第四話 森という名の狩場の名産地
荒木は木の上を繊細な足使いで走っていると、神秘的で綺麗な泉を見つけると木の上から降りて、その地点に降りた。
「すぅー。はぁー」
荒木は泉に降り立つとすぐに深呼吸をした。
「空気も景色も綺麗だな」
荒木は現在の地球では特定の場所でしか吸うことのできなかった綺麗な空気を吸い、落ち着いた。
さて、あの城壁から素直に真っすぐの100キロくらいの地点に来たが、まずこの世界の食料を知るために獣を狩りつつ、いい肉があれば焼いて食おう。
荒木は泉の水を手ですくい取り、泉の水を飲んだ。
美味しい水だな。ここは綺麗な泉だからな。ここの飲み水を求めて来る生き物は多そうだ。泉が見える場所に隠れて、のんきに水を飲みに来た肉となる獲物を待つか。
荒木は泉近くの葉が生い茂っている身を隠せそうな木の上に登った。荒木は他の生き物に見つからないように身を潜めて獲物が来るのを静かに待った。
すると、足音と獣の匂いがし始めたので、荒木はそちらの方向を見てみると5匹くらいのゴブリンと思われるグループがいた。
あれが本とかでしか見たことがないが外見からしてゴブリンか初めて見る。しかし、臭いも臭いし食べるにはいい肉ではないな。普段から清潔にはしない習性なのだろう。あのまま水浴びでもされたらたまらないな。泉に到着される前に狩る。
荒木は音もなく一瞬でゴブリンたちの背後に回ると、頭を殴った。頭を殴るとゴブリン5匹の頭は爆発して、周囲に血や肉片が飛び散った。
「あっ、力加減を変に間違えた」
まさか。ゴブリンの頭がこんなに弱いとは思わなかったな。今度からもっと力を抑えて調整しないといけないな。まぁ、この血の匂いで肉にはあまり適さないが肉食の獣が寄ってくるし、逆に好都合か。
獲物がどこから来るかわからないな。どうせゴブリンの臭いは餌の血の臭いで紛れるから風上で待機して正面から獲物を見張るか。
荒木は移動し獲物が来る方向が見える木の上に移動して、血の臭いにつられてくる次の獲物を待った。少し経ち、目の前から餌の臭いを嗅ぎつけて二足歩行のオオカミが現れた。
オオカミ顔の二足歩行の生物が姿勢を低くしながら草木に隠れつつ、素早い動きで餌の臭いを嗅ぎながら餌に近付いていた。
オオカミ人間とかワーウルフの類か。四足歩行の獣はこの地域にはいないのか? あれは美味しいのか? あまり人間に似ている体系の二足歩行の肉を食いたくはないからな。仕方ない。こいつらも狩るか。
荒木はゴブリンと同じくワーウルフの後ろを取り、一匹ずつゴブリンと同じように頭を殴った。荒木に頭を殴られるとワーウルフは一滴も傷も出さずに息絶えた。
力加減は十分だな。他の種類もだいたい似たような硬さなんだな。それにしても、食べてもおいしくなさそうなものばかりだ。二足歩行以外の生き物はいないのかな。
荒木はいい肉が手に入りそうになかったので、どうしようかなと、空を見上げるとちょうどたくさんの鳥が列を作って飛んでいるのが見えた。
肉は生でもいいから、この際鳥でもいいか。
荒木は木から空にいる鳥に向かって跳び出して、空を飛んでいた10匹の鳥を一瞬で倒して、地面に降りた。
何処で食べようかな。血生臭いけど、他の獣を狩ってみたいし、ここらへんで鳥を焼いて食うか。
荒木は適当に木を使い一瞬で火を起こし、鳥を素手で素早く処理して食べられる状態にした。そのあと、鳥に枝を刺して、そのまま火の傍の地面に突き立てて鳥を焼いて行った。
これで、ようやく焼き肉が食べられる。
「ゴクッ」
肉になった鳥に火が通っていくと辺りに鶏肉が焼けるいい匂いが、充満すると、荒木は唾を飲み込んだ。そして、ようやく鶏肉がいい感じに焼けると、すぐに鶏肉を手に取りかぶりついた。
「ムシャムシャムシャ…」
荒木は2年ぶりの肉ということで、鶏肉10羽分を一瞬で平らげた。荒木はようやく肉にありつけた。
「ふー、食った。食った。肉も補充出来たから、本格的に狩っていくか」
荒木は鶏肉を食べ終わると火を足で蹴って消し、自分がいた形跡を消し去っていった。痕跡を消し終えると木の上に登って、一度体制を整えると周囲を探った。
この鶏肉と血の臭いのおかげで肉食系の生き物が複数近づいてきているな。まだまだ来るとは思うが、異世界に来て初めての本格的な遊びだから、練習がてら全部狩ってみるか。
荒木はこれから来る捕食者達を倒すため、木の上で隠れるのを止めて臭いの発生源であるゴブリンの死体の上に降り立ち、獲物が来るのを堂々と待った。
まず初めに足の速いワーウルフが現れた。ワーウルフは荒木の姿を見つけると様子を伺いつつ、群れの一匹が攻撃を仕掛けてきた。他のワーウルフ達もそれに続くように攻撃を仕掛けてこようとしていた。荒木は最初の一匹を攻撃してきたと同時にカウンターまがいの攻撃で倒すと、そのまま同じことを繰り返してワーウルフを順序良く倒していくと勝てないと判断したワーウルフは逃げ帰って行った。
負け犬め。
次にゴブリンが現れたゴブリンは無謀にも一斉に荒木に襲い掛かってきたが、一瞬で一匹以外のゴブリンを倒すと残された一匹は荒木に恐れをなしてどこかへと逃げていった。
これはオーガか。まぁ、妖怪もこれくらいの大きさはよくいるから新鮮味はないから狩るか。
続けて身長4mくらいあるオーガと思われる生き物が臭いを嗅ぎつけて3匹現れた。オーガは背が小さい荒木を見て鼻で笑い、殴りかかってきた。荒木はオーガのパンチを素手で受け止めオーガの腕を取り、ものすごい勢いで地面にぶつけた。地面とぶつかったオーガを破裂させると、殴りかかってきたオーガは腕だけになっていた。
他のオーガはバカなのか見方が手も足も出ずに殺されたのにもかかわらず、攻撃をしかけてきたので、荒木は呆れながらその場で跳びオーガの顔を殴って消し去った。オーガを倒し終えると周りは新しくゴブリンの血をオーガの血が塗り替え、凄惨な現場になっていた。
今度は血の匂いを嗅ぎつけた普通の四足歩行のオオカミが現れた。
あっ、四足歩行だ。この森に四足歩行の生き物もいるんだ。でも、今はもうお腹は満たされているから。狩るか。
オオカミは足にオーガの血を付けながら荒木の周囲を囲んだ。荒木はオオカミに少し隙を見せて襲い掛からせた。荒木は襲い掛かってきたオオカミにフェイントを入れて、殴って吹き飛ばし木にぶつけるとオオカミは背骨を折られ絶命した。そして、荒木はすぐに他のオオカミに襲い掛かり、一匹残らず倒した。
そろそろ、さっき仲間に伝えるために逃がした。ワーウルフとゴブリンが仲間を引き連れて来る頃かな。まぁ、逃げてるかもしれないがそこまでの力を見せつけてはいないから、素直に仲間を引き連れて来てくれるだろう。
高速で木々を掻き分けて大群がこちらの方向に迫ってきているのに荒木は気が付いた。
この足の速さからするとワーウルフだな。
荒木はじっと血の上を移動せずにそのワーウルフの大群を待った。大群のワーウルフは先程のオオカミと同じく荒木を囲んでいた。
「せりゃー」
荒木は気の抜けてた声とともに適当にワーウルフの群に突っ込んで、血を出させずに綺麗に倒すとかはせずに適当にひたすら殴り続けて一殴一殺していき、ワーウルフは無残にも全滅した。この戦闘によってかなりの範囲に血が広がり、森はさながら血の海と言った風景になっていた。
荒木は体に付いたドロドロの血液を払い落とし、空を見上げた。荒木が空を見上げるとそこに60羽くらいの鳥が血の臭いにつられてきていた。
あれは肉食の鳥か。俺が去った後に新鮮な肉でも漁ろうとしているのかな。
荒木が眺めていると、肉食と思われる鳥は一斉に荒木に襲い掛かってきた。荒木は鳥も狩りの対象と判断して、襲い掛かってきた鳥全てを素手で消し去った。空で旋回して飛び、待機していた鳥が逃げようとしたので、空まで跳んで全ての鳥を殴り爆ぜさせた。
空中で鳥の血が降り注ぎ辺り一帯が血の森林に変わった。
まさか。鳥が襲い掛かって来るとは珍しい。今日は運がいいな。
遅れてゴブリンの軍勢が来るのを察知した荒木は全身獲物の返り血のまま、そのゴブリンの大群に向かって走り出した。荒木は勢いのままゴブリンの大群に突撃して、ゴブリンの大群を全滅させていった。
そして、荒木は森中の襲い掛かってくる生き物を全て狩り尽くした。荒木がいた透き通るような綺麗な泉と綺麗な森林は一変して全てが地獄かと思われるような赤い色に染められていた。