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戦乙女イェルメイド  作者: 丸ごと湿気る
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百十九章 ジョット辺境伯邸

 久方ぶりに挿絵をアップしました。

 「四章 山賊退治」の中にヴィオレッタ初登場のシーンの挿絵を入れました。

 お暇と興味のある方はご覧になってください。

 挿絵のアップが小説の進む速度になかなか着いていけてません。これからは少し手を抜こうかな…とも思っております。><;

百十九章 ジョット辺境伯邸


 ヒラリーたちはスケルトンやゾンビを討伐しながら、ユニテ村の中心に向かってどんどん進んでいった。

 サリーはずっとジェニの横にいてアーチャーの指南をしていた。

「ジェニさん、5秒後、10秒後のパーティー全体のビジョンをイメージして射ってください。どの敵を倒せばパーティーにとって最善か…それを考えてくださいね。」

「は、は、は…はいぃっ!」

 ヒラリーは自分の背中の後ろに人の気配を感じた。

「…アンネリか?」

「…うん。」

 アンネリは「シャドウハイド」を使い、いろんな物の影を伝ってヒラリーの影に入ったのだ。

「…傭兵が後ろから着いて来てるよ…300mぐらい後ろ…。」

「そっか…ありがとう。できるだけ傭兵たちに姿を見られないようにね…。」

 傭兵たちは、私たちに露払いをさせて高みの見物を決め込むつもりだろう…そして、もし私たちがお宝を見つけたら一気に襲って奪うつもりだ。…まぁ、そうは問屋が卸さないけれど…特にオリヴィアなんかは激オコで絶対許さないだろうなぁ…。

 幾つもの倒壊した家があった。陰に隠れたアンデッドに警戒しつつ、ユニテ村の地図に従って歩くと、前方に大きな屋敷が見えてきた。

「あれが目的地のジョット辺境伯の屋敷だな。」

 ヒラリーがそう言って、屋敷に歩み寄ろうとした時…アナが呻き声をあげた。

「ううぅっ…。」

「どうした、アナッ⁉︎」

 ダフネがよろめいたアナを支えた。

「ちょっとめまいが…とても濃い呪いだわ…。間違いなく、あの屋敷が呪いの中心…根源だわ…。」

「…大丈夫か?進めるか?」

 ヒラリーの言葉に、アナは手を振って応えた。大丈夫そうだ。

 ヒラリーたちは屋敷の門をくぐり、枯れ果てた植栽ばかりの庭園を抜けて三階建てのジョット邸に到着した。

 すると、いきなりサリーが三階の窓に向けて矢を放った。矢は三階の窓から身を乗り出そうとしていたスケルトンの頭蓋を粉砕した。

「ジェニさん、こういう場合は窓なんかに注意してください。高低差があると前衛は手出しができませんから…。対処できるのはアーチャーと魔道士だけです。」

「…は、はひぃ〜…。」

 ジェニの指摘は適切だった。いくつかの開いた窓から無数のスケルトンとゾンビが窓枠を乗り越えて…降ってきた。数体のスケルトンは落下の衝撃で粉々になったが、ドスンッ、ドスンッという音を立てて落ちてきたゾンビたちは起き上がって襲ってきた。

「うわわぁ〜〜っ!」

 目の前に降ってきたアンデッドといきなり接近戦になって慌てふためくパーティーの中で、サリーだけはいたって冷静で銀矢にスイッチして正確にゾンビを射抜いていった。

「ジェニさん、アナ様とサムさんを襲おうとしているゾンビを排除しましょう。…後衛が死ぬと、パーティーが全滅しますよ。」

「…は、はいっ。」

 一体のスケルトンが背後からジェニに襲ってきた。

「ワンコッ!」

 サリーの声に、ワンコは自分のお仕事を思い出し、ジェニご主人に近づいてくるスケルトンに体当たりをした。大型犬の体当たりにスケルトンは吹っ飛んでバラバラになった。

 ジェニはサリーを見て…ため息をついた。

(…サリーは体じゅうに目がくっついているみたい…。)

 ダフネとデイブは後衛の盾となって、戦斧と戦鎚でアンデッドを殴り倒していった。ヒラリーはレイピアで牽制しつつ銀のナイフでとどめを刺した。オリヴィアはマイペースで二本の柳葉刀で交互に切り裂いた。

「サム、アナ…そろそろ用意してくれる⁉︎」

 サムとアナはヒラリーに目で応えて、小さめの木桶を用意し、その中にサムが「ウォーター」で水を溜めた。そして、アナが呪文を唱え始めた。

「美徳と祝福の神ベネトネリスよ、我らは汝の子にして汝に忠実なる者…願わくば、我らに慈悲のひと雫を以って命に潤いをもたらし給え…降臨せよ!神の聖水‼︎」

 木桶の中の水がぼーっと光輝いた。

 ヒラリーがレイピアを木桶の前に出すと、アナが聖水を手で掬ってレイピアの刀身に垂らした。他のみんなも自分の武器をアナの前に差し出した。聖水は非常に繊細な水なので、直接武器を木桶に突っ込んだりクレリックでない者が水に触れたりすると、その効果はその一度きりで終わってしまう。

 二本の柳葉刀に聖水を垂らしてもらったオリヴィアは大喜びでアンデッドを追いかけ回し、バッサバッサと斬りまくった。デイブも聖水付きのバトルハンマーでゾンビを横殴りにするとゾンビは倒れて動かなくなった。

「ほっほぉ〜〜っ!戦鎚はゾンビとは相性が悪かったが…凄い効果だのぉ〜〜っ‼︎」

「注意してくださいよ…聖水が乾いたら、元に戻っちゃいますからっ!」

 アナの注意喚起にデイブは手を振っていた。

 降ってきたアンデッドをおおかた片付けると、ヒラリーが大きな声でみんなに言った。

「よしっ、屋敷の中に突入するぞ。みんな、じゅうぶん注意してくれっ!」

 ヒラリーたちは屋敷の大きな扉の前に集まった。アナが「神の威光」を発動させると、すぐにダフネとデイブが扉を破壊した。その途端に、無数のアンデッドが堰を切ったように扉の内側から溢れ出してきた。しかし、扉のすぐそばに設置された「神の威光」の中に全部飛び込んで…浄化されバタバタと倒れていった。

「アナがいて良かったわねぇ…いなかったら、絶対やってられないっ!」

「二百ぐらいは倒したよね…もう…どんだけいるんだよぉ〜〜…!」

 みんなはそれぞれぶつぶつ言いながら…屋敷の中に入っていった。

「じゃあ…一階のマップを作成したら今日は終わりにしよう。」

 ヒラリーの言葉に、みんなは安堵した。その横で、オリヴィアだけはお宝…金目の物を探して一階をうろちょろしていた。

「なぁ〜〜んにもないわねぇ…お義父様の屋敷だったら、銀の燭台とかゴロゴロしてたのになぁ…。」

「めぼしい物は傭兵が持っていったんだろう…。」

「くっちょぉ〜〜っ!傭兵めぇ〜〜っ…!」

 オリヴィアは悔しがって、屋敷の敷石の床をドンドンと何度も踏み下ろした。それを見ていたみんなはちょっと怖がった。

「おい、オリヴィア…それは怖いから止めろ…!」

 

 傭兵の斥候のジャックはユニテ村のはずれでパーティーと合流した。

「あいつら、屋敷に入りましたぜ…」

「意外と早かったなぁ…今までの奴らとはちょっと違うようだな…。」

「…女クレリックがいやがった。」

「おお、どうりで…。こっちにも欲しいなぁ、クレリック。女かぁ…寝てよし使ってよし…だなぁ。」

「…俺が見た感じ、あいつらみんなスキル持ちみたいだ…今度は一筋縄じゃいきませんぜ。…どうしやす?」

「もうちょっと様子を見ようじゃないか…ふふふ、あいつらがアレを倒してくれりゃ有難いな…。」


 正面玄関の広間には二つの昇降階段、そしてそこから左右に廊下が続いていた。ヒラリーは一階の様子を間に羽ペンで羊皮紙に書き込んでいた。

「よし…左の廊下に入ってみようか…。」

 ヒラリーたちは左の長い廊下に進んでいった。三つの扉があったが、とりあえず無視して先へと進んだ。すると…廊下の突き当たりに人影が見えた。

「…‼︎」

 その人影はラージシールドとロングソードを両手に持ち、上から下まで全身金属鎧…フルプレートアーマーを装着していた。ヘルメットから見える顔は…窪んだ目に眼球はなく、鼻は陥没して肌は干からびていた。それはヒラリーたちを感知すると、ヘルメットのフェイスガードを下ろした。

「みんな…警戒してっ!」

 騎士兵のアンデッドは、まだ間合いが遠いというのにその場でロングソードを横薙ぎに払った。すると、先頭に立って、警戒して前に突き出していたダフネとデイブの盾に衝撃が走った。

ガガンッ!

 剣士スキル「遠当て」だ。ヒラリーはみんなに後退を命じた。

「こ…こいつ剣士だっ!「遠当て:草薙」を使いやがった…みんな、正面玄関広間まで後退っ‼︎」

 剣士スキル「遠当て:草薙」は、「遠当て:兜割り」「遠当て:牙突」ほどの威力はないが範囲攻撃である。剣を横に振ると、扇状に衝撃が飛んでいく。

 その瞬間、騎士兵は一足飛びに間合いを詰め、ダフネとデイブに斬り掛かった。剣士スキル「疾風」だ。

 騎士兵はダフネとデイブ二人を相手に斬り結んだ。騎士兵の攻撃は多彩で、袈裟斬りからそのまま切り上げて突き込んでくる…ダフネとデイブは盾で防ぐのが精一杯だった。

「何でアンデッドのくせにスキル使ってくるんじゃぁっ…それに…こいつ、めちゃ速いぞっ!」

 ヒラリーが叫んだ。

「廊下は狭いからまずいっ…そいつを広間に引っ張ってきてくれっ!」

 ダフネとヒラリーは攻撃を受けつつ、どんどん後退して正面玄関の広間まで騎士兵を連れてきた。そして、ヒラリーたちは騎士兵を遠巻きに囲んだ。

 ヒラリーは改めてその騎士兵を見て…気づいた。

「…かすれて見えにくくなってるが、こいつのラージシールドの紋章…近衛だ。こいつエステリック王国近衛騎士兵だっ!」

 騎士兵団の中の選りすぐり、近衛騎士兵…強いはずだ。ダフネとデイブ、二人との戦闘をちらりと見たが、あの無駄のない動きは同盟国共通の王国騎士剣法だ…ヒラリーは以前、戦場を回った時の記憶を思い出していた。

「みんな、気をつけろっ…多分こいつは、殺された後にネクロマンサーから直に呪いを受けた個体だ。記憶はないが…個性は残ってるっ!」

 ヒラリーたちはデスナイトと対峙した。

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