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「嬢ちゃんからしたら逆恨みされてる状態だろうしなぁ。そこは色々あるんだろうよ。とりあえず嬢ちゃんのことはしばらく様子見だな」
自分の身の安全のために葉月はこれ以上動かないだろうという結論に達する。
問題はあの子だなと弥彦はため息混じりに言った。
晴香はすでに証が出てしまっている。葉月を蹴落とそうとしていて、しかもその計画はまだ終わっていないとみるべきだ。
「はるちゃんを止めないとね。そうしないと証の段階が進むわ」
「どうやって止めるの? そもそも止める必要ある?」
真守は厳しく言い放った。
「だいたい正当な後継者って何なの? そこからして何を言ってるかわからないよ」
「亡くなったお母さんに言われたのかもしれないね」
「晴香サンの言い草だと今の当主が正当な跡取りじゃないみたいに聞こえるけど、どういう論理なんだって話だよな。そりゃ晴香サンだけが中山の血筋ならともかく今の当主だって中山家の人間なんだぜ? 多分、自分の母親は長女だったからっていう理由で正当後継者は自分だって言ってるんだろうけどさ。別に家を継ぐのは長女って決まり、ないから」
「長幼の序は一族ではそこまで重要視されてねぇからな。家の跡取りにならなかった女は自分が初代当主になって新たに家を興すだけだ」
疑問に隆と弥彦がやれやれといった風情で答える。
そうなると晴香の主張する家の乗っ取り自体が成立しなくなる。単に晴香の叔母が後継者として選ばれたというだけのことなのだろう。
それとも追放者となったから跡取りではなくなったのか、疑問は尽きない。
二人の解説を元に考えてみる。
家を継がなかった晴香の母親は初代当主として中山家その二を新たに興した。そして現在、すでに当主は亡くなっているから晴香はすでに中山家その二の二代目当主ということになるのではないか。
だが、晴香の母親は追放者だ。その場合はどうなるのか、そこで貫太の思考力は限界を迎えた。
「えーっとね……」
「当主が追放者となっても跡取りがいた場合、その子が一応その家の仮当主扱いになるわよ。最終的に仮のとれた当主になれる子はほとんどいないらしいわねぇ。文献によると」
なぜ聞きたいことがわかったのだ。
エスパー、紗帆はエスパーだったのか。
そして、文献。
もしかして読まないといけなかったりして。どうしよう。マニュアルもまだ手をつけていないのに。
文献の文字数はいかほどか。震えが止まらない。
「何で考えてることがバレたんだって顔してますけどー」
笑いをこらえながらナオミがつっこんだ。
あんなに顔を強張らせていた真守さえも自分を生温かい目で見ている。
「じゃあじゃあ、晴香さんに教えてあげようよ。中山家その二の当主仮免状態だよって。そしたら思い直して葉月さんをどうにかしよう計画をやめるかもしれないよ?」
そもそも一族のそういう事情を教えてもらえていないから、勝手に想像を膨らませて逆恨みする事態に陥るのだ。
追放者の子ども──隆によると忌み子と言うらしいが──その子に知識を与えないのはよくない事態を招くだけな気がする。
「中山家、その二……」
「当主仮免状態……」
「どうにかしよう計画……」
違うんだ、重要なのはそこじゃない。
なぜそこじゃないところに食いつくんだろうと貫太は首を傾げた。




