43
「教えたところでどうにもならないわ。もうはるちゃんが当主になる芽は潰えたもの。聞いたら自暴自棄になるんじゃないかしら」
何も解決していないどころか事態が悪化するだけだと紗帆はにべもなく言った。紗帆を見るとひどく悲しそうだったので何も言えずに貫太は口をつぐむ。
忌み子が仮当主から当主にまで辿り着けないのは、力を失う確率の高さのせいだった。統計の結果、数字にして九割以上の忌み子は力を失うという傾向が出ている。
力を失った忌み子は、子をもうけても一族の力が継承されない。
思わず口から言葉がこぼれ落ちていた。
「力を継承できない人間は当主として認められない……」
そうだった。なぜ忘れていたのだろう。
ほんの少し前に自分も言われたではないか。力の継承ができないから自分は家の跡取りになれないのだと。
貫太と違って晴香は自分が中山家の正当後継者であることを心の支えにしている節がある。
もはや晴香が当主になることはあり得ない。
それを晴香に伝える勇気は持てそうになかった。
「ほっとけばいいんじゃない。葉月さんは葉月さんでうまく立ち回るだろうから、それでいいとして、あとはあのお姉さんが追放されて話は終わりだよ」
晴香を止める必要などないと主張する真守に対して弥彦が厳しい顔つきに変わる。
「おい、真守、それは違うぞ。追放者なんてな、出ないに越したことはねえんだ。追放者がでたら多かれ少なかれ悲しむ奴も傷つく奴もでる。簡単に追放で終わりってことにはならねぇ」
弥彦の言葉を受けて真守は唇を尖らせ、場が静まり返ったが、しばらくしてからその場を打ち破ったのは隆だった。
「まあまあ、マモも別に晴香サンがどうなっても構わないって言いたいわけじゃないよな? な? とりあえず今のままだとヤバいんで、晴香サンは要監視で、俺らは止める方法を探すでいいっすかね?」
「そうね。それで報告しておくわ」
紗帆はどこの誰に報告するのだろうと思わんでもないが、後で隆に聞こう。
今発言して会議を長引かせたくない。
会議時間はそんなに長くないはずなのに、急に疲れてきた。
そろそろ会議は終わりだろうか。
晴香の協力者に関しては紗帆と弥彦のほうで探ることになった。
後日、探るとは具体的に何をするのかと隆に聞いたところ、「大人のすることにあんまり首突っ込むなよ。子どもはおとなしく待つもんだぜ。俺はもちろんノータッチを貫く」と隆は自分が子どもの側の立場であると言い切り、笑顔を見せた。
貫太の「兄ちゃんは大人だよね?」という素朴な疑問は完全黙秘でスルーされた。
成人年齢に到達している男の非常に不自然な言い分を聞いてなぜか寒気に襲われた貫太はそれ以降、詮索するのをやめた。
「じゃあ今日の第五十五回七宝会議はこれで終わりということで。お疲れっした」
議長と化した隆が閉会を宣言した。
開催宣言のときは五十五回ではなかったように思うが、いちいちつっこまなくていいかとスルーする。
「ああ、貫太坊、明日の朝六時に神社で待ち合わせな。七宝の仕事をするからよ」
会議終わりに突然、七宝初仕事が貫太の身に降りかかる。
貫太が驚きで固まっている状態のまま会議はお開きとなった。




