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死なない君がおっちょこちょい【1/31完結】  作者: 過去の憧憬
後章 生きていく人達。
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【外伝】永久の歩み

 血姫の序列は一種目二種目三種目と数えていく。

 これは自然発生した順番だ。


 一種目は最初に生まれた血姫のこと。

 何故か其れだけは感覚的に理解できた。


 血姫達は新しい血姫を作ることができる。

 そして、血姫が生み出した血姫達は全てその種目に連なる。


 此方は一種目の十。

 当時の当代は死の淵にいた此方を助けてくれた。



 血姫を作る方法、それは恋。



 などではなく、相手の血と自分の血を混ぜ合わせる。

 言ってしまえば吸血鬼の伝承通りだ。


 ただ違うのは吸血鬼は眷族を作るが、血姫は同族を作る。

 些細な違いではあるが、大きな違いだった。



 吸血鬼自体は存在した。



 血姫達とは価値観の違いで相容れることは無かったので、現在の状況は推し量れない。


 不死と呼ばれた少女。

 あの少女は血姫ではない。


 やはり吸血鬼ということになるのだろうか?

 なれど、吸血鬼に同族を作ることはできない。


 下弦と呼ばれたあの御方は、眷族と呼ぶにはあまりにも強い。

 同族と呼びたくなるほどに。


 だからと言って血姫では無い、血姫に男性は存在しないのだから。

 分からないことだらけだ。


 そうですね……、思い出しても分からないことは多い。

 御師匠があの時に何故あのようなことを言ったのか。


 今頃になって初めて理解したのだから。








 血姫の当代はその強さで代替わりしてきた。


 以前は一種目の四、シキ・ノ・サトリが当代を務めていた。

 此方の御師匠であり、母親のようなものだ。


 シキに挑む者は多かった。

 不死者同士で娯楽も少なく、力比べなどは先端の娯楽だったのだ。


 当代になれば他の者に命令できる。

 其れは暇を持て余す不死者達には、魅力的だった。


 だが、シキはあまりにも強かった。

 その強さ故に誰一人歯が立たず、原初の血姫でさえシキとは闘いはしなかったのだ。


 かくいう此方も最初は手も足も出なかった。

 当時は血繰りも甘く、大気も雑にしか操れなかった。


 だからと云って、威力はそれなりにある。

 当たれば潰れるような、大気の塊。


 それを正面から何度も弾かれた。

 血の力を無限に強化するという、シキの力技で。



 だがシキの血繰りには欠点が一つだけあった。



 自らの血を汚染する技だったのだ。

 使えば使うほどに強くなる、だが血が汚れていく。


 汚れた血は、シキに痛みを感じさせているようだった。

 段々と弱っていくシキに挑み続けた此方が、最後に乗り越えただけのこと。


 その時の此方は、そのようなことに気付きもしなかった。



「強くなりましたね、トワ・ノ・アユミィ」


「えへへー、御師匠様のおかげです!」


「いけませんね、いつまで経っても子供のような喋り方をして」


「御師匠様の前だけだよー」


「ですがこれからはトワ、アナタが当代となります」


「……はい」


「決して弱みを見せてはいけません、それは自らを苛みます」


「分かってます、御師匠様に恥じないように」



 それを聞いてシキは嬉しそうに笑った。



「一つだけ、御願いをしてもいいですか?」


「何ですか御師匠様?」


「人間を恨んではなりませんよ」


「……はい、そのつもりです。御師匠様が目指した夢を、必ず果たします」



 シキには夢があった。

 人間達と血姫達の共存。


 無限の生の中で、人間だけが血姫達に新しいものを見せてくれた。

 人間達が居なくなれば、血姫達は長い生をどう誤魔化していけばいいか分からないのだ。


 死なないということが、とても恐ろしいとシキは言った。

 若かった此方にはその意味は分からなかったけれど。


 今ならばよく分かる。



「トワ、貴女で良かった」



 そう言って笑みを浮かべたシキの顔を、三百年ぶりに思い出した。







 何年かが過ぎて、シキは立つことすら困難になっていた。


 血繰り使わないようにしても、汚れた血が綺麗になることはなかったのだ。

 それどころか、少しずつ体を蝕み始めていた。


 生きているのが辛いような状態、それでも決して死ぬことはない。

 そう不死者達に、死は無いのだから。


 汚れた血は、体の再生する基準のようなモノを変えていった。

 血を吐き弱っていく、まるで人間の病のように。


 今ならば分かる。

 死にたいと思っていたシキの心が、血繰りに反映されていたのだ。


 誰かを打倒する為の力ではなく、時間をかけて死んでいく為の力だったのだ。

 もっと早く気付いてあげるべきだった。


 衰えていくシキをそのままにして、此方は旅に出た。

 世界の平和の為に、シキの夢を叶える為に、もし可能ならば救う方法を、殺す方法を。


 そのはずだったのに……。

 いつから諦念したのだろうか。


 あまりにも多く見過ぎた。

 人間の汚い部分。


 綺麗事だけじゃない、それは分かる。

 それでももっと他の生き方ができたはずだ。


 他者を愚弄するような汚い生き方じゃなくて、もっと心に花を咲かせるような……。

 その思いは次第に強くなっていった。


 だから、愛の為に理をも超越するあの御方は此方にとっては奇跡。

 この世界で初めて知った輝きだった。


 能力を変えられる能力。

 その奇跡を以てすれば或いは、シキのことを救えるのかも知れない。









「能登さんに怒られっぞ!」


「はいぃー!?」



 店員の二人が声を上げる。

 花澤と戸松、このコンビニの優秀なスタッフだった。



「良いのですよ、其方様達はよくやっております」


「ありがとうございます能登さん!」



 戸松が嬉しそうな笑みを浮かべる。



「甘やかしちゃ駄目ですよ能登さん」



 それを見て花澤が困ったような笑みを浮かべた。

 今なら分かる、此方のことを慕ってくれている二人のことが。


 分かろうとしなかっただけ、とも言えますね。

 理解する感情があまりに遠かったから。



「御願いがあります」


「能登さん?」


「此方はこれより旅に出る事にしました」


「旅、ですか?」


「帰ってくるんですよね?」


「分かりません。ですが、もう能登歩未ーノトアユミーに戻る事は無いでしょう」



 帽子を脱ぐと、髪の毛を開放する。



「え、髪の色が違って……」



 黒かった髪が紫色へと変わっていった。



「此方の名は、トワ・ノ・アユミィ。永遠を生きる血姫の当代」


「トワ、さん?」


「有難う御座います、人間にしておくには惜しい方々でした」


「そうですか、何か納得しました」


「流石ですね。花澤、其方様にこの店を任せます」


「……分かりました」


「トワさん……」


「後は頼みましたよ、二人とも」


「はい!!」



 そう言った二人の顔にいつかの自分を思い出す。

 このような顔をしていた時期が、此方にもあったのだな……。


 ならばもう一歩だけ踏み込んでみよう。



「此方の事は、秘密にして貰えると嬉しいです」



 少し照れが出てしまう。

 だれかを信じるということをしてこなかった故だ。



「当然ですよ」


「いつでも帰ってきてくださいね!!」


「ふふ、ありがとう二人とも」



 此方が笑みを浮かべると、二人は驚いたような顔をした。

 けれどその後、此方と同じように笑みを浮かべたのだ。






 コンビニを出ると、陽の光が眩しかった。


 此方の行先は決まっている。

 あの御方の後を追うと決めたのだ。


 それは長い長い、あまりにも長いこの人生で初めての感情。

 向き合う前に殺して来た人間達への尊敬。



「待っていて下さいね、今から会いに向かいますから」



 呟いた言葉は、ただ風が運んでいった。


ここぞとばかりに新設定を追加していく!!


曖昧にしていたところを明確化するのも大事ですよね。


ところで名前の付け方が怒られそうですが……。

怒られるまで見逃して下さい!


むしろ能登さんに怒られたい!!

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