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251 新チーム結成

新章スタートしました。

 ワートン領から王都に戻った俺は、ランドルでそのまま王宮に乗り付け、ワートン領の状況を王の代行をしているリーマス王子に伝えた。


 主要メンバーである大臣たちの多くはヘイズ領とワートン領に居るので、王の執務室で俺の話を聞いているのは、リーマス王子とワイコリーム公爵、一般軍大臣のハシム殿だ。

 マサルーノ先輩は、王立高学院特別部隊の護衛のためワートン領に置いてきた。


 本来ならトーマス王子が留守番をしているはずだったが、彼は王立高学院特別部隊と一緒に王都を出て留守だった。

 彼は途中で行き先を変更し、国王が心配でヘイズ領に向かったらしい。


「信じられない、王立高学院特別部隊の学生に、しかも女学生に乱暴を働き、火魔法で攻撃したとは・・・貴族としての常識を疑うという程度の問題ではありませんね」


娘であるノエル様が率いている王立高学院特別部隊に対する蛮行に、ハシム殿は怒りを滲ませて言う。


 もしもノエル様だったらと想像したのか、ハシム殿の体から魔力が漏れだしてしまう。

 俺だって、あの時覇気を放とうとしたし。


 今回はミレーヌ様が率いていたが、マギ公爵令嬢であるミレーヌ様に対しても、不敬を越えた態度を取っていたことも伝えたので尚更だ。


「いつもなら魔獣討伐専門部隊が同行しているので、そのような蛮行は有り得なかったのですが、今回うちは出動しませんでした。

卒業した覇王軍メンバー数人に、護衛を任せたことが裏目に出ました」


「いえいえワイコリーム公爵、魔獣討伐専門部隊は皆が満身創痍、元々働き過ぎなのです。

 問題は、領都ワートンに宰相や他の大臣たちが滞在しているのに、今回の事件が起きたことです。


 魔獣の大氾濫に打ち勝ち、多くの民を救うため、今回の件は政治的に好機と考えます。

 俺は政に口出しする気はなかったけど、邪魔するようなら容赦しません。

 時代にそぐわない人は表舞台から去っていただき、先に進まねばなりません」


 申し訳なさそうにしているワイコリーム公爵の責任ではないと言って、この機会に邪魔者をできるだけ排除すべきだと、前向きな話に切り替えていく。


 怒り心頭だった二人は「成る程」と言って頷き、俺と同じように不敵に笑った。


「俺は今後、覇王権限を行使するつもりだ。

 全貴族に課題を与え、爵位を懸けた試験を行う。合格できなければ如何なる言い訳も許さず、爵位を落とすか剝奪する。


 当然、国王を含めた王族にも課題を与える。

 レイトル王子には、サーシム領の領主に就任してもらい、ログドル王子には、ワートン領の復興が落ち着いてから領主になってもらう。


 ヘイズ領はトーブルかリーマス王子に託したいが……まだその時ではない。

 トーブルもリーマス王子も、今は高学院と王都に必要な人材であり学生だ」


 王族から外れたいと願っているトーブル先輩と、同じく王族であることを嫌悪しているリーマス王子は、領主に向かない気もする。

 できればこの2人に、医療の未来を託したいと俺は思っている。


 ヘイズ領の領主という話を振られた目の前のリーマス王子は、一瞬、顔色を変え下を向いたが、直ぐに力の籠った輝く瞳で俺の目を見た。


 ……リーマス王子は本当に強くなった。どの王子よりも欲がないからこその強さだ。


 これからコルランドル王国をどう牽引していくのか、王や宰相やレイム公爵が居ぬ間に決めてしまおう。



 ◆ 覇王探求部会 ◆


 今後のコルランドル王国が向かうべき方向について話し合った一週間後、王立高学院特別部隊が救済活動を終えて学院に戻って来た。


 グレードラゴンを倒し、しっかり魔獣討伐もして魔石採取済みのマギ公爵とログドル王子一行も、王立高学院特別部隊と一緒に戻ってきた。

 コーチャー山脈の西側で魔獣討伐をしていた、マリード侯爵率いる国王、レイム公爵、トーマス王子一行は、二日後に王都に戻ってくるらしい。



 今日は【覇王探求部会】の一回目の会議である。


 会議に出席するメンバーが揃うまで、俺はボンテンクとログドル王子から、その後のワートン領の報告を受けていた。


「今回は王命で魔石採取に出ているので、宰相たちは採取するまでは王都に戻れません」


今回初めて会議に参加するログドル王子が教えてくれる。


 ……またコーチャー山脈に戻ったんだ。無事に帰れたらいいね。 


「カイヤを襲った貴族たち(奴等)は全員、三日後に王都に到着する予定です」


不機嫌なボンテンクが、罪人の護送日程を報告する。


 ワートン領の役人は役に立たず、警備隊は治安維持で忙しかったので、マギ公爵が自領から警備隊を招集してくれたらしい。


 結局ワートン公爵は死亡が確認され、嫡男も夫人も亡くなっていた。

 生き残っていた次男や三男も重傷で、ワートン領の復興を指揮できる状態ではなかったそうだ。


 救済用のマジックバッグは次男が所持しており、これはワートン公爵家の物だと言って、笑えるくらいお粗末な中身は出したが、マジックバッグは誰にも渡さなかったとか。

 

 マジックバッグに期待していなかった俺は、王都に戻る前、貴族街に散乱していた食器・調理器具・絨毯・衣類・木材等を、覇王権限を発動しマギ公爵たちに没収させておいた。


 ああ、サナへ侯爵一行は、領主の別邸が無傷だったので、そこに屋敷を失った貴族たちを避難させ、自分たちも宿代わりにしていたそうだ。

 確かに貴族も被災者だ。助ける必要ありと宰相が判断したんだから好きにしたらいい。


 ……それが宰相として最も重要な仕事だったんだろう。


 ワートン領には救済活動の指揮を執れる者が居なかったので、俺はサーシム領で経験を積んでいたレイトル王子に、ワートン領の指揮を任せて王都に戻っていた。




「お集まりいただきありがとうございます。

 本日集まっていただいた皆さんは、①魔獣氾濫の謎の解明、②古代魔術具の起動及び複製、③大災害に対応できる医療体制の確立、④ブラックドラゴン対策 以上4つの課題をこなすため、必要な戦力だと俺が判断したメンバーです」


 集合したメンバーは、高学院から学院長・副学院長。医療コースからリーマス王子とモスナート教授。

 覇王軍から俺とラリエス、ボンテンク、エイト、マサルーノ。王立高学院特別部隊からノエル様とミレーヌ様。


 王宮から、国務大臣ワイコリーム公爵、一般軍大臣ハシム殿、建設大臣ログドル王子。

 冒険者ギルドから、ギルマスと冒険者ギルド連携部のダルトンさん。

 本当は、国王とトーマス王子も呼びたかったが、まだ王都に戻っていない。


「覇王軍の7割は①魔獣氾濫の謎解明のため、ボンテンク、マサルーノをリーダーとし、今後調査や研究のため各地に散らばることになります。

 王立高学院特別部隊は、副学院長をリーダーとし②古代魔術具の起動作業をしてもらいます。


 リーマス王子には、高学院の医療チームを率いて、③大災害に対応できる医療体制確立のため、医薬品の開発や応急手当方法の普及活動をお願いします。


 ログドル王子には、全ての分野を纏める責任者として、情報収集や王宮、主に国王との調整をお願いします。

 明日から半日は覇王軍本部で仕事をしてください。


 ダルトンさんは、①魔獣氾濫の謎解明の手掛かりとなる可能性がある、魔力量測定と魔石の変化実験を龍山とセイロン山でお願いします。

 Bランク以上の冒険者4人一組で最低6チームくらいを集め、実験の遣り方をライバンの森で教えてください」


俺はリーダーを指名し、いつもより丁寧な話し方で活動内容を割り振っていく。 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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