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戦乙女イェルメイド  作者: 丸ごと湿気る
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百十二章 ユニテ村へ

百十二章 ユニテ村へ


 三日後の朝、大型馬車が宿屋の前に横付けされた。ヒラリーパーティーがユニテ村に出発するのだ。

 見送りにはグレイス、オーレリィ、キャシィそしてマーゴットが来ていた。

「オリヴィア、無茶しないでね。」

「わかってるって、オーレリィ。」

「しっかり稼いでおいでっ!」

「はいっ、お義母様っ!…キャシィ、お母様のこと、頼んだわよぉっ‼︎」

「任せといてくださいっ!」

「アナ様…無事に帰ってきてくださいまし、お待ちしておりますよ。」

「分かっています、マーゴットさん。…行ってきます。」

 不気味な笑みを浮かべて、マーゴットはアナに近寄って耳打ちをした。アナは顔を歪めた…。

 みんなは馬車に乗り込み、コッペリ村にしばしの別れを告げた。

 ジェニとサリーは馬車には乗らず、弓を背負って馬車の後をひたすら走って追いかけていた。サリーの特訓はもう始まっていて、体力をつけるためにサリーに走らされているのだ。ワンコは何かの遊びだと思って尻尾を振りながらジェニに随走していた。

 御者台で馬を操っているヒラリーに隣に座っているアナが話しかけた。

「ヒラリーさん…赤字だったんですってぇ…?」

「んん?…ん…。」

「さっき、マーゴットさんに脅されましたよ。…もし、帰って来なかったら…売掛金の銀貨二百十二枚はオーレリィさんとグレイスさんから回収するって…。」

「…マーゴットは血も涙もないなぁ…。」

 ユニテ村のクエストのための武器や防具をイェルマの鍛治工房に発注したが所持金では足りなかったのである。


 ユニテ村への旅は順調に進んだ。五日後、ヒラリーたちの馬車はユニテ村へと続く一本道に差し掛かった。

 前方に騎馬返しの柵が見えてきた。その傍には二人の衛兵の姿があった。

「止まれぇ〜〜、その馬車止まれぇ〜〜っ!」

 ヒラリーはすぐに、指名手配されているオリヴィア、ダフネ、アンネリに馬車から降りて身を隠すように指示した。三人はこっそり馬車から飛び降りて、一本道の脇の林の中に隠れた。

「お〜〜い、ここから先は侵入禁止だぞ。引き返せっ!」

 ヒラリーは御者台から尋ねた。

「あんたたちは…?」

「エステリック王国の憲兵だ。ここから先はユニテ村といって…バケモノの巣だ。人が立ち寄らないように、ここで道を封鎖している。」

「ああ…私たちはそのユニテ村に用があるんです。私たちは冒険者です。調査のために、はるばるティアーク王国からやって来たんですよ…。」

「…ティアークから?」

 ヒラリーは、はっと気がついてギルマスのホーキンズから受け取った封筒を衛兵に手渡した。衛兵はその中身を確認して笑顔を見せた。

「なるほど…分かった。いやぁ〜〜、ありがたい。できればバケモノを一匹残らず退治してもらいたいものだ。エステリックから来たとうい冒険者が何人かここを通ったが…帰ってきた者は数少ない。頑張ってくれ、健闘を祈る!」

「今は…ユニテ村に向かった冒険者はまだ残っているんですか?」

「…いない。いるのは…傭兵のグループだな。十五人だったかな?…あいつらも、どうなったことやら…。」

「そうですか、ありがとう。」

 柵を退けてもらって、馬車はなおも一本道を進んだ。脇の林を並走していたオリヴィアたちを途中で荷台に乗せ、馬車はユニテ村へと向かった。

(傭兵かぁ…ギルマスも言ってたけど、思った以上に厄介なクエストになりそうだ…。)

 ヒラリーの心配をよそに、荷台ではへばって倒れ込んでいるジェニにアナとサムが回復魔法を掛けていた。その横で「だらしないなぁ」と言って、オリヴィアがけらけらと笑っていた。

 その時、ヒラリーが前方を見て叫んだ。

「みんな、警戒体制っ!」

 緊張が走った。一本道の向こうからガチャガチャと音を立てて、何者かがこちらに向かって走ってきていた。スケルトンだ。

 なるほど、こんなところまでアンデッドが出没するのか…あそこに検問所を置いたのは正解だ…ヒラリーはそう思った。

 オリヴィアが幌から出て御者台に移ってきて、前方を凝視した。

「む…むむっ!あ…アイツかぁぁ〜〜っ!よくもよくも…今の今までわたしをコケにしやがってぇ〜〜…!」

「ど…どうした、オリヴィアッ!スケルトンに何か恨みでもあるのかっ⁉︎」

「…小さい頃…栄養失調でガリガリだったわたしをからかって、イェルマのみんなが言ったのよっ…!お前ユニテ村からきたのか?…とか、スケルトンオリヴィア…とかっ!…全部、コイツのせいなのねぇ〜〜っ⁉︎」

「…違うと思うぞ…。」

 オリヴィアは馬車から飛び降りると、スケルトンに猛烈な勢いで走り寄って渾身の飛び蹴りを喰らわせた。スケルトンは跡形もなく木っ端微塵に粉砕された。

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