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「俺達は貫太のあとをつけて、ちあきちゃんを確認しようとした」
堂々とあとをつけたと言い出した牛島に何か言ってやりたい。
言ってやりたいが、話がそれるので貫太はツッコむのをやめた。
「だが、俺達はちあきちゃんを確認する前に貫太に見つかった」
「なのに、貫太は俺達がちあきちゃんを見ていると言う」
「もういいって」
牛島と九条がかわるがわる状況説明するのをうんざりした顔で見ていたスーは二人の会話を止めると何の前置きもなく貫太に聞いた。
「あの七宝学舎の制服着てた男がちあきちゃんなんだろ?」
「? そうだよ?」
「だあーっ、やっぱりかよ!」
なぜか頭を抱える牛島を見て、貫太は唐突に閃いた。
「もしかしてだけど、千晶ちゃんのこと、女子だと思った?」
「そうだよ! そう思うだろ! あんないそいそと帰ってさ! 名前、ちあきちゃんだし!」
牛島にグイッと迫られ、貫太はそうかと腑に落ちる。
貫太が女子と会う予定だと思った三人は貫太のあとをつけて相手の顔を見ようとしていた。そういうことだった。
「……そうなのか。千晶は女子の名前でもおかしくないのか。気づかなかった」
「重大な発見したみたいな言い方するなよ」
ようやく理解できた貫太に九条は呆れ顔でツッコむ。
三人は七宝学舎の現役生徒から何か教えてもらうために落ち合ったのだろうと勝手に推測したらしい。
全然当たっていないが、色々聞かれても困るから、貫太はそのままにしておくことにする。
「で、何か受験に役立つこと教えてもらえたのか?」
「え……えっと、うん。色々……教えてもらった」
三人ともが思いのほか真剣な顔で自分をじっと見つめるので貫太は一瞬、言葉に詰まった。
「そっか。よかったじゃん」
牛島がカラッと笑うと他の二人が頷きながら、どことなくホッとした様子を見せた。
もしかして進路をそこそこ偏差値学校から雲の上偏差値の学校に変更したことで心配させていたのかもしれないと気づき、貫太はありがたいような申し訳ないような気持ちになる。
そんな貫太のことは完全に放置し、スーが自治会館について話しだした。
「……そこで公民館て呼ぶ由来を説明されて」
「うわー! スーさん、それは言わなくても!」
スーは悪い顔をしながら公民夫妻の話を何も疑わなかった貫太の話を嬉々としながら教えるのであった。




