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任務はなんとかこなした。
そうなると面白いものでもう晴香と離れたくて仕方なくなる。
どうやら向こうも同じ気持ちだったらしい。
「ずいぶん引き留めちゃってごめんね。また連絡してもいいかな?」
晴香はごく自然に小指を差し出し、貫太が手を出すのを待つ。
指切りが終わると晴香は完璧に作り込んだ笑顔で速やかに去っていった。
後に取り残された貫太は指切りの形のまま固まっていた。
小指をじっと見る。
……女子……、いや、お姉さんとの初、指切り……!
「ニヤけてて気持ち悪いの」
「おわあっ!?」
貫太は妹の突然の登場に心底驚いた。
「驚いて飛び跳ねた奴、初めて見たぜ」
隆が笑いを堪えながら公園の植え込みから姿を現す。
「な、な、な、なんで、なんで二人が、いいいるんだよ」
「落ち着けよ。焦りすぎだろ……」
「お兄ちゃんが遅いから迎えにきたの」
笑いすぎて言葉が続かなくなった隆にかわって紅葉が答える。
「お兄ちゃんはあの人とここで何をしてたの?」
本当のことを答えていいものかわからず隆に視線で問いかけると隆は首を横に振った。
紅葉はジトッと貫太を見ている。
答えないと、この半目光線がずっと自分をロックオンし続けることは簡単に想像できた。
「ん、んー、と、突然、の、モテ期が、きた、感、じ……?」
「モテ期。……真剣交際なの?」
「ちっ、違う!」
「違う……? 堂々たる遊び宣言なの」
「いや、だから違ーう!」
「遊びでもないの? 弄んでるの? お兄ちゃんがクズになったの。真性のクズになったの。とんだクズ野郎なの……!」
「だ、だから」
話を聞いてくれよとなぜか弱気に物申す貫太と感情がフルスロットルで加速していく紅葉。
兄妹の会話を聞いて爆笑している隆はもちろん助けてくれなかった。




