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2023/2/27、20話内容加筆修正。
「あの、ちょっといいですか?」
キタ。
来てしまった。
半信半疑だったし、来なきゃいいのにと思ってたけど。
やらなきゃいけないのかと諦めにも似た気持ちを抑えつつ、声がした方向を見ると中山晴香がいた。
弥彦の言った通りだ。
「初めまして。私、中山晴香といいます。部屋にいた人ですよね?」
「どうも。えーっと、安西です」
何で知ってるんだと思ったが晴香が部屋に入ろうとしたときに晴香とバッチリ目があったことを思い出す。
晴香は少し俯きながら心配そうな顔で貫太に訴えた。
「すいません、ちょっと葉月のことが気になって。葉月はどうなりましたか?」
「葉月さんは七宝として責務を果たすそうですよ。そういうことなんで、もうちょっと部屋に篭りっきりだと思います」
晴香の顔色が変わる。
どうして、と晴香の口から漏れていた。
「あのー、もういいですか? ちょっとやらないといけないことあって」
晴香はそれは何だと言いたげに上目遣いで貫太を見る。
可愛いけどなぁと思いつつも貫太は迷っていた。
どうやって話を進めたらいいのかまったくわからない。とりあえず上目遣いの疑問に答えることにする。
「切れてる蛍光灯がないかチェックしてて……」
「……七宝なのにそんなことやらされてんの。まじパシリじゃん」
嘲りの色が一瞬、晴香の顔に浮かんだ。
普段だったら聞き逃しているレベルの小声だったがちゃんと聞いていた。
あの表情もいつもなら見逃していたかもしれない。
賢いが脇の甘い人間だという弥彦による残念な晴香評は当たっていた。
じっと自分を見つめる貫太の視線にハッと気づいた晴香は気を取り直して本題に入ることにしたようだ。
「あ、あの! もしよかったらこの後、ちょっとお話聞かせてもらえませんか? 葉月がどんな感じか教えてほしいんです」
聞かれてたかもしれないあの小声を完全になかったように振る舞うとはなんてメンタルの強い人なんだ。
ただただ感心した。
「んー……」
断るつもりはない。
むしろ願ったり叶ったりだ。
貫太はどう返事をすればいいのか迷っていただけだったが言い淀む貫太を見て渋っていると判断した晴香は畳みかけてきた。
「今日って何時に終わりそうですか?」
「え? 具体的に何時かはちょっとわからな……」
「あ、じゃあ連絡先交換しましょ」
葉月のことは葉月に直接聞けばいいと思うと答えると性格的に葉月は自分に気を遣って大丈夫としか言わないからと晴香に押し切られる。
「今日、終わったら連絡くださいね」
今にも鼻歌を歌いだしそうな晴香を見送り、その姿が見えなくなると同時に貫太は息を吐き出した。
自分でも気づかないうちに張り詰めていたようだ。
『いいか、貫太坊。連絡先の交換まで持ち込むんだ。けどな、こっちは相手にしてない感じをだせよ。あくまでも向こうに言われて仕方なくっていう体で交換するんだ。上手いこと誘導しろよ』
弥彦もなかなかの難問を出す。
今さっきの晴香との会話を思い出しながら「強引な人だったな……」と思わず言ってしまっていた。
おかげで助かったけど。
まったく誘導してないのに上手いこといった。
理想通りの戦隊任務達成をしたと思う。
『大丈夫だよ。気づきゃしないって。ああいう自分に自信のあるタイプは自分が騙すことはあっても騙されることはないって思いこんでるから』
隆の言葉を思い出す。
うん、兄ちゃんの言う通りだったよ。
貫太は心の内で独りごちた。




