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1月23日内容加筆修正。
「安西貫太です。えっと、よろしく……」
「……どうも」
決して目を合わせようとせず、小声で挨拶する目の前の少年と堂々とインタビューに答えていた少年は別人にしか見えなかった。
「照れ屋さんデース」
「やめろ、頭を撫でるなっ」
真守はナオミの手を払いのけた。
仲いいな。
「すまねぇなぁ。あいつも昔はあんな無愛想じゃなかったんだが弁天になってから性格が暗くなっちまってよ。貫太坊も春から七宝学舎の高等部に通うわけだし真守のことちょっと気にかけてやってくれよ。あいつも七宝学舎だからよ」
とんでもない爆弾発言だった。
──七宝学舎に通う?
あの七宝学舎に?
「いや、無理無理無理無理無理っ。何で俺の進学先、七宝学舎になってるんすか! 俺の偏差値で七宝学舎は受からないです、マジな話! え、真守くん、七宝学舎なんだ。すごっ」
自分でもびっくりするぐらいの大声が出た。
「何だ、聞いてねぇのか。印持ちの学生は七宝学舎に行くことになってんだ。印持ちじゃなくても一族の連中は大抵子どもを学舎に通わせるもんだがな。無理って言ったって決まりだから、そこはまあ諦めろぃ」
弥彦の無情な宣告に貫太の目の前は真っ暗になった。
私立七宝学舎。小学校から大学、大学院までを擁する一貫校。
偏差値も学費も恐ろしく高めの学校である。
妹の紅葉は小学校受験で見事合格、今は中等部に通っている。
貫太の幼馴染は中学受験して合格したと聞いた。
そういえば、その幼馴染の父親──啓一おじさんに貫太と自分達は親戚なんだと言われたことを思い出す。
幼馴染があれほど必死になって勉強してたのはそういうわけだったのか、と今になって理解した。
放課後はもちろん小学校の休み時間もずっと勉強していた。小学校の人間関係をズタボロにしながら。まともな人間関係を捨ててでも絶対に七宝学舎に入らなければならなかったのだろう。
納得しすぎて貫太はさっきから膝を打ちっぱなしである。
痛い。膝が。
それに比べて貫太は小中ともに公立、進学希望先も偏差値そこそこの公立高校だった。
家族もそれでいいと言ってくれていた。