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晴香は目線を上げると心配そうな面持ちで貫太に尋ねた。
「……みんな、葉月のこと怒ってた?」
「……怒ってはなかったですよ」
「そう、なんだ。みんな優しいんだね。なんかホッとした」
なんでだろう。
晴香の言葉と表情が一致していないように見える。
……きっと気のせいだ。そうに違いない。
自分に強く言い聞かせて貫太はスルーした。
「まあ、逃げたことはやっぱりダメなことだし、葉月さんがみんなと信頼関係を築くのは時間がかかると思います」
「そ、そう」
今度は浮き立つような表情をした晴香を貫太は困惑した気持ちで観察していた。
喜ぶところではないはずだ。
やはり台詞と表情があってない。もはや否定できない。
人の心の機微に敏感ではない自分でもわかる。
晴香は葉月のことを心配などしていないのだと。
ここからだな。
どうやって手の話に持っていくか……。
そう考えてるとなんだかすべてが面倒になってきて貫太は自分でも思いがけず口走っていた。
「えーっと、もう帰っていいですか?」
「え!? 待って待って。葉月のこと、何でもいいの、教えてくれない? その、本当に心配なの」
お願いお願いっと両手を合わせたお願いポーズをとってくる。
きっとこの人は自分が可愛いことを最大限に活用して生きてきた人なんだとまたしても本題とはまったく関係のないことを思った。
帰りたいという自分の願望がつい口から出てしまっただけだったが、図らずも晴香を食いつかせることには成功した。
次はどうするか。
「話せることってそんなにないんですよねー。例えば、どんなことが知りたいんですか?」
「……葉月はどの七宝なのか、とか?」
晴香は貫太の様子を窺うように見た。
答えるのは簡単だが──
「……手を見たらわかりますよね?」
突っぱねることにした。
「まさか印が見えてないなんてこと……?」
冗談めかして聞いてみる。
瞬間、隆のニヤニヤ顔と共に直接聞くなよという忠告を思い出した。
しまった……。
直で聞いちゃったよ。
晴香を警戒させただろうか。
ここで焦って何かを言うとドツボにハマる気がして貫太は結局黙って晴香の返事を待つしかなかった。
「嫌だなぁ、そんなわけないでしょ。葉月、どうしても手を見せてくれなかったんだよお」




