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はずだった。
家に帰ると紅葉が爆弾を落としたのだ。
「お兄ちゃんは莉子ちゃんを毒牙にかけたの?」
「な、何言ってんの? そんなことするわけないだろ」
だいたい紅葉は莉子があれほど自分に懐いた理由を知ってるはずだ。
今年の夏の一歩間違えば事故となったアレ。
「何ですか、騒々しい」
止める間もなく紅葉が祖母に学校帰りのことを報告しだす。
どうやら牛島達との騒ぎを見られていたらしい。
一部始終を聞いた祖母は真面目な顔で問いかけてきた。
「貫太、毒牙にかけたのですか? ……かけられたのではなく?」
「ねえ、質問がおかしい! かけてないし、かけられてもない! だいたい莉子ちゃんは幼稚園児だよ。人を毒牙にかけるような年じゃないよ」
「お兄ちゃん……。おめでたいの」
「いや、どういう意味だよ! 怖いよ!」
「かけたのならば、よし」
「聞いてた!? かけてないって。それにかけるのはよくないよ! 毒だもん!」
「毒だもんって……返しがおかしいの」
紅葉が何を言ってるんだという顔をしている。
「そのうち向こうから連絡があるでしょう。あなたはなすべきことをなさい」
祖母は言いたいことを言うと部屋に戻っていった。
連絡って何の連絡だ。
やってくれたなという連絡か?
それだったら誤解なんだが。
「明日は朝から公民館なの?」
「ん。朝から勉強だよ」
爆弾を落としたことも気にせず、しれっと紅葉が質問してきた。
平日は放課後、公民館に直行し夕飯まで勉強。休日は公民館にて朝から夕方まで勉強。
寿老人となって以降、そういう日々を過ごしていた。
何故こんなに勉強してるのか。
裏口入学するのに。
そんな疑問を見透かしたように隆に言われた言葉が頭の中でこだまする。
入学して終わりじゃない。どう考えても入学できるレベルではない人間がいたら怪しまれるだろう。
その通りだ。その通りすぎて、ぐうの音も出ない。
勉強しかしてないが七福神はどうなったんだろうか。
祖母の言うなすべきこととは恐らく寿老人の仕事のことなんだろうが。
……何すりゃいいの?
「……勉強しよ」
結局、勉強することにした。




