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 部屋に入ると来門が言った通り、弥彦が机や椅子などを準備をしている最中だった。


 全員で机と椅子を用意する。

 すでに隆から連絡があり、弥彦はスーのことを知っていた。

 弥彦は自ら貫太の親戚と名乗り、孫が後から来る予定であることを告げる。

 七宝の他の三人──紗帆、ナオミ、葉月は来ないようだ。どういう関係か説明に困るので来ないでくれてよかったと貫太はそっと胸を撫でおろす。


「隆はどうしたんだ。一緒に来るんじゃなかったのか」


 遅れることは連絡してなかったらしい。


 途中までは一緒だったが、スーを誘った張本人は用事があるから先に行くように言うとどこかに消えたのだ。


 宿題を始めるが、スーは話し足りなかったのか手は止めずに貫太に話しかけた。


「なあ、来門さんて、あの結婚式の新郎みたいな格好、よくしてるのか?」

「いずみんはいつもあの格好だぞ」

「いずみん?」

「いつも? それって……」


 弥彦の返答に貫太とスーはそれぞれ違う方向に食いついた。

 スーが続けようとしたとき「お待たせー!」とスーの質問を完全に遮る形で隆が声高らかに部屋に入ってきた。


「そんなに注目されると照れるなぁ〜」

 部屋にいた三人全員の視線を受けてそう(のたま)った隆を三人はさらに無言で見つめ続けた。


「誰も待ってなかったし、注目してたのは大声だったからだと思う」

 隆の後ろからひょいと出てきた真守が隆の発言を一つ一つ訂正しつつ、机にりんごの入った封筒を置く。

 置いた拍子にりんごがゴロリと出てきた。

 続けて隆も置き、またもやりんごが出てくる。

 ゴロリゴロリと机の上をりんごがのたうつ。


 ……りんごが増えている。


 貫太とスーは同時にそう思った。

 会ったときは一袋だったはずなのに。


 りんごは隆の友人からのお裾分けだった。

 実家から大量の救援物資が届き、一人暮らしの身では処理しきれないと判断した友人が皆にせっせと配給していたのを受け取ったとのこと。

 結局、それでも捌ききれず、二度目の受け取りを懇願されたらしい。


「みんなも何個か持って帰ってくれよ。さすがにこの量は多いからさ」


 隆はじっとりんごを見てるスーにも声をかけた。


「鈴木くんもよければ持って帰って」

「あ、はい」

 遠慮することなく、スーはむしろかぶせ気味に返事をした。


 真守も加わって勉強を再開する。

 ここで意外な才能を見せたのはスーだった。勉強を教えるのが上手い。

 スーは算数に手こずっていた真守のノートを覗き込むと優しく、丁寧に解説しだした。ひどく手慣れていた。


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