1
章立てなど一切おこなっておらず、ただダラダラと書き連ねております。
1月23日内容加筆。
3月17日加筆。
七福神。
七福神とは日本で信仰されている七柱の神(恵比寿、大黒天、毘沙門天、弁財天、布袋尊、福禄寿、寿老人)の総称である。
天地創造の後、人の世が安定したのを見届けてから神々は神界に戻っていったが、七福神は七人の人間に自らの力と加護をそれぞれ与えてから、人間界を去った。
それ以降、七福神の力を宿した人間の手の甲には受け継いだ神の名が一文字、印として浮かび上がることとなる。
恵比寿の力を受け継いだ者であれば恵の字が、大黒天であれば大の字が。
力を宿した人間──顕現者達はそれぞれ血は繋がってないが一族として共に暮らすようになった。
自らを七宝一族と称して。
そして現代──
「おめでとう、貫太、おめでとうっ。よかった、よかったわねっ」
安西貫太は祖母と母が泣きながら自分に縋りついてくるのを非常に困惑した気持ちで見つめていた。
普段、感情の揺らぎを一切見せない祖母が。
祖母ほどではないがいつも冷静沈着な母が。
こんなにも泣くなんて。
いつも通りの朝のはずだった。
妹が貫太の手に浮きでた寿の文字を見つけるまでは。
「おばーちゃーん! おかーさーん! お兄ちゃんが寿老人になってるのー!」
妹が叫ぶまでは。
老人になってるとはどういうことだ。
中学三年の男子が老人なわけないだろうと心の中だけでつっこむ。
印を確認した祖母と母は泣き崩れ、よかったを連呼している。
今日の夕食は鯛と赤飯に決まったらしい。
豪華な夕食になるなら、とりあえずそれは嬉しい。
今のところ、貫太の心の中を占めているのはわけがわからないという気持ちのみであった。
誰も説明してくれないし。
そもそもこの文字は何なんだ。墨汁で書いたような寿の文字。試しに擦ってみたものの消える感じはしない。
号泣する祖母と母に対して何も言葉が出てこなかったが、カオスとしか思えない状況を打ち破ったのは妹の紅葉だった。
「二人ともお兄ちゃんは七宝のこと知らないんだから、ちゃんと説明してあげるの」
そして。
曰く、安西家は七福神の力を受け継いだ七宝一族である。
曰く、力の顕現者は手に印が現れる。
曰く、寿は寿老人の力に目覚めたことを意味する。
曰く、今から他の七福神達が検分と説明のために来るので、客室で待て。
説明は、受けた。
──理解が追いつかなかったが。
「立派な寿老人になるのよ」
立派な寿老人とは一体。
ほどなくして来たのは二人だった。親戚でそれなりに仲のいい兄ちゃん──斉藤隆。と、帽子を目深にかぶった貫太が知らない女子。
「お勤めご苦労様です」
「検分させてもらいます」
いつの間にか泣きやみ、いつも通りの厳しい面差しの祖母といつもとは違う真面目な様子の隆のやりとりを他人事のように貫太はぼおっと見ていた。
検分とはいってもただ手の印を見せるだけだ。
その間、女子は押し黙っていた。
「じゃあ、あとは貫太の部屋で説明させてもらおっか。いいですか?」
貫太ではなく、祖母に許可をとるあたり、隆は安西家のヒエラルキーを完全に理解している。
「もちろんです。貫太、よく教えてもらいなさい。それと安西家を継ぐのは紅葉です。顕現者になったからといってそこは勘違いしないように」
「え? あ、うん。えっと、わかってる……」
今、ソレとコレ関係ある?
手に文字が現れたことと安西家を継ぐことがどう繋がるか分からなかったが、後継ぎになりたいわけでもないので、スルーする。
祖母は後継ぎの話題になるととにかくピリピリするのだ。
昔、それで怒らせたことのある貫太はスルー一択だった。
だいぶ昔、テレビで七福神は室町時代のヒーロー戦隊であるという番組を観て、空想したお話です。