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 契約するかどうかはしばらく考えて結論を出せばいいと言われ、話は終わった。


 しばらくとはどれくらいなのか。

 三日なのか一週間なのか。一ヶ月は流石にダメだろうと思うが。

 貫太はそんなことを考えながら家までの帰り道を歩いていた。


 契約はしてもしなくてもいい。

 そう言われて肩の荷が下りた気分になったのは確かだ。

 ほぼ契約しない方向に気持ちが傾いているが、わざわざこんな顔合わせをさせるのだから契約するのが当然なのかもしれない。


 そもそも千晶は契約したいのだろうか。

 千晶は契約してくれなくて大丈夫だからと言っていた。

 あの時の千晶の態度を思い返すと何かあるのかと心配になる。契約しないと何か罰でも受けたりするのかも。


「あれは千晶ちゃんは契約したいと思ってるけど、俺に無理はさせたくない的な優しさからくる発言……?」

「貫太坊、独り言の声が大きいぞ。返事したほうがいいのか迷うじゃねぇか」


 突然の返答にビクッと肩が跳ね上がる。

 そうだった。完全に存在を忘れていたが、弥彦と一緒に帰る途中だったのだと今更ながらに思い出す。

 本当に今更だった。


「完全に一人の世界に入ってたな。俺のこと忘れてたろ」

「え、あ、あー……すいません」


 ニヤニヤしながら弥彦が指摘してくるのに対して何か言い訳をしようとしたが何も思いつかなかったので貫太は素直に謝った。


「貫太坊、マニュアル読んだか?」

「読みましたよ。ちょっとだけ」


 ちょっとだけの部分がひどく小声になってしまったのは見逃してほしい。

 本当に読んだのはちょっとだけだったから。

 何か聞かれるのかとビクビクしてると弥彦はそうかと頷いた。


「マニュアルにな、七宝は半神半人だって書いてあったろ」


 覚えている。

 最初のページに書いてあったことだ。


 七宝とは半神半人である。

 手に印が顕現してる間、七宝は病気になることも死ぬこともない。


 のっけからすごいことが書いてあるなと思ったものだ。

 印が出てる間だけとはいえ、病気にもならないし、死なないなんて無敵状態ではないか。


「真にうけるなよ」


 厳しい口調とは裏腹に貫太を見守るような表情(かお)で弥彦は言葉を続けた。


「七宝は所詮、七福神の代理だ。代理でしかねえ。確かに人間離れした力を使えるようになるけど、これは自分で何かを成し遂げてそうなったわけじゃねえ。七宝に選ばれたのだってたまたまだ。俺達はどうしようもなく、ただの人間なんだよ。そこだけは勘違いするなよ」

「はい……」


 調子に乗って力を私利私欲に使用したり悪用したら追放、もしくは天罰が下される。


 簡潔に書かれた一文を思い出し、貫太は自分の内側から寒気を感じて体がぶるりと震えた。


 それを見てた弥彦はお節介ですまねぇなと笑う。

 これだけはどうしても言っておかないといけないと思ったからとしんみりした調子で続けた。


 対して貫太は、見られるとだいぶ恥ずかしいあの必殺技を使いながら自分が半分とはいえ神だと思える神経は結構すごいのではとその図太い精神を羨ましく思っていた。


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