエストをクリアしようぜ。…人数が多い方がいいだろう?」

 ガストンは正面玄関の向こう側を指差した。ジョット邸の正門付近に傭兵のパーティーが集結していてこちらを見ていた。

 この事態はヒラリーが予想した三つの内のひとつではあった。ひとつは、斥候を失ったことで索敵行動が不十分になり完全撤退する。もうひとつは、やぶれかぶれでこちらを強襲して身ぐるみ剥いで撤退。最後のひとつは、見かけ上はこちらと共闘関係を結び、索敵はこちらに任せてアンデッドを協力して倒し、お宝発見と同時に殺し合う…。

 こんなに早く決断するとは…リーダーのスコットはなかなかに好戦的な奴だなと、ヒラリーは思った。

「…考えとくよ、明日また来てくれ。それまでにはみんなで話し合って結論を出しておくから…。」

 ガストンは正門で待っている仲間のところへ帰っていった。

 アンネリ、ダフネ、オリヴィア、サリーたちイェルメイドはヒラリーに詰め寄った。

「ヒラリィ〜〜ッ、まさか傭兵と手を組むつもりぃ〜〜?あんなハゲタカみたいな連中と組んで…わたしのお宝持っていかれちゃったら、どおぉ〜〜すんのっ⁉︎」

 ヒラリーは言った。

「…私は組んでもいいかな〜って思ってる。…ものは考えようだよ。あいつらは私たちを利用しようと思ってる、だから逆に、私たちがあいつらを利用したらいいのさ。またデスナイトみたいなのが現れたら肉壁になってもらおう。…下手に陰でコソコソされて、いつ襲ってくるか…四六時中警戒してるよりかはマシだろう?」

 オリヴィアは納得してない様子だったが、他の三人は「一理あるな」と思っていた。特にサリーはヒラリーの読みの深さに感心していた。アナたちはリーダーのヒラリーが決めた事に不服はないようだ。

 気を取り直して、ヒラリーたちは二階へ続く階段を登り、二階踊り場から中央廊下を直進した。10m先を進んでいたアンネリが数体のアンデッドと遭遇したが、サリーとジェニが駆けつける前に銀の撒菱をつぶてにして全部倒してしまった。そして、何もなかったかのようにパーティーに向かって右手で手招きをしていた。ヒラリーはこのパーティーを頼もしく思った。

 アンネリが数m歩いた時、突き当たりの部屋の扉が開いた。そして、ラージシールドとロングソードを持ったフルプレートアーマーの男が現れた。

「デ…デスナイト…出たあぁ〜〜っ‼︎」

 アンネリは叫んで廊下を逆走した。ヒラリーが気づいてみんなに指示した。

「みんな、一階まで降りろぉ〜〜っ!」

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