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大黒天、加山紗央里の名前を紗帆に変更。
目覚めるとすべては夢だった──なんてことはなく、手の甲には変わらず印が鎮座している。
あれからはや二週間。
紛れもなく現実だった。
それにしてもと思う。
これっぽっちもモテる気配がないのだが。
モテまくりという話ではなかったのか。
話が違う。
じっと手の寿を見る。
「おかしい」
「何が?」
覗き込んだものの何の変哲もない貫太の手を見て怪訝な顔をする牛島達也。
「おい、びっくりさせんなよ。急に出てきて」
「一緒に帰ろうと思って誘いに来たんだよ。いつものとこ行かね? で、何がおかしいんだよ」
「……こ、こんなに……手を洗ってるのに、雑菌がなくならないっておかしいなぁ〜……って思ったりして」
「お前、相当疲れてるんじゃないのか」
眼鏡をあげながら病院行きを勧めてくる九条義彦。
周りを確認したがいつものメンバーが一人足りない。
「スーさんは?」
「もう帰ったみたいだ。お前とあいつ、最近付き合い悪いから」
牛島が不満そうに貫太ともう一人を詰った。
スーさん──鈴木陽太と牛島、九条の四人で普段はつるんでいたが、寿老人となって以来、放課後は公民館に直行していたから一緒に帰ることがなくなってたことに今更ながら気づく。
「今日は付き合えよー。塾の時間あるからそんなダラダラできないんだけどさ」
牛島が最近、夢中になってるアニメを熱く語るのを九条と二人して軽くあしらいながらスーパーに向かう。
学校帰りはスーパーに寄り、外にある備え付けのベンチで喋るのが定番だった。
誰もいないベンチにつくと三人は思い思いに座ってくつろいだ。
「貫太ちゃんっ」
振り向くと親戚の幼稚園児、山本莉子とその双子の弟亮介がいる。
母親と買い物に来てたらしい。
母親が外に出てくるまで莉子は「貫太ちゃんは食べ物だったら何が好き?」という需要があるとは思えない質問を次から次へと繰り出し、貫太を困惑させた。その横で亮介はぶすくれた表情で終始貫太を睨みつけ、やはり貫太を困惑させた。
「ばいばーい。またねー」
買い物が終わった母親とぶすくれた亮介を引き連れて、ぴょんぴょん飛び跳ねながら莉子は帰っていた。
「貫太ちゃーん、お前あんな小さな子を手懐けるって」
「変態だな」
「だな。貫太ちゃんは変態だな」
「おい」
親戚の子と話をしている間に非常に不名誉なレッテルを貼られていた。




