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思ってもみなかった断言に貫太の目は丸くなる。
嫌じゃないのかな、その家に生まれただけで従者契約なんて呼ばれてる契約をするなんて……ともごもごと呟くと千晶はほんの少し笑った。
「それを言うなら貫太だってそうだろ」
きょとんとする貫太に千晶は続ける。
「勝手に神様代行に選ばれて、しかもそれは断ることもできないって結構理不尽だと思うぜ」
それに比べて従者家系の人間は自分の意志で契約するかどうかを決められる。本人次第なのだ。
言われてみれば寿老人の印が現れたとき、神様代行をするかどうかの確認は一切とられなかった。そのまま寿老人として今ここに在る。
貫太は印が出現した者がお役目辞退をした場合、即追放になるという事実を知らなかったが、知っていたら勝手な話だなと思ったことだろう。
「契約したいのは七宝の恩恵を受けたいってことかな?」
「……そうだな」
人生イージーモードを望んでいるということか。
その望みはよくわかる。誰だってハードモードの人生なんか歩きたくはない。
だが本当にそれだけだろうか。
イージーモード万歳なら何がなんでも契約してもらおうとするはずだ。
千晶からはそんなガツガツしたものは感じない。ガツガツはしてないが何か切実な印象は受ける。
『腹を割ってよく話し合いな』
不意に弥彦の言葉を思い出した。
あれはてっきり契約に前向きではない自分に時間をかけて考えることを勧めているのだと思っていたが、違ったのかもしれない。
そもそも貫太には割る腹などないのだ。契約したくないと口にはだしていないものの、千晶にはおそらくその考えは伝わってしまっている。
腹を割って話すことがあるのは千晶なのだ。話し合いでその何かを聞くように勧められていたとようやく思い当たる。
「なあ」
千晶に呼びかけられ、相手を完全に放置していたことに気づいた貫太は慌てて顔を上げた。




