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「真に受けすぎ」
それが公園での出来事を聞いた隆の第一声だった。
晴香は苦しい立場にいて追い込まれてるのではないかという貫太の考えを一刀両断した。
「長く話したから相手に感情移入しちゃったか? 晴香サンが本当のこと言ってるとは限らないだろ? 信用するなって。むしろ嘘をついてたよな? その嘘はお前が自分で確認しただろ?」
「ぐぅ……」
「お、ぐうの音がでたな」
「ぐ、ぐうの音って何!?」
隆はほんの少し笑うとお前の人を疑わないところ、俺はいいと思うとさらっとフォローした。それだけで貫太は気分が上向きになる。
単純だと思うがそういう性分だから仕方ない。
仕方ないったら仕方ない。
「……兄ちゃんは晴香さんの家庭の事情、知ってる?」
一番気になってるところだった。
家を乗っ取られたと言ったときの晴香の悔しそうな表情。
自分が正当後継者だと呟いたときの陰りのある目。
自分の祖母を見ていればわかる。
血筋を繋ぐということに異様に神経を使い、あれほど後継ぎにこだわるのだ。
そんな一族の人間にとって家の乗っ取りとは、すなわち大罪であろう。
「俺もそんなに詳しくは知らない。とりあえず、俺が知ってる中山家情報と追放者のことは説明するからそこだけは押さえとけよ。じゃないとお前、この後、話についてけないぞ」
そうだった。この後は七宝全員で話し合うことになってるのだ。
そして早速、追放者という知らない単語が出てくる。
今夜中にマニュアル読破は無理でもなるべく早く読み切らねばならない。
「今回の戦隊任務は二つだったろ。一つ目は晴香サンが印を視認できてるかどうかの確認。二つ目は?」
あの土壇場で弥彦に言われた任務。
晴香の右手の甲を確認すること。
貫太がそう答えると隆は頷いた。
「七宝の印は左手に出る。右手に出るのは追放者の証だ」
追放者とは一族を完全追放された人間のことである。
「完全、追放?」
絶対に許さない、許す気もない言葉の圧を受け、貫太は少し息苦しくなったように感じた。
「俺は実際には見たことがない。追放者の証は赤黒い字で現れて、おまけに段階があるって話だ」
お前は見ただろうと隆の目が言っている。
確かに見た。
晴香の右手に出ていた文字──追放者の証は確かに赤黒かった。
「漢数字の一って出てた……」
第一段階だった。
第二、第三と追加されていき、最終的に『犬』の文字が完成したとき、一族を完全追放となる。
「じゃあアレ、一じゃないんだ。……犬……。なんか、可愛いね……」
「チワワとかポメラニアンとかな。可愛いけど。そういうことじゃないから」
隆はまるで自分を落ち着かせるように長く息を吐いた。
「晴香サンの母親──文乃さんは追放者だ」




