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弥彦は亀山にべったら漬けを預けると警告した。
「食うなよ」
「食わねえわ!」
打てば響くようなツッコミであった。
あんなきっちり密封された状態の漬物をつまみ食いされる心配をするなんて、亀山は余程の食いしん坊とみた。
弥彦はそれ以上、亀山と戯れることなくスタスタと敷地の端まで歩いていった。
弥彦が仕事をするのを少し見学してから、自分の作業に取りかかろうと思い、見ていると所定の位置にたどり着いた弥彦は気負った様子もなく歩きながら普通のトーンで必殺技を出し始めた。
「長寿ボンバー。長寿ボンバー長寿ボンバー長寿ボンバー長寿ボンバー長寿ボンバー、うん、喉の調子が悪ぃな、長寿ボンバー長寿ボンバー……」
途中で咳払いをしながらも弥彦はずんずん歩いていく。その歩いた後には繊細な光が溢れていた。
その様子を亀山がジトリとした目で見ていた。
「相っ変わらずだな。あれよ、年寄りがわけわかんねぇことぶつぶつ言いながら歩いてるって事情知らねぇ奴が見たら怖がるだろ」
「徘徊老人に間違えられるかもしれませんね」
「聞こえてんぞぉっ。長寿ボンバー長寿ボンバー長寿ボンバー長寿ボンバー……」
まあまあ離れた距離で特に大声でもないあの話し声を聞きつけるとは、弥彦は間違いなく地獄耳だと思った。
あんな感じでこなすのかとぼおっと弥彦の様子を見ていたが、貫太もいつまでも見てるわけにはいかない。
自分も仕事に取りかからないと。
そう思って慌てて弥彦とは反対の端に急ぐ。
貫太に割り当てられたのは敷地面積のおよそ三分の一ほど。
弥彦と同じように必殺技を繰り出しながら端から端まで歩いていくのが効率がよさそうだ。
亀山達の視線を感じるが、そこは気にしないようにした。というか、誰かに見られてると思うと、とんでもなく恥ずかしくなるから誰にも見られていないと自分に言い聞かせるしかないのだ。
「長寿ボンバー!」
ポーズ付きの全力ボンバーである。
派手なエフェクトが飛び散ったあと、あたり一面を埋め尽くすのを見て亀山は感心したように口を開いた。
「おおお〜。ド派手だなぁ。本人とエフェクトの印象、全然違ぇな」
真鶴は千晶に向かってにこりと微笑んだ。
「ですね。それにしてもよかったですね。貫太くん、いい子そうで。これならいい契約ができそうですね」
「……そっすね」
三人の会話は貫太の耳には届いていなかった。




