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キャラ交換で大商人を目指します  作者: 杵築しゅん
冒険者とお仕事

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39 アコル受験する(2)

 いろいろあったけど、補助部屋の使用許可を貰ったので、あとは一般試験で合格しなければならない。

 いや、その前に面接があった。

 平民の順番は最後の方なので、ゆっくりとお弁当を食べて待つ。


 図書館が立ち入り禁止になっていたのにはガッカリした。まあ、勝手に持ち出しされたら困るような貴重な本が沢山あるんだろうから仕方ないか。


 30分前に面接試験の順番を待つ教室に到着すると、何故か見たことがある魔力測定器が置いてあった。


「今年から、全学生の魔力量を測ることになった。面接の前に必ず測定しなさい」って、試験官の先生が受験者に説明を始めた。


 ……ヤバイ! これはどうしたらいいんだ。ここで魔力量がバレたら大変だ。


 回避方法を考えながら、壁に貼られた魔力測定についての説明を読んでいく。

 あ、あれ? 冒険者登録証を持っている者は、ギルド発行の登録証を提出するだけでいい?


 ……ああぁ良かった。ギルマス、Dランクのままにしてくれてありがとう。


 俺は冷や汗を拭きながら、深呼吸をする。



「凄い!さすが魔法部の受験者だ。魔力量が60を超えている。60を超えている者は、今年から優先的に入学できるぞ」


 魔力量測定をしていた教師が、嬉しそうに弾んだ声で叫んだ。

 暫く測定の様子を見ていたが、魔法部の受験者は、最低数値が50以上と決まっているようで、少しでも低いと不合格となる。


 特務部の例年の合格者の魔力量平均値は40~55くらいで、冒険者はCランク(40~50)以上でなければならない。

 俺は胸を撫で下ろしながら、教師に冒険者証を提示して事なきを得た。



「君の書いた小論文には、将来の目標を大商人と書いているが、本当になれると思っているかね?」


「はい、もちろん思っています。既に商業ギルドにも登録しましたし、商品やサービス内容もいろいろ考えてあります」


 とかなんとか、無難な受け答えをして、面接はあっさりと終了した。

 まあ、モンブラン商会の推薦という時点で、これまで落ちた人は居ないらしい。




 そして迎えた8月27日の合格発表、当然のことながら合格はしていた。

 ただ、合格通知書には、予想外のことが書かれていた。


【商学部に合格したアコル・ドバインは、9月1日の一般試験を受験し、筆記試験で30位以内の成績で合格できた場合に限り、魔法部に入学することができる】 


「訳が分からない。マキアート教授の差し金かなぁ……でも、なんで30位なんだろう? 合格出来ればいいって言っていたのに」


 俺は会頭の執務室に合格の報告に行って、合格通知書を見せながら呟く。


「マキアート教授について調べたら、彼は新学院長となった王弟モーマット様のご学友で、魔法省の研究所を辞職したS級魔法師だった。現在王立高学院に在職している教師の中では、最も優れた魔法師で、緩みきっていた魔法部の改革のため、新学院長が投入した秘密兵器らしい」


俺の淹れたお茶を美味しそうに飲みながら、セージ部長が教えてくれる。


「まあ確かに、自分の研究室の雑用係が商学部っていうのは違和感がありますね」


俺が魔法で冷たくしたお茶を飲みながら、副会頭がしみじみと言う。


「手を抜くべきでしょうか会頭?」


「いやアコル。ここは本気で受験して、堂々と30位以内を目指せ。その上で商学部に入った方がいいだろう。そうすれば商学部の貴族に大きな顔をされずに済むし、研究室の学生からやっかみを受けなくて済む」


 そもそもモンブラン商会が推薦している者を、魔法部に引っ張るのはルール違反だと、会頭は少し怒った顔で付け加えた。


 まあ俺としては、当初の目的でもある魔法陣を学べるチャンスが貰えただけで、この幸運に感謝したいところだ。

 こうなったら、何が何でも一般試験に合格して、商学部を卒業するまでに魔法陣の作成が出来るようになろう。





 あっという間に9月1日になってしまった。


 俺は中級学校に行ってないから、この2年間の過去問題だけを勉強して試験に臨んだ。

 一般試験は、共通問題が400点で、各学部の問題が100点の、合計500点が最高点となっていた。


 不思議なことに俺は昔から、文章や本の内容を一度見たら記憶できた。

 もちろん関心のない文章は、あまり覚えていないこともあるが、勉強しようとして覚えたものは忘れない。


 各学部問題から先に、その後で共通問題が行われ、会場となった大講堂で受験者全員が一斉に始める。

 今年の受験者は266人。俺の受験番号が266番なのには笑った。もう合格してるけど。


 魔獣の大氾濫に備え、魔法部と特務部の定員が今年から増えていて、定員は合計で150人になっているけど、既に推薦で合格している貴族部5人、魔法部5人、商学部10人、特務部30人を除くと、一般試験で合格できるのは100人となる。


 ◆ 貴族部 定員30人 領地経営や王宮勤務を目指す。


 ◆ 魔法部 定員30人から50人に変更 魔術師・魔法師・魔法省勤務を目指す。


 ◆ 商学部 定員30人 商会・王宮・各ギルド本部勤務を目指す。


 ◆ 特務部 定員30人から40人に変更 軍・魔法省・王宮警備隊勤務を目指す。


 ちなみに、商学部と特務部は2年間、貴族部と魔法部は3年間で卒業できる。


 俺は退出可能な終了30分前に席を立った。他にもちらほら席を立つが、その中にワイコリーム公爵家の嫡男ラリエス様が居た。つい隠れちゃったよ。


 ……ああ、俺が1年早く入学したから同級生になっちゃったんだ。魔法部には絶対に近付かないように……いや、共通科目があるから無理かぁ。




 そしてドキドキの合格発表当日、俺は会頭と一緒に王宮に商談に行ったので、合格発表を見に行ったのはセージ部長だった。


 会頭が王宮の花壇の管理を提案することを前向きに検討してくれたので、見積りと数種類の花の見本を持って、ウキウキと管理部に向かった。

 当然今日は完全商人モードで、真面目な商会員キャラを演じている。


 俺は得意な絵を描き、花壇の完成図や花の植え方に高低を付けることで、どの角度から見ても美しく見えることを力説した。


 なんと、俺の出したちょっとぼったくった見積りは、花壇を管理している管理部の予算額より少なかった。今までどんだけ無駄に使ってたんだよって突っ込みたくなったよホント。

 モンブラン商会の名前が大きかったのか、王宮正面の中庭のみだけど仕事を受注することができた。


 よっしゃー!


「モンブラン商会として仕事をするからには、失敗は許されないぞアコル」


「はい会頭。母さんなら大丈夫です。俺も休み毎に様子を見に行きます」


 俺の立ち上げた商店【薬種 命の輝き】の利益は、モンブラン商会と折半になるけど充分だ。この仕事の利益で、妹のメイリが中級学校に行ける。よし!




 本店に戻ってうきうきとスキップしていたら、誰かが俺の肩を掴んだ。叩いたんじゃなくてガシッて掴まれた。 


「アコル、やり過ぎだ。目立ちたくないなんて、もう無理だぞ!」って、セージ部長が怖い顔をして俺を睨む。


 そしてそのまま、会頭の執務室に引き摺られていく。どうして???

 で、何故かいつものメンバーに囲まれ、盛大に溜息をつかれている。


「いや、だって会頭が本気でって・・・」


「だからって、何故共通問題と専門問題の両方で1位になるんだよお前は!」(マルク人事部長)


「俺だって1位になるなんて、全く思ってなかったんですけど・・・」


「どうするんだよ、合格通知書を受け取った時、商学部代表で挨拶しろって言われたぞ! いや、そこじゃない、魔法部の教授と商学部の教授が喧嘩になったから、一応商学部に入学すると伝えたけど、魔法部にしつこくされるぞアコル」


とっても疲れた表情でセージ部長が文句を言う。知らんがな……


「ええ~、一応って言ったんですかセージ部長? 嫌だなあ。私はDランク冒険者なのに、魔法部に入ったら虐められますよ。私の夢は、いえ目標は大商人ですから。それは譲りません」


俺は堂々と胸を張って答えた。やっちゃったものは仕方ない。


 ……それならそれで、秀才キャラで行くまでだよ。話し掛け難く、付き合いの悪い学生。愛想も悪い方がいいな。学校にお客さんは来ないし。




 次の日は、制服や教材を購入するために高学院に向かった。


 制服の試着は自分じゃないと無理だし、今日から図書館の入館が出来る。

 それに、【近代魔法陣研究室】に行かなきゃいけない。

 個室の確保は、自分の魔法を極めるためにも必要だし、面倒な魔法省に何か言われないためにも必要だ。


「失礼します。商学部に合格したアコルです。マキアート教授はいらっしゃいますか」とドアを開けて研究室に入ると、この前も居た女性が「合格おめでとう。教授なら補助部屋にいらっしゃるわよ」って教えてくれた。


 しっかりと魔法部へのお誘いを断る決心をし、俺は深呼吸をしてからノックして補助部屋のドアを開けた。


 そこにはマキアート教授と、とんでもない人物が待っていた。

 この前は無かったちょっと豪華なテーブルセットの椅子に座り、驚いた顔をして俺を見ている。


 ……ギヤァーッ! 嫌な予感しかしない。なんでだ!?


「失礼します、マキアート教授、お邪魔でしょうか学院長」


「いや、問題ない」


「これです学院長。信じられないでしょう? アコルは平民で学歴なしですよ。フッ、私の興奮を分かって頂けましたか?」


 俺の顔を見て、マキアート教授は興奮したように学院長に話し掛ける。


「座りなさいアコル君、君はDランクの冒険者だそうだね。冒険者をしながらモンブラン商会で働いているのかね?」


 よく見たら椅子は3脚ある。これは逃げられない配置だ。……仕方ない座ろう。


「はい学院長。私は10歳少し前に冒険者登録して、10歳からモンブラン商会で働いています」


 何とも言えない圧を感じる。静かに座ってるだけなのに、王族としての威厳というか独特の雰囲気で、俺に探りを入れてくる。


「モンブラン商会では護衛の仕事でも?」


「いいえ、マキアート教授。私はレイモンド会頭の秘書見習いをしています」


「なるほど、鬼の心眼持ちのレイモンドか……君の両親の仕事は?」


「私の両親は二人ともAランク冒険者でした。父は変異種の魔獣と戦って亡くなり、母は薬師として働いています……学院長」


 いかん、変な汗が出てきた。完全に良くない方向に向かってる気がする。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

本年の投稿は本日で終わりです。次話は1月1日の予定です。

本年の応援、ありがとうございました。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。素敵な新しい年をお迎えください。


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