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死なない君がおっちょこちょい【1/31完結】  作者: 市み
前章 死なない人達。
5/51

狼少年【カラーイラスト有】

 お風呂場で感電死していた不死ちゃん。



「取り合えず携帯を取り出さないと」



 二次被害の恐れがある。

 不老不死の不死ちゃんはノーカンだから、俺が一次被害になるんだけどね!







「あのー、あのさ。あのー」



 風呂場を片づけた後。

 俺と不死ちゃんは居間で向き合っていた。


 あまりの出来事に言葉も無い。

 あのしか言えてなかった。



「さのー」



 頑張ってもさのしか出てこなかった。



「ごめんなさい……」


「何でこんなことを?」


「携帯の充電が無かったんで、つい……」


「だからって風呂場で充電は普通しないからね」


「こんなことになるとは」


「なるよなるよ! 経験不足ですか貴女様は!?」


「豊富なつもりなんや……」



 気持ちだけではどうにもならなかった。



「充電ならこっちのコンセントで出来るからさ」


「ほんまや! こっちにも居たんやなー」


「居たよ! ずっと前から居たよ!!」



 コンセントさんは、俺が来る前から居ました。



「分からないことは先に聞いて欲しい」


「でも迷惑じゃないん?」



 迷惑を起こされる方が迷惑だが、まぁ言葉が過ぎるか。



「一緒に暮らしていくんだろ? そんなことを気にしなくていいよ」


「……! ありがとな御兄さん!」


「良いってことよ。さて、と現実を見ようか」


「ん、どしたん?」



挿絵(By みてみん)



 目の前の不死ちゃんは、裸の上に俺のシャツを着ている”だけ”の状態だ。

 ”だけ”なのである!


 不死ちゃんが着ていた下着は洗濯中だし、一つしか無いのも不便だろう。



「下着を買いに行くか」


「しゃがんだ時に破れたん?」


「貴女の分ですけど!?」


「え、でもウチの下着はあるよ?」


「いや、一個だと不便でしょ。現に今は履いてないし……」


「乾くの待てば大丈夫やよ!」


「こっちが気にするんだよ」


「そうなんやー。でも、この時間なら御店閉まってるんちゃう?」


「大丈夫、24時間開いてる店があるから」


「コンビニ! コンビニ行くん!?」


「何でちょっとテンション上がったの……?」


「コンビニは凄いんよ! 何か色々あって凄いんよ!!」


「知ってますよ。便利ですよねー」



 割高なのも仕方ないレベルで便利だよ。



「うーん。でもウチ、御金無いんよ」



 薄々気付いていた。

 不老不死ということは定住するのも難しいだろうし、定職何て余計だろう。

 きっと日陰を歩く様な生き方をしてきたはずだ。



「気にするなって。一人ぐらい養ってみせるさ」


「御兄さん……誰にでもそんなことを言うん?」


「言わねぇよ、言ってたら通報されてるわ」


「そっか、うん。ふふ、ごめんなー」



 嬉しそうに笑みを見せる不死ちゃん。



「ほな、行こかー」


「お待ち下さい、その恰好で行くつもりですか……?」


「あかんかな?」



 裸にシャツだけで外出は、流石に変質者だと思う。



「通報されても良いなら……?」


「それはあかんよ、おまわりさん怖いもん!」



 前に何かあったんですかね……。



「取り合えず俺の服だけど、何か用意するよ」


「うん。ありがとなー」










 俺達はアパートを出るとコンビニへと向かう。


 坂を下りてから、別の坂を上る。

 割と近く、徒歩で通える距離にあるのだ。


 隣を歩く不死ちゃんを見る。

 俺のジーンズと上着を着ていた。


 素肌に俺の服を着ているんだよな……。



「御兄さん、聞いとる?」


「き、聞いとるよ!」



 何一つ聞いてなかった。



「前に仮想通貨? ってのを買ったんよー」


「予想外のが出てきたね」



 意外と先進的らしい。

 歩きながら不死ちゃんの金銭事情を確認することになった。



「ほれがな、値下がりしてもうたんやけど」


「それは残念……」


「現金への戻し方が分からんのよ」


「踏んだり蹴ったりだ!?」



 悲しい事情しか出てこなかった。



「おのれー、ウチの三千円をよくもー」



 不死ちゃんは茶化したように笑った。

 あんまり買ってなくて良かったね。



「全財産やったのに……」


「あんた滅茶苦茶だな!」


「やっぱり携帯持ってると余計なことをしてアカンなー」



 そういう問題かな?



「あれ? 携帯大丈夫だったの?」


「うん、この子も不老不死みたいや!」



 本人が感電死しても生きてる携帯とは。



「御金が増えるはずやったんよ」


「ネットにある金儲けの話は、基本的にカモを増やす為にやってるからね」


「そうやったん!?」


「金が儲かる話を他人に話したら、自分の取り分が減るし」


「ほんまや!」


「正しい知識を売りたい為に、間違った知識を拡散する人も居るし。他国の工作員が世論を操ろうとしてたりもする、ネットを過信してはいけないぞ」


「ほえー、凄いな御兄さん! 物知りや!!」


「はい駄目ー」


「え、どういうことなん?」



 不死ちゃんは驚いた顔を見せた。



「これは俺が適当に思ったことなので、簡単に信じてはいけません」


「えぇー!」


「俺が稀代の大嘘付きなら教材を売りつけているところですよ」


「危ないところやった」


「まぁ俺は神的に優しいので安心していいよ」


「それも嘘なん?」


「これは嘘じゃねぇよ!?」



 気が付けば狼少年だった。

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