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3 冒険者ギルド

大変ながらくお待たせいたしました。

やっと更新できました。これからはサクサク更新できるよう頑張りますので、応援よろしくお願いいたします。

主人公のアコルは、大商人を目指しています。たぶん。

 俺たちは順調に旅を続け、12月の中旬に王都ダージリン内に移動してきた。


 途中、何度もマジックバッグ作りに挑戦したけど、なかなか完成しない。

 それどころか、右腕を何処かへ持っていかれそうになった。危ない危ない。


【上級魔法と覇王の遺言】に書かれている魔法陣に間違いはないと思うのだが、まだ魔力量が足らないのかもしれない。それなら、もっと魔法を使う練習をするしかない。


 ポルポル商団の薬草倉庫と製造工場、そして俺が住むことになる宿舎は、王都の中心に在る王城からは7キロくらい離れている。

 王都の中心に在るポルポル商団の店は、上級貴族が住む上級地区ではなく、下級貴族や庶民が住む下級地区に在った。


 ちなみに中級地区には、各役所や警備隊本部、商業ギルド本部、お貴族様が通う学校や病院、お貴族様用の商品を扱う大商会の店があるらしい。

 庶民が中級地区に入るには、専用の許可証が必要だとか・・・面倒そうだ。


 王都到着二日後、今日は団長のポルさんと一緒に荷馬車で王都の店に行く。


 宿舎の在る地区だって多くの家や倉庫が建ち並んでいて、凄い都会だと思っていたけど、少し小高い場所に建つ王城が見えてくると、瞬きするのも忘れるくらい、びっしりと高い建物やお洒落な外観の店が建ち並んでいて圧倒された。


 軍本部や冒険者ギルド本部、商業ギルド王都支部は下級地区にあるようで、道行く人は軍服姿の人や冒険者風の人が増えてきた。

 ポルポル商団の店は、軍本部と冒険者ギルド本部の真ん中辺りに位置していたので、残念ながら華やかさはなかった。


「ポル団長、うちのお客様は庶民が殆どですか?」


荷馬車から出来上がった商品を下ろしながら、俺は団長に質問した。


「いや、4分の1は軍に納入してる。軍は傷薬の軟膏や湿布がメインだ。傷薬は他の商会の軟膏より評価が高いから、頑張って質を落とさないように精進しなくちゃいけない」


 商品名と数量を確認しながら、団長が答えてくれる。軍に納入しているってことは、うちは国から信用を得ている商団だということだ。

 そういえば、昨日箱詰めしたのは湿布だったと思い出しながら、ちっちゃな商団だと思っていたポルポル商団が誇らしく思えてきた。


 これから団長は店長のバイズさんと一緒に軍に納入しに行くらしく、俺は店長に挨拶をして、2時間の自由時間を貰った。


 迷子にならないよう、王都を見学してもいいと許可は出たが、何処に何があるのか分からない。

 軍本部の方は遠慮した方が良さそうなので、反対方向の冒険者ギルド本部の方に向かって歩き出した。 


 冒険者ギルド本部は4階建で、威厳と風格を備えたがっしりした建物だった。ここは普通の冒険者が出入りできる所ではなく、Sランクの冒険者や、各地のギルドマスターや幹部クラスの人しか入場できないらしい。


 本部の隣に建っているのが、コルランドル王国の王都支部で、3階建で冒険者ギルドを表す大きな看板が掛かっていた。

 冒険者ギルドの看板は、中心にドラゴンが描いてあり、ドラゴンの体の上で2本の剣がクロスしている。


 まだ9歳だけど来年の3月には10歳になるから、手続き方法とか必要なお金の確認をするため、勇気を出して冒険者ギルドのドアを開ける。


 時刻は午後2時前、ちょうど冒険者が居ない時間帯だったようで、広いフロアーや受付には、冒険者の姿は少なかった。


「すみません、もう直ぐ10歳になるんですが、登録方法を教えてください」


 新規加入・更新と書かれた受付に人が居なかったので、俺は総合受付と書かれた方へと移動し、とっても綺麗なお姉さんに声を掛けた。


「新規加入には、魔獣討伐や危険地帯の任務遂行を目指す一般コースと、植物や鉱物などの採取を目的とする素材採取コースがあって、一般コースは魔法が使えるか、剣のテストを受けて合格しないといけないわ」


「ああ、それなら簡単な魔法は使えるから一般コースがいいです」


 冒険者にコースがあったなんて知らなかったよ。


「一般コースなら小金貨2枚(2万円)、素材採取コースなら銀貨1枚(5千円)が必要ね。それで、誕生日はいつなの?」


「3月です」


「あら、3か月前なら登録できるわよ」


「えっ? 本当ですか? それなら登録したいです」


 予想外のことを聞いて、思わず登録したいと言ってしまった。今なら時間もあるし人が少ないから時間内に戻れるはずだ。


「じゃあ、魔力検査と簡単な攻撃魔法のテストをして、FランクスタートかEランクスタートかを決めるわね」


 テストの準備に少し時間がかかるから、その間に書類に必要事項を記入するように言われたので、なけなしの小金貨2枚を払って、ふんふんと質問に答えながら記入していく。


 得意な攻撃魔法の名前・・・という欄で手が止まる。

 最近覚えたエアーカッターは……書いたら不味いだろう。

 ドラゴンブレスファイヤーは……まだ成功率が低い。

 ファイヤートルネードは……まだ試してない。たぶん無理。


 ふと、母さんの言葉を思い出した。


【弱いフリ、目立たない、15歳までは人前で本気を出してはダメ!】って。


 弱い攻撃って何だろう? 普通のファイヤーボール? 攻撃修正魔法? 風魔法の初歩って何? と頭を抱えていると、いきなり怒鳴り声が聞こえて、大勢の人がギルドに入ってきた。


「おい、ギルドマスターを呼んでくれ、俺はAランク冒険者パーティー宵闇の狼のリーダーだ。

 依頼票に書いてあったボアウルフの群れの中に変異種がいた! 情報が間違っていたからケガ人が多数出た。

 ケガの治療費はギルド持ちだよな! この責任は取ってくれるんだろうな!」


凄く強面で屈強そうなお兄さんが、奇麗なお姉さんに唾を飛ばしながら怒鳴っている。


 綺麗なお姉さんは顔色を変えて、他の職員に助けを求めて視線を泳がせる。

 いかにも新人ですという感じの女性を呼んで、俺の手続きをするように頼んで、急いでギルドマスターを呼びに奥に走っていった。


「あの~、向こうのカウンターで手続きします」と、交代したお姉さんがビクビクしながら俺に言うので、カウンターを移動して残りの必要事項を急いで書き込む。


 どうも雲行きが怪しいので、早くここを立ち去りたい。いや、早く冒険者登録を済ませたい。


 最後の注意事項の、魔法攻撃ができる者は、必ず魔力検査を受けることという文章を読み終えて、俺は得意な攻撃魔法の欄に、ファイヤーボールと書いて書類を提出した。


 すると今度は他の冒険者たちが「龍山にアースドラゴンが出た!」とか「どうして注意情報が出てないんだ!」って叫びながら入ってきた。

 なんだろう・・・冒険者ギルドって、いつもこんなに騒々しいのかな?


 ざわざわと喧騒が酷くなる中、受付を代わったお姉さんが「ヒッ!し、しばらくお待ちください」と言って、怯えたように奥に逃げていった。

 何事?って後ろを振り返ると、頬に大きな傷のあるおじさんが、怖い顔をして立っていた。


 ……ちょっと待って! なんで俺を一人にするんだよ! 俺は何も関係ないよな。


「おいチビ、なんでガキがここにいる」


「ええっと、冒険者登録に来たんですが・・・」


「はあ? お前、どう見ても10歳じゃないよな? 女のくせに冒険者? しかも一般コースだぁ?」


 ……ああ、これはイカンやつだ。自分たちの怒りを弱者にぶつけて憂さ晴らしをする手合いだ。


「俺は男で、もう直ぐ10歳です」


 くだらないことに巻き込まれないよう、出来るだけ平静を心掛けて返事をする。


「男? こりゃ可笑しい。お前、金が必要なら冒険者じゃなくて、娼館にでも行けよ。10歳なら闇でも客は付くぜ」


 ……う~ん、下品だ! 相手にならないほうがいいな。


 後から入ってきた連中(4人組)はガラが悪いというか、大した冒険者じゃない気がする。Aランク冒険者だった両親が見たら顔をしかめるだろう。



「あの~、今日は取り込んでいて攻撃魔法テストが出来ません。Fランクスタートでよろしければカードをお作りしますが、Eランクスタートをご希望でしたら明日来てもらえますか?」


 死にそうな顔をした新人らしきお姉さんは、「姉ちゃん新人か?」とか「可愛いねぇ、今晩付き合ってよ」と絡まれながらも、なんとか俺の手続きをしてくれる。


「次はいつ来れるか分からないから、Fランクスタートでもいいです」


 なんだか凄く面倒くさくなった俺は、本格的に絡まれる前に手続きを終えることにした。


「はっ!Fランクスタートでもいい? なに格好つけてんだよガキが。Eランクってのはな、身体強化ができてないとダメなんだよ」


「フッ、そうなんですか、ありがとうございます。もっと精進して頑張ります」


 出来上がったばかりのFランクの冒険者カードを受け取ると、絡んできた男と視線を合わせないようにして踵を返した。


 ……あれ? 魔力検査は受けなくてよかったのかな? 絶対に必要と注意書きがしてあったけど・・・



「おい、今あいつ笑ったよな? もう登録が終わったんならアレも冒険者だ。可愛い新人には教育が必要だろう?

 Dランクの俺が、身体強化がどういうもんか教えてやるのが親切ってもんだろう」


「おいおい、あんまり派手にやるなよ。いくらサブギルドマスターが留守でも、ケガをさせたらAランクの偉い人に注意されるぞ」


 後ろから不吉な会話が聞こえてきたが、ここは逃げたもん勝ち。

 俺は出来るだけ気配を消して出入り口に向かって急ぐ。目立たない目立たないと心の中で呟きながら。


 がしかし残念ながら、ドアの前に立っていた派手なオレンジ色の髪の男に、ガシッと突然腕を掴まれてしまった。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。


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