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「追放者の説明はこれくらいでいいよな?」

 隆が時計を確認しながら、そわそわと聞いてくるので貫太は頷いた。

 隆の様子から推測すると夕飯まで時間がないらしい。七宝の恩恵について詳しく知りたかったがマニュアルを読めばわかるかもしれないので、質問は控えておく。


 隆は時間を非常に気にしていた。

 というのも安西家には食卓に呼ばれたら五分以内に各自手洗いを済ませ、席につくべしという暗黙の了解があるからだ。

 五分以上かかったところでペナルティなどない。ないのだが、安西家には全員が揃うまで食事を始めないという鉄の掟があるため、遅れると席についている全員から飢えた目つきで一挙一動を注目されてしまうのだ。


 言葉で聞くと大したことはないように思えるが、実際経験すると地味にキツい。


 隆は安西家の食にまつわるルールをまとめて食いしん坊家族の食いしん坊ルールと密かに呼んでいた。


「じゃ、晴香サン情報な」


 隆は早口で晴香の生い立ちを話しだした。


 晴香の父は晴香が生まれる前に、晴香の母文乃は晴香が七、八歳のときに亡くなった。なお晴香の父は一般人であった。

 母文乃の死後、晴香は叔母の家に引き取られる。


「外から見てるだけの俺らには実際、晴香サンが中山家でどう扱われて今まで生きてきたかはわからない。たださ、俺個人の意見だけど。大学にも普通にいかせてもらって、何不自由なく生活してて、生活の面倒を一切合切みてもらってる状態で除け者扱いは無理があると思うぜ。血が繋がってるとはいえ、家族とは違うから心理的に仲間はずれに感じたのかもしれないけど」

「当主教育を受けさせてもらえてないとか一族のこととか教えてもらえないっていうのは? 一族の人間としては重要なことじゃない?」


 ほんのちょっと前まで一族のことを何も知らなかった自分が言うのもなんだなと思うと声がだんだん尻すぼみになっていく。


「そこなんだけど」

 隆は腕組みをして少し考え込むと自分の推測を話しだした。


「晴香サンの母親は追放者だって言ったよな。……いろんなパターンあるけど、追放者の子どもって力を受け継いでることもあればそうじゃないこともあってさ。受け継いでても最終的に力を失うことが多いって話だから様子見だったんじゃないか?」


 力を受け継いでいないかもしれない。

 受け継いでいても最終的にその力を失うかもしれない。

 力を失った追放者の子どもは、子をもうけても一族の力が継承されない。

 それなら、一族のことは教えずに育てるというのはむしろ優しさだと隆は静かに言い切った。


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