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ここまで期待されていないとかえって清々しい気持ちになる。
「貫太さんがダメってことじゃないと思います。貫太さんは一族の決まりとか慣習っていうか事情? そういうのにちょっと疎いし、えーっと……」
「なんていい子なんだ……」
真守の必死のフォローがささくれた貫太の心にしみこんでいく。
照れる真守を揶揄いだす隆。いつも通りすぎる。
弥彦の注文は一つ。
晴香が印を視認できるかを確認すること。
もちろん相手に印見えてますかなんて質問はするなよとまたもや隆はニヤニヤしていた。
「七宝の印は左手の甲にだけ、黒字で現れる。右手の甲には出ない」
自身の両手の甲を貫太に見せながら、弥彦は続けた。
印が現れるのは手の甲なのか手のひらなのか、はたまた両方なのか。両手に出るのか右手だけなのか左手だけなのか。
「口伝えではそこまで詳しく知らされねぇ」
言われてみれば貫太も手に印が出るとしか説明は受けていない。
そもそも見えている人間にはそんなことをいちいち教える必要がない。見えていない者は情報として手に印が出るということだけしか知らされない状況に置かれている。
「そこを利用して見えてるかどうかを見極めるんだ。見えてねぇなら手に印が出る以上の情報は持ってねぇはずだからな」
「そんな上手くいくかなぁ」
「そんな自信なさげに言っといて連絡先も聞き出してたし、いけるいける。あーいうタイプは気づかない。獲物を狙ってる奴って狩ることばっかりに気を取られて自分が獲物にされてても気づかないっていうか? 晴香サンは特に自信家ぽいし」
連絡先は聞き出したというより向こうがグイグイきてくれたからなんとかなっただけなんだけどと思いはしたが、そこは黙って自分の手柄にすることにした。
それにしても獲物とは酷い言い分だ。
「自分に自信なかったらあんな髪型しないでしょ」
真守は案外、毒舌だった。
「あー、ツインテール?」
「あれはツーサイドアップだ」
晴香の髪型をツインテールと言った貫太を弥彦は即座に否定した。
どう反応していいか分からず全員が固まる。
「ツー……?」
「……サイド……」
「アッ、プ……」
貫太、真守、隆が髪型の名称を復唱した後は沈黙が場を支配した。
「ハーフツインとも言うな」
沈黙など、どこ吹く風で弥彦はさらに言葉を重ねた。
貫太は真守に「弥彦さんて髪型に詳しくなる仕事してたの?」とコソコソ確認をとる。
真守はゆっくり首を横に振ると喋りだした。
「……謎に女の髪型に詳しい老人とかイヤすぎるんだけど。それが自分のじいちゃんとか泣ける」
「泣くこたぁねぇだろ。それに女の髪型に詳しいわけじゃねぇよ。『ぷにキュー』のキャラがあの髪型をしててな」
「女児向けアニメに詳しいじいちゃんなんてもっとイヤだ!」
弥彦の口からでた女児向けアニメのタイトル名は真守の目から光を奪いさった。




