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「そーかそーか。たまには息抜きも必要だ。行ってこい」

「そうだな。楽しんでくるといい」


 貫太がアニメイベントに誘われたことを話すとその日の勉強会は休みとなった。


「ちょうどよかった。俺もそれ誘われてたんだ」


 隆もそのイベントに参戦予定だったらしい。


 息抜きも必要だと最もらしいことを言っていたが、イベント参戦のため単に休みたかっただけだろう。


 そう思うと貫太は自然にジト目で隆を見つめてしまっていた。今日はジト目の出番が多い。


「よし! 今からりんごを賭けてクイズ大会をしよう!」

「急だな」

「話を逸らそうとしている」


 なんの脈絡もなく隆は突然のクイズ大会開催を宣言する。

 弥彦は笑いながらつっこみ、真守は冷静に隆の思惑を解説した。

 スーは「クイズは苦手だ……」と深刻な顔をしている。この世の終わりみたいな顔はしないでほしい。余命宣告でも受けたか。


「りんごは全部で十九個だろ。とりあえず一人三個ずつとして……」


 隆は貫太達に三個ずつ、りんごを渡していく。


「俺んとこは二人暮らしだから二個でいいぞ」

「何言ってるんですか。三個いりますって」


 弥彦に対して当たり前のように三個押しつける隆。三個いる根拠がわからない。ふっと笑いながら受け取る弥彦は大人だなと貫太は感心した。


 隆は貫太達四人にりんごを配り終えると残り七個をクイズに正解した賞品にすると説明した。

「クイズは七問な。一問当てるごとにりんご一個渡していくから」

「それだと斎藤さんの取り分ないですけど」


 スーの言う通りだ。

 隆はクイズを出題する側だから解答してりんごを確保することもできない。

 

「実は三袋貰ってさ。一袋は家に置いてきたんだ。だからここに持ってきたやつはみんなで持って帰ってほしいんだよ。俺の分は家にあるから遠慮しなくていいぜ」

「隆、本当か?」

 今さっきまで穏やかに笑っていた弥彦がひどく疑り深そうに隆を見ていた。

 そんな弥彦を心配性だと隆は笑い飛ばした。


「ホントですって。じゃあ、第一問。ー6ー(ー4)は?」


「え?」

「はい、ー2」

「正解」

「え?」


 動揺する貫太と驚くスーをよそに真守は満足そうにりんごを受けとった。


 貫太はそれを見ながら呆然と呟いた。

「フ、フライパンは……?」

「フライパン?」



 Q.パンはパンでも食べられないパンはなーんだ

 A.フライパン



 そんな感じの問題が出ると思っていたが、どうやら違ったらしい。

 フライパン問題はどちらかというとクイズではなくなぞなぞだが、当の本人はそんなことにはまったく気づいていなかった。


 率直な感想は「思ってたのと違う」だったが、貫太と同様に驚いていたスーの様子をチラッと見るとスーは握り拳でやる気を漲らせていた。目がギラついている。

 よくわからないが数学に希望を見出したらしい。貫太は気が遠くなる。


 ハッと気づくと第二問も終わっていたようだ。スーが景品のりんごを恭しく受け取っている。


「貫太坊、正解なしはまずいぞ」

 弥彦に隆が今、出している問題は七宝学舎高等部の過去問だと教えられる。それは確かにできないとまずい。

 言われてみればあの問題は先週、解いたばかりのような気がする。

 だったらできる。多分できる。できる、はず。できるだろうか……。


 スーは相変わらずやる気と希望に満ちている。一度も解いたことのない過去問に希望を見出せる頭脳が妬ましい。


「第三問」


 一問でも答えられなかったら後で何を言われるかわからない。危機感を抱いた貫太は自然と前のめりになった。


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