車窓から
宛もなく、一人旅をする。
電車に乗り込み、車窓から見える景色を眺める。
遠い昔の記憶にある田畑は干魃して干上がっていた。
なんだか悲しくなる。
僕らは人知れず頑張る人々に因って支えられ、生きられている。
にも係わらず、僕らの感謝はそこへは向けられていない。
自分の私利私欲のために、感謝という気持ちをスキルのように使っては穢し貶めている。
真価を見失ってしまっている。
僕らに生きている価値なんてあるのだろうか。
近くを走る子供が転ぶ。
泣き声を上げるその子にそっと寄り添う母親。
「はいはい、泣かないの。痛いの痛いの飛んでけぇ」
いつかの自分も同じようにして貰ったけな……。
何故だか心が温かくなったような気がした。
感謝の気持ちを忘れている僕らかも知れないが、こういう光景を見ていると生きていても良いのかなと思える。
ただ、そこに気付けた僕は少しずつ変わっていこうと心に決めた。