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 実は七宝の代替わりがまた新たに発生したので印の確認のために手を見せてもらえないか。

 貫太がそう切り出すと晴香は首を(ひね)った。


「そんな印の検査みたいなことするんだっけ? 今までされたことないよ」


「普通はしないです。なんというか……。ちょっと言いにくいんですけど……えー、晴香さんは前科がある、というか」

「前科!?」

 晴香は目を丸くした。口もあいている。よほど驚いたのだろう。口を閉じる気配がない。


「昔のことに縛られるなんて馬鹿げてるとか言って葉月さんに逃げろって勧めたって話を聞いて……」

「言ってない!」


 貫太の声をかき消すように晴香は叫んだ。


「何それ。そんなこと言ってない! 私は……葉月が七宝なんて面倒だから逃げたいってそう言うから、そんな心構えでは七宝は務まらないし、逃げればいいと思うって言っただけだよ。何でっ……何で私が逃げるのを主導したみたいになってるの! ヒドいよ! 全部人のせいにして!」

 晴香は拳をきつく握り込んで怒りに震えていた。

 晴香のあまりの剣幕にびっくりして声も出ない。

 貫太はなんとか気持ちを立て直して晴香に質問した。


「じゃ、じゃあ……じゃあ、晴香さん的には印があったら逃げずに七宝として活動するってことでいいんですよね?」

「もちろんだよ。私は逃げたりしない」


 きっぱりと言い切ったあと、晴香はハッとする。


「あ、もし私に印が出てたら葉月みたいに逃げるかもしれないと思ったから、確認しておきたいってこと?」

「そうですね。できれば見せてほしいです。晴香さんがよければ、ですけど」

「いいよ。わたしは葉月とは違うんだから」


 そう言いながら、晴香は挑むような目をして両手の甲を貫太の前に差し出した。


「……はい、確認しました。七宝の印は、出てないです」

「……そっ、か」


 (うれ)い顔で俯いた晴香を見ると貫太は突然、罪悪感が湧きでてきて胸が痛んだ。

 もし七宝だったら乗っ取られた家を取り戻せるかもしれない──晴香にそう思わせたかも。

 そう思うとほんの一瞬でも期待させた自分が嫌になる。


「何で貫太くんが落ち込むのー?」


 貫太はいつの間にか俯いていた顔をあげた。

 この罪悪感の、説明はできない。

 

「いえ……その、何でもないです。晴香さんて……一族のこと教えてもらってないって言うわりに結構色んなこと知ってますよね」

「……お母さんが亡くなる前にね、色々教えてくれてたの。あの時は何でこんなこと覚えなきゃいけないんだろうって思ってたけど、今となっては感謝だね」


 二人きりの勉強会はいい思い出なのと笑ったその顔は今まで見たなかで一番可愛かった。


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