第六十五話 悪魔のイタズラ計画
リクシーがレジーナのことを考えずに荒木を陥れようと心に悪い笑みを浮かべながら悪巧みをしていると。丁度そこに起きたばかりのレジーナが現れた。
「おはよう。起きたのね」
「さっきな。パラメさんおはようございます」
「おはようございます」
「水はどこにありますか?」
レジーナは喉が渇き台所に来ていた。しかし、台所には直接水に見えるような液体はなかったので、水の場所をこの家を知っている二人に聞いた。
「はい。どうぞ」
パラメは瓶に蓄えられている水をコップに移し、レジーナに渡した。
「悪いな」
パラメからコップを受けとった後、レジーナはすぐにその水を飲みほした。
「朝食が出来ましたから、食べますか?」
「はい。食べます」
気絶する直前の記憶がないレジーナは床で眠っていた原因を作ったのが、パラメの料理であると知ることが出来きていなかった。何も知らないため、パラメの料理が普通の料理であることを疑いはしななかった。普通の料理だと思っているレジーナに再びパラメの料理が襲い掛かろうとしていた。
「(記憶がないのね)」
パラメの料理を食べた後の良くあることで共感できることだった。パラメの料理がレジーナの身に襲い掛かろうとしていたがリクシーはその光景を見ているだけで、特段気にしていなかった。リクシーが教えて居れば回避できたが、言わないため食べる選択が覆ることはなかった。
リクシーは荒木に怪しまれないようにレジーナにも食べてもらうつもりなので、助ける気はなかった。
この時レジーナは荒木と一緒に被害に会うことが決まっていた。
「レジーナさんはテーブルで待っていてくださいね。すぐに用意しますから」
「私も手伝おう」
「客人なんですから、手伝わなくていいんですよ」
「いいから」
パラメに対して嫌悪感のないレジーナも大変だろうと思い、手伝う事にした。意力のあるリクシーも準備を一応手伝う。そして、テーブルに料理を置いていくと、レジーナはリクシーの料理が置かれていないことに気づいた。
「(リクシーの料理が置いていない?)リクシーは食べないのか?」
レジーナはリクシーの料理が食卓にないことを何か特別なことでもあるのかと気になっていた。そのため、料理を運んでいるリクシーに確認を取ることにした。荒木の料理が運ばれないことに関しては考えに入れてなかった。なので、荒木の料理がないことは気にしていなかった。
「ええ、お腹は空いてないから、食べないことにしたの」
記憶がないことを良いことにリクシーは姉と同じ言い訳で、不自然ではないことをレジーナに示した。料理のことはレジーナに一切知らせず乗り切ることにした。
「そうか(せっかく食べられるのに食べないのか)」
微塵も危険だと思っていないレジーナは特に食べないことが不思議とは何も思わなかった。しいて言えば、まともな料理を食べておかないのは少しもったいないと思っていた。なら、リクシーの分まで美味しい料理を堪能しようと思っていた。
そして、さらに準備が進むと今度はリクシーがテーブルを見て気付いた。
「あれ? 荒木はどこ?」
リクシーは後で用意されるのかと思っていて気にしていなかった。しかし、いつまでたっても荒木の料理が用意される気配がなかった。
リクシーは荒木の所在が気になった。いないと言いうことは荒木が何をしているのか分からないということで、安心できる状況ではなくなっていた。悪夢の影響からか何か危険な場所に連れていかれるのかも知れないという不安が襲い、焦る必要はないがリクシーは焦っていた。焦りからついつい、声を漏らしていた。
近場にいたレジーナはその声に気付いたが特に気に掛ける必要がないと判断して拾わずに無視した。
「荒木さんなら、森に行っているわよ」
丁度リクシーの漏らした言葉を耳に入れたパラメが答えた。当然パラメは二人と会う前、暗いうちに荒木が言っていたことを覚えていた。
荒木は現在家にはいなかったので、このリクシーの作戦は骨折り損になってしまっていた。
「「(なぜ?)」」
日ごろの影響か二人そろって急激に変な行動をとっている荒木に反応していた。意図されている死線を潜り抜けて強くなっている二人は荒木に反応する速度も成長していた。
しかし、二人には反応の違いがあった。
リクシーは作戦が意味なくなりつつあることよりも、単純に予測のつかない危機感のためいないことに注意を惹かれていた。
レジーナの場合は先ほどの無視をしていたが、荒木が遠出しているとは思っていなかった。またすぐに現れるだろうと思っていた。そのため、荒木を考えていなかった。しかし、パラメから荒木の情報を聞き本当に別の場所にいることを遅れること頭の中に入れていた。
普段なら連れていかれて苦行になるところだったが、今日は違っていた。二人は疑問に思ったが、モンスターに囲まれるなどの差し迫った害が自信に及ばなかったので一安心できていた。
「(そうだ)」
リクシーは閃いた。
「いつ帰ってくるの?」
諦めずに荒木の帰宅時刻を聞いた。まだリクシーが諦めていないのは荒木が早く帰ってきて、チャンスが出来るかも知れないと思っていたからだ。それに、このままではレジーナが一人だけやられてしまう残念なことになる。
「早めに帰るかもしれないと荒木さんに言われたけど、まだ帰ってこないみたいね。少なくとも昼頃には帰ってくると言っていたわよ」
「(残念)」
帰る時間を聞いたリクシーは荒木に一杯食わせることの出来る可能性がない事実を知り、潔く諦めた。別に被害に会うのはレジーナだけなので、自分がってだがパラメの料理を回避できただけでもリクシーは良いとした。再びリクシーは何も言わないので、レジーナだけが被害に会うことが確定した。
そして、料理もテーブルに揃い…
レジーナは再びパラメの料理を口に入れた。
「ッ!(まずい!? 昨日これを食べて…)」
レジーナは悪魔の料理を口に入れると余りのまずさに失くした記憶を呼び戻していた。しかし、記憶が蘇ったからと言って、パラメの料理が緩むことはなく、レジーナは耐え切れなくなり、再び床にドンッ! と大きな音を鳴らして悪夢へと戻っていた。
「…(いつも通りの効果ね。食べなくて良かった)」
リクシーはパラメの料理はいつも通りの効果を確認できて満足していた。同時にパラメは今自分が被害に会うことがないので、レジーナが倒れた瞬間を目の当たりにしてほっとしていた。
「あら、あら、また疲れたの?」
パラメは呑気にも再び疲れただけだと思っていた。そのため、昨日の疲れが残っているのだろう程度にしか考えていなかった。
「そうみたい」
「まだ余っているから、リクシーも食べる?」
リクシーがほっとしたのも束の間、料理は余りに余っていた。パラメは料理がまだたくさん余っているのでリクシーに食べさせてあげようとしていた。リクシーにとっては嫌な提案だった。体に害のない美味しい料理だったら嬉しかったが、レジーナを悪夢へといざなった現場を見ているリクシーからしてみると、最悪な親切だった。
「わ…私はお腹空いていないから入らない。それより、レジーナは疲れているからベッドで寝かせるわ」
レジーナがどこで寝ようがあまり気にしていないリクシーだったが、話を逸らす口実にレジーナを移動させる名目で、この場から逃げ出すことにした。
「そうね。まだ疲れが取れていないみたいだから、ゆっくりと休ませたほうが良さそうね」
再び倒れたのは荒木から言われた通り疲れが溜まっているせいだとパラメは思った。荒木を疑うことを知らないパラメはリクシーを疑うこともなく素直にレジーナをもう一度休ませるために頷いた。
「わかった。私が運ぶから、お姉ちゃんは料理を食べててよ」
話題逸らしに成功したリクシーは内心ガッツポーズを取りながらリクシーはレジーナを持ち上げた。リクシーはレジーナをベッドへと運び、その場から逃げ出した。料理が消えるまでリクシーは何かと理由を付けて帰ることはなかった。
それから 荒木が村に着いた頃、レジーナは似たような悪夢から嫌な汗をかきつつも目を覚ましていた。レジーナは下からの柔らかさを感じていた。そこはベッドの上だった。前回目覚めたときは硬い感触の床とは大きな違いで、寝心地は良かった。
パラメの二度目の料理を食したことによって、レジーナは一食目で消された記憶を取り戻していた。すでにパラメの料理を二度も体験したレジーナには忘れることなど出来ないほどにその脅威を印象強く記憶に刻まれていた。
辺りを見回すとそこには窓から外を眺めて、リクシーがゆったりとしていた。計二回の料理を覚えているレジーナは元凶たるリクシーに原因を問うことにした。
「何で知っているうえで食べさせたんだ?」
そう、パラメはリクシーの姉つまり、親族のリクシーが知らないはずがないとレジーナも気付いた。そして、レジーナは2度も料理を食べさせられていた。知っているのなら注意するくらい簡単なはずだが、何もしてこなかった。つまり、レジーナはパラメが確信犯であると断定していた。リクシーから悪意が向けられていると思ったレジーナは珍しくリクシーに怒っていた。
「起きたのね。家に来てくれたお礼にせっかくだしね。体験してみないと分からないかなと思って、それに私だってちゃんと食べたし。ま…死にはしないんだから、気にしない。気にしない。あははは…」
ボーっとしていたら気配もなくいきなりレジーナに問いかけられたリクシーは適当なことを言って色々と誤魔化していた。見苦しくも、最後は苦し紛れに笑ってごまかしていた。
「知っているのなら余計なことをせずに伝えろ」
「いやー、ほら、体感しないと意味ないからね。これなら荒木にも効きそうだと思わない?」
リクシーはレジーナの興味を惹くように本来の目的である荒木を引き合いに出して向けられている怒りを逸らすことにしていた。人間に恨みを持っていることは荒木も知っているので、少しは興味を惹いてくれるだろうと思っていた。
「じゃ、荒木はどうしたんだ? 食べていたような気がするが」
荒木のことは興味がないため、気に留めていなかったので、記憶が曖昧で食べて居たかどうか記憶していなかった。何か効きそうになく平気そうに食べている姿、易く想像できてしまっていた。その影響で荒木が食べていたような記憶が置換されていた。
「荒木は何かに気づいたのか食べなかったわね」
荒木には効いていないように見えていたリクシーだが、レジーナに成功できるからもしれないという可能性を見出す方向に運んで行くことにした。荒木が嫌がって拒否したと勝手に思い込んで欲しいなと思いながら、平然と都合の悪いことは記憶から消し去った。
「そうか。なら、食べさせる価値はあるのか」
人間である荒木に気を取られてリクシーを疑わないレジーナは願望通りリクシーの話を根拠に荒木にも、もしかしたら効果があるのかもしれないと思っていた。レジーナはリクシーの意地が生み出した嘘にまんまとはまっていた。
「それで、あいつに食べさせるにはどうするんだ?」
警戒している相手にもう一度同じ料理を食べさせるのは普通の人でも難しいと思われた。仕掛ける相手が、普通の枠では収まらない荒木ならもってのほかだった。だから、もう一度食べさせることを簡単なことのように言うリクシーには何か策があるのだろうと思っていた。でなければ、そもそもそんな話を持ち出してこないと思い聞いた。
「姉が作るのでなく私が作ったことにすればいいのよ。そうすれば荒木にだけ自然に食べさせることが出来るわ」
「それは怪しまれやしないか?」
まずレジーナはリクシーが荒木に信用されていると思えなかった。そのため、リクシーの料理では役不足だと思えた。なので、リクシーのその策には信頼を置くことが出来なかった。
リクシーはレジーナに残念な感じにされていることを察した。しかし、荒木に食べさせるという目的の作戦に対して成功することしか考えていないリクシーは臆せず話を進めることにした。
「大丈夫! 本当に料理を作るから、怪しまれないわ。それに料理を手伝えば料理を確認できるから万が一にも間違えずに済むしね」
「確かに。まともに食べられる料理を作れるのは私たちしかいないか。その前にリクシーは美味しく作れるのか? 私も料理くらい作れる。あの料理を食べるくらいなら私が作ろうか?」
ここに来るまでの道中、荒木が料理を管理されているため、リクシーの料理を食べる機会はなかった。
リクシーの料理を全く知らないため、姉妹であることから同じ料理になってしまうのではないだろうかと警戒していた。それほどまでにパラメの料理を危険視していた。
「いやよ。あなた普通に荒木の味なし料理を食べられるじゃない。そんな味覚を信用するわけにいかないわ。私は普通に味がある料理が食べたいの。お姉ちゃんが例外なだけで、味覚も正常だし、私は普通に美味しい料理を作れるわ。だから、私の作った料理をレジーナが食べればいいのよ。人間の料理は食べられるでしょ?」
命の危険のある料理を食べたくないが、かといって、味のしないまずい料理もリクシーは食べたくなかった。レジーナも料理が出来るだろうと思っているが、レジーナは荒木の味のしない料理も人間が嫌いという理由により顔には出していないが平気そうだったことを思い出していた。味の好み的に荒木もレジーナも結局、同じ穴の狢の可能性が高いと思っていた。レジーナが作っても、リスクは変わらないなら自分で作るしか選択がなかった。
「普通に作れるのなら、いいんだが…まあ、味見をして確かめればいいか」
雰囲気や性格は似ていないが、リクシーは一応パラメと姉妹なので、料理だけは似るかもしれないと思った。しかし、味見をして確認する機会は訪れるので、その時に判断すれば危機回避くらいできるとレジーナは考えていた。
「見てなさい! 私の料理の腕を」
レジーナに料理の腕を疑われるとリクシーは怒り、張り切ることになった。
レジーナは一歩引いていたが、リクシーは打算的にこの中で自分の腕が一番信頼できた。どうしても自分で料理を作りたかったため、レジーナに流れるよう乗せられて見せた。
「まあ、それはいいが、早速作るのか?」
気にしないレジーナはリクシーに聞いた。
「いえ。昼には帰らないかも知れないから、夕食が勝負ね」
斯くして、些細な嫌がらせを計画したリクシーとレジーナの共闘が始まった。




