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スー回3。


 まだりんごに話を持っていけてないが、とりあえず今は『もみじ』を分けてもらえるというだけで満足だ。

 平静な表情(かお)を装ってはいるがスーの気分のアゲはただいま天元突破中である。


 スーがなんとなく周りを見渡すと隆達と喋りながらも問題をさらさら解く貫太の姿が目に入った。


「あ、そうだ。ここって部屋を借りるのにお金いるの?」


 貫太達の話題が自治会館になったことでスーは改めて来門の公民館話を思い出した。


  来門は外見もぶっ飛んでいたが、中身もぶっ飛んだ人のようだった。なんであんな嘘を平然とつけるのか。


 公民夫妻て。

 それはないわ。


 だが不思議なことに貫太はあの話を完全に信じているようだった。


 どうしてニヨついた口元に気がつかないんだと心の中で問いかけたが貫太にはもちろん届かなかった。


 あの話は嘘だと貫太に伝えないといけないなと思い、スーはすぐやるリストにそれを追加する。


 あんな嘘話を信じるなんて恐るべき貫太の受け入れ力。

 一緒にいて飽きない男だ。


「で、千晶ちゃんと約束してて部屋借りれないかなと思って」

「言えば貸してくれるだろうが、家じゃなくていいのか?」

「俺の家は千晶ちゃん()から遠いし。ここだったら千晶ちゃんも帰り楽だし、俺は終わったらそのまま勉強会参加できるしいいなって思ったんだけど。ダメかなぁ」

「いけると思うぜ。帰り、いずみんに聞けよ」


 ちあきちゃん……。聞いたことのない名前だが貫太の親戚かもしれないなと思う。


 ここの自治会館は自治会員だったら無料で部屋を借りれる制度らしく貫太はそれを聞いて安心したようだ。そういえばとニンマリしながら話し始めた。


「兄ちゃんさあ、何で自治会館なのにみんながここを公民館て呼ぶか知ってる?」

「いや……知らないな。そういや、なんでだろうな」


 まさか。

 このタイミングで言うつもりか。

 スーは咄嗟に声をあげようとした。


「待っ……」


 スーが止める間もなく、貫太は得意げな顔で来門から聞いた公民夫妻の話をこれでもかと披露した。




「……貫太坊、かつがれたな」

「いずみん、やるなぁ」

 弥彦が気の毒そうにしている隣で隆は爆笑していた。真守は無言だったが、ぷるぷるして笑いを堪えているのがわかった。


「かつがれた……。嘘なの? え、どこからどこまで!?」

「全部だろ」

「全部だ」

「……全部だと思う」


 貫太の驚きに親戚達がこぞって答えた。

 ただ一人沈黙を守っていたスーに貫太がゆっくりと顔を向ける。


 言いにくい。

 言いにくいじゃないか。

 そんなに見ないでくれ。

 スーは貫太の視線から逃れようと目を逸らしたまま告げた。


「あの話は嘘だと思う」


 公民夫妻に関しては存在自体が嘘だろう。


 愕然とした顔で自分を見る貫太に後から嘘だと教えようと思ってたとスーは言い訳したが嘘くさく聞こえるのだろう。貫太は終始ジト目だった。


 いや、でもなぁ。

 あれ信じないだろう。

 どうして自分がすごく悪いことをした気分にならねばならないのか。世の不条理を感じるスーだった。


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