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第六十三話 山狩りモー終了

 猪を担いでいるゴーバの後にバンシ、荒木と続き村の近くの森を散策していると、少し開けたところに猪の時と同じ形状の罠に今度は罠を踏んでしまったと思われる高さ50cmくらいの少し大きめの鳥が足に縄が引掛かり捕まっていた。鳥は紺と黒色で雉みたいな体毛をしていた。罠に捕まっていても周りに脅威がいないせいか鳥は危機感を感じていないようで大人しかった。地面に落ちている小さな草の種や微生物を嘴で突いて食べていた。


 捕まっているのに呑気に餌を食べている後ろから気づかれずに近づき、斧を刃とは反対側を使い、頭目掛けでゴーバは斧を振り下ろした。ゴーバから振り下ろされた斧は見事鳥に命中し、鳥を一撃で撲殺した。


「今回は教えないんですね」


「捕まった鳥は暴れても多少怪我するだけで、どんな状況でも脅威になることはないから教える必要もない」


 大夫荒い気配だったが、野生の鳥なのに気付かず一撃で撲殺だからな。


 野生で普通警戒心を上がっている状態にも拘わらず見習い狩人のバンシがいても気付いていなかったので、相当鈍い鳥で簡単に戦えそうなのは確かなようだった。


「持ちましょうか?」


 さすがに猪を持ちながらさらに鳥を持つのは持ちにくいと思いゴーバに問いかけた。


「このフォバウバウはバンシに持たせるから良い。ほら、持て」


 ゴーバは鳥をバンシに差し出した。師匠からの差し出された鳥を拒否することは出来ず仕方なく受け取った。


 鍛えるならもっと重めにした方が良いと思うが。


 荒木は教えるなら仮にダメになったとしても、その時はその時で仕方ないと考えているため、当然鍛えるためなら危険も許容範囲内で、更なる負荷を与えても良さそうだと思っていた。


 まあ、普段の環境でもないし、普通は森を歩くのも危険で安全の保障出来ないから、ゴーバが無理のない範囲で重さを調節しているのだろう。


 普段からどれくらいの重さを持たせているか分からなかったが、今日は荒木が加わり、いつもの狩りと状況が違うため、ゴーバに安全を保たせる自身がなく、動きに無理のないように軽い鳥をバンシに持たせているのだろうと考えた。それにこの狩りはゴーバの指揮の下付いて行っているのでゴーバに従うまでだった。


 ゴーバは慎重だな。


 これまで気を配っている様子から、無理な要求をしないと分かっているゴーバが森を侮っていないのだと分かった。


 それにバンシが猪を持てるわけがないか。


 同じ悪魔で体格的に劣っているバンシではゴーバが持っている猪を持つのには無理がありそうだった。


 バンシが鳥の持ち方を調整しているとガサガサと近くの茂みがなった。同時にゴーバの2mくらいの身長と同じ背丈の大きな牛がタイミング良く頭を低くして、角を当てられるように突撃してきた。大牛はガタイが良くそのこげ茶の皮膚はツヤツヤとし、筋骨隆々。正しく闘牛のようだった。縄張りの範囲に入られ気が立っている様子だった。


「「!?」」


 何かが現れた瞬間二人は同時に背負っていた猪と鳥を地面に置いて、愛武器であるかのように斧を取り出して大牛の突進に備えた。しかし、半人前のバンシでは構える速度が遅く、まだ抜く状態で構え切れていなかった。このまま大牛が激突されてしまえば最悪バンシ程度の弱々しい体では死んでしまう恐れがあった。


 荒木は二人の後ろから大牛の方向に向いて体を休静していた。


 俺の警戒に引掛かっかって牛がいたのは分かっていたが、バンシは位置が悪かったな。


 大牛は荒木が放置しても対処できるつまらない事態だった。そのため、突発的に来たらゴーバ達がどう対処するのか見たかったで、いつものようにあえて荒木は何もせず大牛付近を素通りして観察していた。

そんな放任をしていたのでバンシに向かって大牛が突進してきたのは偶然だった。


 仕方ない。死にそうだし助けよう。


 荒木はバンシの首根っこを掴み、体へと引き寄せ牛の突進から逃した。大牛はそのまま三人を過ぎ去り、木にバコッ、バゴン! とぶつかり、三本をなぎ倒してようやく止まった。


「ふぅふぅ」


 走っていた時の疲れと相まってバンシはびっくりして息を切らせていた。


「フォカウカウだ! 二人は俺の後ろに下がれ。俺がやる」


 ゴーバは大牛と対峙するため、右斜め前に出て大牛の注意を引いた。ゴーバは真正面から大牛と対峙するようだった。ゴーバの後ろにいた荒木は興味津々でその光景を眺めていた。

 

 大牛はゆっくりと反転していた。体が大きいせいで森では小回りは効かないようだった。


 外敵が少なく食生は知らないが、食料が豊富だからここにいるだけなのだろうな。


 荒木は大牛が動きにくそうにしている姿から、森に適応しているわけではないと判断した。自然界であればその土地に長く居続けていれば環境に適応していくが、その面影はなかった。ただ外敵が少なく、食料が豊富でこの森にいるに過ぎない存在だと思った。


 そして、反転した大牛は真正面にいるゴーバに向かって突撃した。ゴーバは持っている斧を右手で上げながら、右方向へと躱して、すれ違いざまに斧を振り下ろし牛のお尻を切った。


 大牛はそのまま突進して同じように気にぶつかり停止した。切られた大牛のお尻からは流血していた。斧は肉を切り裂いたが大牛は何もなかったかのように元気だった。体が大きな野生動物なら多少の傷が出来ても動きに問題はなかった。


 危ないな。


 ゴーバが右斜め前に出て気を引き付けたおかげで、少し離れた距離に大牛が移動して荒木たちから脅威は離れたとはいえ、脅威がなくなったわけではなかった。いつこちらに突進してきてもおかしくない状況だった。自分は何ともないが、特にバンシではその突進にとても耐えられるような感じではない。そのため、荒木はバンシを背にしつつ接近して、押し出すようにして出来るだけバンシを安全な方に誘導した。


 ゴーバに突進を躱された大牛はなおも姿勢を低くし、角を低くして大地を強くけり突進した。再び大牛に突進されたゴーバは左に避け再び躱したところで、斧で大牛の右腹を切り付けた。また、場所が入れ替わった。ゴーバが左に避けたことにより再びバンシとの距離があきより安全になっていた。


 あー、あの斧でよけながら倒していくのか。じゃ、もうつまらないな。たぶん、斧で殴り合いをするだけだろう。


 バンシから大牛との距離が近すぎたために、大牛の突進を避けて離していたときとは違い、暴れてもバンシには被害が出ない位置まで誘導出来ているのにも関わらず、だいたい同じ威力の攻撃を行っていた。倒せるのに怪我を警戒していて慎重に少しずつ手堅く攻撃しているのか、ゴーバは大牛との直接の戦闘では敵わないから自信がないのか、はたまた大技がないのか、この先何が起こるか分からないから体力を温存しているのか、など色々考えたが、どちらにせよ方針はヒット&アウェイを繰り返すだろうと判断した。同じことの繰り返しになり地道な戦いになることは必至だった。早速、戦い方が分かり、退屈になる戦いを予見したため、荒木は観察することにもはや飽きてしまった。


 時間が掛かりそうだし、俺が狩ってやろうか。狩りか。この世界に来て初めてになるな。


 どうせ動きが同じになるだと思い、無駄な時間を省くために荒木自ら大牛に手を下し、狩ることにした。


「俺が狩ろう」


 面倒になった荒木はみんなが動くよりも早く動き、大牛との間を遮るようにゴーバの目の前に移動した。移動している最中あまりにも早すぎたため、この場にいる誰も荒木を認識すらも出来ていなかった。

誰も反応ことすら出来なかったため、いきなり現れた荒木は瞬間的に姿を現したように皆には映った。


「!?」


 突如として荒木が現れたようにゴーバは驚く。


「いつの間に!?」


 目の前にいた荒木がいきなり消えてゴーバの前に現れてバンシは仰天していた。


 大牛もいきなり現れた荒木に少し驚いていたがすぐに突進を始めたと、同時に減速して数歩いた後、大牛は地面に倒れた。


「何!?」


 ゴーバには何が起きたのかさっぱりだった。バンシは訳も分からず何も発せなかった。


 ローブで隠れていて今まで誰も確認することが出来なかったが、荒木は常に装備している懐に忍ばせていたシュルダーホルスターから特注で作られている長さ15cm、厚さは5mmの針を親指と人差し指の間で掴み取り出し、勢いのまま回転させ大牛の脳と心臓を標的に放っていた。回転した影響で大牛の体内に入った針はその通った後をズタズタに損傷させながら貫通していた。そして、荒木が放った針は牛を貫通し、数十本の木に断面が切り刻まれた円状の穴を残しながら貫通していった。回転した針は脳と心臓などの主要臓器を破壊していった。動物の生命力で針が貫通して数秒の間、命はあったが数歩も歩くと生命機能を停止し、大牛はその場で倒れる形になっていた。


 久しぶりの狩り。あの大牛相手には少し力が入りすぎたな。


 結果から見れば貫通した針は数十本の木を貫通する勢いがあり、まだ力が有り余っており、余剰な力だったのは明らかだった。


 地球での普通の環境で狩りをすることは珍しく、機会も巡っておらずほぼ狩猟用武器である針を使っていなかった。そのため、力の加減が少し緩み過剰な威力を出していしまっていた。荒木としては猪を貫通して、そこら辺に針が突き刺さる程度の威力に抑えるのが一番良かった。


 地球と比べて狩りの機会は多くなりそうだし。参考にはなったな。


 異世界に来てから狩りを行う頻度は増えると思われたので、次は失敗しないように心掛けることにした。使用機会が増える予想されることから、今後の参考になったと荒木は良い方向に捉えた。


「何をした?」


「針で貫いたんですよ」


 飛んでいった針を走って拾いに行き、違和感なく戻ってきてゴーバに見せてから針を懐に戻した。走って取りに行ったが、二人が認識できる速度ではなかったので、ゴーバ―とバンシは針をいつの間にか持っているくらいの反応しか示さなかった。


「そうか。さすがだな」


 聞いても動きが分からなかったので針で倒したのは分かったのかどうやって倒したのかの過程を想像するしかなかったゴーバはただただ倒せなかった大牛を一瞬にして倒してしまった荒木には称賛を送るしかなかった。


「体が小さいのにお強いですね。どうやったら強くなれるんですか?」


 先ほどまで小さい体で見くびり、寛大に侮っていたバンシだったが、荒木が強いことが分かるとすり寄ってきた。


 しかし、体が小さいことは変えられない事実なので懲りずに再び指摘してきた。


 成長が遅いので誰が見てもまだまだ子供の体のように見えていたが気の影響によって、筋肉がたくさんある成人男性よりも遥かに上だった。しかし、これで答えてしまって、バンシに質問されるのも面倒なので荒木は小さいと言われたことは気にしないことにした。かといって無視するのも後々面倒になりそうだったので聞いてきた答えは返すことにした。


「手慣れているだけですよ。訓練すれば誰でもきっと強くなれます」


 成長すれば同じような訓練をしているゴーバになるだろうと憶測を立てて、ゴーバくらいになるのならあの程度ならバンシでも狩れるようにはなるだろうと思った。でも、結局何でもいいから訓練すれば強くはなれた。他の最適な鍛え方も知っているが、荒木はバンシに興味がないので、それらしい答えをどうとでも捉えられるように適当に言った。


「ところで、あの大牛はどうしますか?」


 バンシに何か聞かれるのも面倒なので聞かれる前に荒木は大牛へと話題を逸らした。


 だいたい大きさは猪と同じ大きさだが、猪に付いて行く口当たりから生えている牙に比べて角が頭から左右に広がり、上向きに尖っているので、持っているときに角が食い込みそうだった。ゴーバが持つものだと思っている荒木はよりも持ちにくそうな大牛の処理をどうするのか転がっている大牛に人差し指を向けて聞いていた。


「もちろん、持って帰る。フォカウカウとフォバウバウは俺が持つ。バンシにフォボアボアを持たせる」


 大牛と大きな鳥をゴーバが持ち、入れ替えでバンシに今ゴーバが持っている大きな猪を持たせるつもりのようだった。


 あの猪をバンシが…


 バンシが持つのは不安しかなかった。荒木はバンシが大きな猪を軽快に持てるとは思えなかった。


「俺が持ちましょうか?」


 成人男性くらいの力しかないバンシに大きめの猪は辛そうだったが、幸い荒木なら全てを持ったとしても、疲れず動きに支障をきたすこともなく持ち運べる。そして、荒木は先ほども猪を軽々と持ち上げた姿を見せたので、ゴーバも荒木が能力があることを確認していた。そのため、荒木はバンシよりは自分の方が良いと思い、運ぶ手伝いをすることを提案した。


「いや今日はこれくらいで十分だ。もう後は帰るだけだから持たなくても平気だ」


 ゴーバとバンシは弟子という関係で今は二人。そして、荒木が加わり三人だが、普段は一人で狩りを行っていることが考えられた。ゴーバが大牛と大きな猪二匹が限界と思われ、バンシという見習いが一人増え持ち運べる量が少し増えた。普段から考えると村に配るにはこれくらいが十分な量なのは間違いなかった。


 帰ると聞いた荒木は森を辛そうに歩いていたバンシの姿を思い出した。採集に集中することもなく後は歩いて帰るだけなので、行きよりは注意力を減らせた。少し安全になったため、ゴーバがバンシに重いものを持たせてバンシの体力を鍛えているのだろうと荒木は思った。


「じゃ、鳥を持ちましょうか?」


 なら、訓練の邪魔にならない軽いものを持つことにした。


「ありがたいが、俺たち二人で持ち運べる量だ。これくらいで客人に手間を掛けさせるわけにはいかない」


 客人への配慮からかゴーバは自分より強くて力持ちだが、荒木を最大限気遣い遠慮していた。そのため、ゴーバは客人である荒木に持たせる気は一切なかった


 バンシには少し重荷ではないだろうか。仕方ないか。


 訓練だと分かっていても、森を歩くだけで疲れているバンシには猪は随分ときつそうだった。


「そうでうすか。分かりました。気軽に帰らせてもらいます」


 だが、ゴーバに連れてきて貰ったようなので、荒木は諦めてゴーバの指示に大人しく従うことにした。


「客人なんだからそうしてくれ。バンシほら持て」


「ぐぅ…、重!」


 ゴーバに大きい猪を正面から渡されたバンシは両腕に猪の重さが加わると余りの重さに腰が沈んだ。


「ふん!」


 猪の重さに負けまいとバンシはめいっぱい力を入れ、両腕でを後ろに回し猪を担いだ。準備を整えていた。


 大丈夫かな?


 猪を担ぐバンシの姿を見た荒木には不安がよぎった。


「来た道を戻れ」


「はい」


 バンシが先導するようだった。荒木はもう何でも良かったので、黙って付いて行くことにした。そして、荒木は辺り生えている山菜を調べながらゆっくりと先頭を歩くバンシと続くゴーバの後を付いて行った。案の定、ゆっくりとしたペースで歩いていた。


 これは時間が掛かりそうだ。


 荒木はずっと帰る時間が遅くなるのではないかと不安に思っていたが、その不安は的中した。結果、バンシが猪を背負い絶望的に疲れたせいで変えるまでに時間が掛かったが、昼前には帰れた。

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