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第六十四話 悪夢の料理確定

 荒木が村に帰ると昼近くになっていた。


 狩りでだいぶ山菜は取れたから、後は肉を譲ってもらうだけだな。


 村に着いた荒木はパラメに振舞う料理に使う肉を融通してもらうため、解体場まで付いてきていた。


「これから解体をするんですよね?」


「ああ、村のみんなに分けるからな」


 新鮮なうちに解体するのが普通のようだった。ゴーバ達も例外ではなく取れたての肉を処理するようだった。


「俺も肉をもらえますか?」


「もちろんだ。村の人たちに食べてもらうために狩ってきたからな」


 ゴーバでは遅そうだな。俺の方が早いだろう。


「その解体。森を案内してくれたお礼に俺がやりましょう」


 解体には時間かかりそうだなと思っていた。時間的にそろそろ料理を作りたいと思っていた荒木は手っ取り早く肉を入手したかった。そのため、ゴーバよりも早いと自負している荒木は自分で解体することを申し出た。


「いやバンシにやらせるから、大丈夫だ」


 ゴーバは再び経験を積ませるため狩人見習いであるバンシに解体予定だった。


 バンシだとさらに時間が掛かるだろうな。


「他は回しますので、持ち帰りたい猪だけいいですか?」


 一匹だけなら他の動物もあまり、解体訓練に支障はきたさないとゴーバが判断して解体させてくれると思っていた。なので、この中で一番欲しかった猪の解体を提案した。


「分かった。良いだろう」


 ゴーバは猪以外にも大牛がいるので、大牛を使ってバンシに解体させられるため、猪一体くらいなら良いだろうと思っていた。


「切り方に何か指示はありますか?」


 荒木ならばどんな切り方だろうがこの猪程度の解体なら難なく出来た。しかし、切り方を間違えてしまえば、村人に配るときにゴーバに迷惑をかけてしまうと思った。決まった切り方があるのなら、倣った方が迷惑もかけず反感もなく無難だと思いゴーバに指示を仰いだ。


「特に指定はないが部位ごとには分けているな」


「分かりました」


 荒木は左手を左から右に仰いだ。荒木はその動作の間に要望通り糸で部位ごとに分けて切り刻んでいた。手を一仰ぎで無数に切り刻むのは多数の糸を自在に操る荒木にとって朝飯前だった。


 何が起きていたかと言うと荒木は手を仰いだ瞬間にその手から一斬りで部位ごとを切り開けられる量の糸を作りだした。釣り出した糸を操り大きな猪の肉質を見極め、一番良い箇所に糸を入れて、そのまま一回で切り終えていた。その動作はもちろん一瞬の内に終わっていた。


 二人から見たら瞬く間のうちで、何をしたのか分からなかった。


「いつのまに!?」


「ハハッ! 見事だ! 何をしたのかさっぱりわからん」


 もうゴーバにはお手上げ状態だった。荒木は全て解体して良いと認識していたが、ゴーバは荒木が一部だけを切り取っていくものだろうと思っていた。普通解体が得意と言っても、刃物で少なからずゴーバの常識では時間はかかる。そのため、一部を刃物か何かで切り取り持って行くものだとゴーバは考えていた。しかし、ほぼ何をやったのか分からなかった。動作すら確認することはできなかった。規格外の力を披露され何かを競っているでもないが、想像外のかけ離れた解体にゴーバは降参した。


「肉を譲っていただきありがとうございました。それでは用事も済んだので失礼します」


 荒木は切り刻んだ猪の一部を適当に貰った。


「何かあったら頼ってくれ、いつでも歓迎する」


 貰えるものを貰った荒木は別れを告げゴーバ達と別れた。そして、食材を手に入れた荒木はパラメ家へと戻っていった。




一方その頃…


 荒木が森に行っていた頃、パラメ家ではパラメによる美味しい、美味しい朝食の準備が行われていた。

パラメによって部屋のベッドへと移されたリクシーは悪魔料理の影響か悪夢にうなされ、冷や汗をかきながら眠っていた。悪魔の料理は夢にまで悪夢を見せるほどの影響を持っていた。夢の世界でリクシーは荒木によって導かれた大量のモンスターたちに追い立てられていた。現実と大差ない夢を見ていたリクシーは必死に逃げ回り最後に追い詰められて夢の世界で死んだ。


「うー…うー…ハッ!?」


 悪夢にうなされているリクシーは唐突な死によって目を覚ました。リクシーは悪夢からの脱出に成功した。現実と大差ない夢にリクシーは事実のように感じられ、悪夢に浸っていた。夢と思っていなかったリクシーにとって、死という感覚が現実に起きたことのように感じられていた。


「はぁ、はぁ、夢か。死ぬかと思った」


 現実と夢の区別がつかなかったリクシーは恐怖と驚きにより心臓の鼓動が早まっていたことに気が付いていた。動悸が激しかったので、体を少し落ち着つかせた。冷静になると、思い出したかのように体からどっと疲れが押し寄せてきた。疲れの影響か思考も鈍くなり、ベッドの上でボーっとしていた。そうして、一息つくと寝る前の出来事を思い出した。


「そういえば、昨日お姉ちゃんの料理を食べた辺りから記憶がない。やっぱり、耐え切れなかったのね」


 ならば、机で放置されているものだとリクシーは思っていた。レジーナが荒木に言われて放置されたように誘導されているものだと思っていた。


「じゃ、お姉ちゃんがベッドに運んだということね」


 レジーナを放置した荒木がベッドまで運んでくれるようには思えなかった。なので、パラメが運んでくれたのだろうと思った。それに、荒木に移動させられたら嫌だったの、荒木は運んだ可能性を入れずパラメに運ばれたことにしていた。リクシーは後でパラメに確認を取ることにした。


「さすがはお姉ちゃんの料理。凄まじい威力だわ」


 昔から知っていたとはいえ、再び体感さえられたその威力を再認識させられていた。そして、最善の対策を立てなければならない姉の料理にリクシーは戦慄した。その戦慄した料理をもってしても荒木は平気そうに食べていた。寧ろ美味しく食べていた。


「まさかお姉ちゃんの料理が効かないとは。無敵か」


 これだけダメージを与えているのに関係ないかのように平気な荒木がリクシーにはまさに無敵かのように思えていた。それだけリクシーはパラメの料理、劇毒のように思っていた。


「いや、そんなことはないはず。お姉ちゃんの料理を食べて気絶しないはずないもの。私が気付いていないだけで、お姉ちゃんの料理を荒木は何かのタイミングで知り、私と同じように対策していたに違いない。そうしないとお姉ちゃんの料理を食べられるわけがない」


 姉の料理の威力を信じていたリクシーは荒木が何らかの方法で対策をしているものだとした。そうでなければパラメの料理など食べられるはずがないと思っていた。


 荒木は特に対策していないが、生まれつき対策をしているとも言えた。


 心の底で姉の料理を貶しまくっているリクシーの総評はひどいものだった。このようにリクシーは表では口に出さないだけで内心では不満だらけだった。その心の内を聞いたらパラメはきっと悲しむことになる未来が見えていた。


「荒木にはもう一度、確実に食べさせないと」


 リクシーは隙を潰して細工をされないように細心の注意を払いながら、荒木に姉の料理を食べさせようと考えていた。自然に食べさせる関係上、レジーナも巻き添えを食らうことになるが、どうでも良かったので、気にしないことにした。荒木に今まで散々やられ、一泡吹かせたかった思いからリクシーはレジーナをないがしろにしてまで、荒木への再挑戦を強く望んでいた。


 意気込み新たに考えをまとめたリクシーは喉の渇きに気づいた。


「喉も乾いたし、水でも飲みに行こう」


 寝起きということもありリクシーの喉は乾いていた。潤したい欲求に狩られたリクシーはベッドから起き上がり、水を求めて部屋を出て行った。


 部屋を出ると荒木の誘導により、最終的にみんなから放置されていたレジーナが寝転がっていた。夕食を食べた後レジーナはずっとテーブルの下で寝転がっているようだった。


「(お姉ちゃんが荒木の言葉を律儀に守ったのね)」


 律儀に姉が荒木の言ったことを守っていることに気づいた。


「う…」


 レジーナもリクシーと同じように悪夢を見ているのかうなされていた。


「(うなされているわね。悪夢を見ているのね)」


 しかし、姉と自分可愛いリクシーは、気にせず水を求めてレジーナを避けながら素通りし台所へと向かって行った。今はレジーナに対して何も思っていなかった。そのため、悪夢にうなされている姿を確認したが音を立てないよう静かに移動していた。


 リクシーが台所で水を飲んで落ち着いているとき、騒がしくなった影響かうなされていたレジーナも悪夢を終え、目を覚ましていた。パラメの料理を知らなかったせいかレジーナの方が起きるのが少し遅れていた。若干の違いなので料理の効果が同じことが伺い知れた。レジーナもリクシーと同じく悪夢を見ていたが、レジーナは荒木による悪夢ではなく、怨敵の記憶を思い出した。レジーナは荒木よりも昔の記憶の方が強く残っていた。それほど恨みが強かった。そんなレジーナと違いリクシーは荒木が脅威だと言えた。


「うっ!(嫌な夢を)」


 レジーナは床から体を起こす。硬い床の上と悪夢と相まって、体を十分に休むことが出来ず寝起きの気分は最悪だった。


「(なぜ。こんなところで私は寝ていたんだ?)」


 レジーナは何故床で眠っているのか良く理解できていなかった。しかし、周りを見渡しても床で寝ていた事実は変わらなかった。レジーナはこの変な体勢のまま床で寝ていた不思議な状況に困惑した。どうしてこんな状況になっているのか思い出すため、記憶を遡ったが、食事を一口食べたところまで思い出せたが、そこから先の記憶はレジーナには存在していなかった。


「(夕食からの記憶がない…どうしてだ?)」


 レジーナの記憶はパラメの料理が余りにも衝撃的過ぎたために口に入れたとたんに記憶に残る間もなく消し飛んで行ってしまったようだった。そして、ないものは思い出せなかった。昨日の記憶を思い出せないので、なぜこうなっているのか知ることが出来なかった。しかし、知ることが出来ないことも知れないレジーナはこの終わりのない状況に悩むが当然思い出すことは出来なかった。何度も記憶をたどって終わらない思考を繰り返した。結局、答えを掴めずにいたレジーナは無地なので、悩んでも仕方ないと思い、取りあえず思い出すことを辞めて動くことにした。


「(喉が渇いたな)」


 起きたばかりなので、レジーナの喉はカラカラに渇いていた。しかし、水の場所が分からなかったので、人の気配がする方へと向かって行った。



レジーナが起きる前リクシーは台所でパラメに会っていた…


 リクシーが台所に入るとパラメが食事の準備をしているようで、料理をしていた。


「あっ、お姉ちゃん。おはよう」


「おはよう」


 料理を見て少し気が引けたリクシーは台所に着くと一拍遅れて挨拶を交わした。


「昨日はお姉ちゃんが運んでくれたの?」


 リクシーはかなり気になっていったことを姉に聞いた。ことと次第によってはリクシーの気分は落ち込むことになっていた。


「そうよ。もう、疲れて眠っちゃうんだから、運ぶのも大変だったのよ」


 リクシーにとって悪い想定ではなかったの、一安心した。選択が望む方向に選ばれて少なからずの成功体験を得て一安心したリクシーは小さな達成感からか多少機嫌が良くなった。


「朝食の準備。終わったの?」


 その調子のままリクシーは機嫌よく料理の進捗状況を聞いていた。


「ちょうど終わったわよ。もう出来てるから、二人が起こそうと思っていたところよ」


 リクシーは長く寝てしまったばかりに困難な宣告を受けてしまい、背筋に冷や汗が流れる。再び悪夢の時間がやってきそうだった。


「…水貰うわよ」


 機嫌の良さはどこ吹く風でリクシーは急に頭をフル回転にしなければならない状況に陥り、余裕は無くなってしまった。何かしらの策を思いつかなければリクシーは再び悪夢へといざなわれてしまうからだ。


「はい。どうぞ」


 パラメは瓶に入っている水をコップに汲んでリクシーに渡した。リクシーに水を手渡すとパラメは料理に戻った。リクシーは渡された水をゴクゴクと勢いよく飲んだ。


「ふー」


 水を半分くらい飲むと一息ついて、頭が清涼になったところで最悪な事態を想定して対処を考え始めた。昨日の二の舞にならないように目下の問題であるパラメの料理を必死に回避できないか考えていた。


「(私も回避できて、荒木に打撃を与えられればいい。それだけでいい)」


 パラメの料理を信じているリクシーは再度レジーナのことは頭に入れず、自分だけ回避して荒木に料理を食べさせる方針で動くことにした。


「あまりお腹空いてないから、朝食はお腹の空いているレジーナと荒木だけにして」


 確認など取っていないが、食事を荒木に食べさせるために、わざわざ二人ともお腹が空いているだろう印象を与えるため、二人の空腹状態をでっち上げた。そして、リクシーはお腹が空いていないことをアピールして、パラメの料理を回避した。レジーナが含まれているのは不自然さを見させないためにレジーナも犠牲にする予定だからだった。


「お腹が空いていないのなら、仕方ないわね。そういえばリクシーは昔から小食だったわね」


 日ごろの習慣から、パラメはリクシーのお腹が空いていない発言を不自然に思っていなかった。


「(よし)」


 とりあえず姉の料理の回避には成功したリクシーは心の中で喜んだ。


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