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第五十七話 気が合う同士

 パラメの家の中に入ると正面の三つの窓から日が差し込み、机と椅子とその左に棚を照らしていた。物はそれくらいしかなく質素だった。他の家と外見もあまり変わらないのでどの家もこれくらいの質だと思われた。他にも扉があり、部屋は数個あるようだった。一人で住むには広そうだった。荒木たちが泊まるにはちょうど良さそうな広さだった。


「水を持ってくるので休んでいてください」


「私も手伝う」


 パラメとリクシーは荒木客人をもてなすため、水を取りに行った。荒木とレジーナは何もすることがなかったので、隣通しで大人しく席に座った。

 荒木たちが椅子に腰を落ち着けているとパラメとリクシーは木で作られたコップを各自の前においてくれた。そして、対面に二人は一緒に座った。


「それにしても、村を出て行くっていていた。リクシー何でこんなところに? 何で奴隷になっているのかしら?」


 パラメは主に色々と変わり果てているリクシーの状況を聞いてきた。


 知らなかったのか。まぁ、リクシーが何も連絡してなかったんだろうな。

 細かいことを詮索もしていし、調べてもないし、興味もないからどんな悪いことをしたのか知らないが、本能か本人はその状況も楽しんでいるようだったな。


 犯罪奴隷になってから、奴隷主を陥れて楽しんでいることを思い出していた。


 取りあえず来た理由を話そう。


「ここに来た理由はパラメさんの命が危険だったから、助けに来たんだ」


 リクシーに聞いているようだったが荒木は構わず、リクシーの返答を待たずに話した。


「え?」


 ここに来た理由を聞いたリクシーは物凄く重要な部分が抜け落ちている内容で、潔いまで抜け落ちた内容に呆気に取られていた。


「私ですか?」


「その説明じゃ全然違うわ。ところどころ抜けてるわよ。荒木が転移門を強引に突破したせいで、魔王軍にいきなり敵対して、行動を共にしている私の親族が狙われるかもしれないから、お姉ちゃんが住んでいる村に来たのよ。まぁ、荒木の予想が当たったってことね」


「うん。説明ありがとう。敵対したのは俺のせいだけど、だからちゃんと助けに来ているわけなんだ」


 リクシーが説明を終え労った後パラメに向かって荒木は親指を立ててビシッと決めた。


「でも、姉ちゃんを危険に晒したわ。大罪よ」


「いや、前々から家族がいるなんて聞いたこともないし、リクシーに家族がいるなんて夢にも思わなかったからな」


 向こうで犯罪奴隷で売られていたんだから、家族とかも人間の大陸に住んでいると思っていたからな。それに、ここに来るまで聞く気が一切なかったのもあるけど。


 戦力としてのリクシーは気にしているが、残念なことにリクシーの身の上や近辺など興味なかった。


「聞かれたこともなかったから、話したこともなかったわね」


「私のことを知らなかったのですから、仕方ありませんが、荒木様も準備不足には十分に注意して行動してください」


 パラメは危険に晒される要因になったのが荒木だと分かったが、不可抗力で仕方なかった。結果的に助けに来てくれたので、大目にみて、情報不足を注意するだけに留めた。


「すみませんね。何せリクシーは話そうとしませんからね。詮索はしないんですよ」


 荒木は情報を得ていないことをリクシーのせいにした。


「妹は良く話す子ですよ? 何かの間違いじゃないのですか?」


 普段のリクシーを知っているパラメは意外に思っていた。言われた荒木は普段のリクシーと姉にあったときのリクシーを思い出した。


 お姉ちゃんっ子だから、外と内では印象が違うのだろうな。他人には冷たく、近しい物にはフレンドリーなのだろう。まぁ、閉鎖的であまり人が来なさそうな村だし、外の顔を見ることも中々ないだろうから、リクシーのことをあまり理解していないのかな? あと、リクシーが姉を気遣って、演技していたこともありそうだ。


「そうよ全部間違っている嘘よ。この目の前にいる荒木のせいでここに来たの。そういえば何もかもあんたのせいだったわ。奴隷にされたのも、あなたのせいね」


 チャンスと思ったのかリクシーは奴隷も上乗せしてきた。


 ここぞとばかりか。まぁ、今までの腹いせを出来ると思ったのだろう。まぁ、ここは真実を言おう。


「奴隷になったのは俺のせいではないし、全く関係ないな。それこそ嘘だな」


「そういえば、奴隷というのはどういうことですか?」


 思い出したかのように一番重要なことを聞いてきた。パラメはリクシーが奴隷であることに疑心を持っているようで、真剣な表情だった。


 本当のことを言った方が俺の印象はいいだろう。


 リクシーには都合が悪く荒木にとって都合が良かったのでノリに乗って、真実を口にすることにした。


「隣のレジーナと首輪が違うでしょ。今リクシーが付けている首は犯罪奴隷の首輪だから犯罪を起こし捕まっている証拠なんですよ」


「そうだ」


 珍しくレジーナも同意した。レジーナは自分が犯罪を犯したものとパラメに誤認されないよう正確に伝えた。


「レジーナまで!!」


 今まで荒木に対して反抗的だったのに今回だけ急にしっかりと、同意したことに驚かざるを得なかった。


「そうなんですか。それでどうしてリクシーは犯罪奴隷なんかに? どうして?」


 荒木とレジーナが同じ意見でリクシーが犯罪を犯したのだと確信した。パラメは確信に近づくため隣にいるリクシーに問い詰める。


「あはは」


 リクシーは姉に怒られるんじゃないかと思って乾いた声で笑ってごまかした。


 何をしたか俺は知らないがこの笑い。捕まるとき姉には言えない何か後ろめたい犯罪になるようなことを軽くやったんだろうな。堂々と人間でも殺した?


 悪さをした事実は容易く想像できた。捕まった要因から人間の大陸で奴隷をやっていた経歴から、人間がらみの犯罪を起こしたのではないかと考えた。


「犯罪になるっていうことは無抵抗な人間とかでも堂々と殺したか?」


 向こうの世界ではばれなければ何とでもなったからな。この世界も大体同じだけど衝動に駆られてドジを踏んだんだろう。


 人間の敵である魔王が統治している魔大陸に住んでいる悪魔のため、周囲の人間に対して無頓着になっていたのではないだろうかと思った。


「ほんのちょっと触れたら、重症になって、近寄ってきたから少し手を動かしただけよ。それに悪魔が人間を殺して何が悪いのよ」


 リクシーは体を少しだけ動かしていることだけを強調して悪くないことをアピールしてきた。さらに悪魔は基本人間と良好な関係ではないことをいいことに開き直った。言葉からは人間を素直に殺していることを認めている様子はなかった。


「言い換えると、怪我をさせて助けに来ようとした人間を殺したと」


 肉体の性能は大きく違うからな。ちょっと力を入れたら普通の人間なら骨が折れて重症だろう。それを見ていた周りの人が来て、手加減程度で軽くあしらったら死んじゃったんだろうな。仕方ないことだが、ここは姉の前でもあるし弄って上げよう。


 大体人間を殺すこと事態は荒木にとってはどうでも良いことだった。そのため、悪いこととも思わず、ちょっとしたミスくらいにしか思ってはいなかった。しかし、奴隷になったことを擦り付けようとしてきたリクシーに仕返しするために、少し遊んであげることにした。


「そうよ。悪い?」


 偶然殺してしまったリクシーには悪気など存在しなかった。悪気がないことも要因にあったが、姉の前でバツが悪くなったリクシーは完全に開き直り、自分を悪いと思うことを辞めた。逆に潔く言い放っていた。


「こんなんだからパラメさんの妹は奴隷になってしまったのです」


「何を言っているんですか!? 死んだ人の気持ちにもなって考えなさい!!」


 開き直った態度にパラメは激怒した。


「人間の体があんなに脆いなんて知らなかったんだもん。仕方ないじゃない」


 悪びれる様子もないような言動だが、姉の怒気に当てられたリクシーの声は少し小さかった。


「はぁ、どんな言い訳を繕っても、ちゃんと準備をしなかったリクシーが一方的に悪いです。しっかりと調べて置けば人との力の差を理解することが出来たはずなのに。慎重に行動をしないから、他の人に迷惑をかけてしまうんです。それだけの失敗と過ちを犯しているのですから、奴隷にされる罰は当然です。荒木様リクシーに罰を与えるためにもどうか奴隷として存分にこき使ってください。死んだ人とも報われるでしょう」


 パラメはリクシー自身の失態で怒ってしまった事態だったので、悪いことをしたリクシーをとことん懲らしめるため、奴隷として荒木にしっかりと働かせることを願い出た。


「はい。罰になるよう散々こき使ってあげます」


「げっ!」


 姉によってこき使われることを願いだされ家族にも公認された奴隷になってしまったリクシーは今までの過酷な状況も相まって、荒木ならさらなる過酷な事を絶対にやってくるだろうと思い、姉の前で恥ずかしげもなく声に出して露骨に嫌がった。


「げっ、じゃありません!! あなたは大人しく罪を100年くらい償いなさい」


 今までの奴隷生活を知らないパラメはリクシーが単純に罰を受けることを嫌がっているものだと思っていた。姉の目に怠惰に映ったリクシーを反省させるため、悪魔の寿命でも少し長いくらいの期間奴隷に就かせることを求めた。


 面白くなってきたな。


「さらに言えば…」


 リクシーが勘違いにより追い詰められているなかその弱り切った姿を見て、弄びたくなった荒木はリクシーに追い打ちをかけて上げることにした。


「え? まだ何かあるんですか?」


「もちろんありますよ」


「してない、してない。もう荒木は嘘が上手だなー」


 焦りながらもリクシーは必死に嘘であることにしようとあたふたしていた。


「リクシーは黙っていてね。それで妹は何をしたんですか?」


 明らかに同様の見られるリクシーを無視した。


「殺人より些細なことなんですがね。その殺人でうま味をしって楽しくなったのか。俺に会う前は罪を償うために犯罪奴隷にされたのにも関わらず。その奴隷主を借金まみれにしたり、ダンジョンに置き去りにして見捨てて行ったりと、抜け道や言葉巧みに人を誘導して不幸をもたらして遊んでいたらしいですよ」


「それは…ジョークよ。ジョーク。本当に笑えるジョークね」


 悪いことをしたと疑う余地のないパラメにリクシーは話を逸らそうと必死だった。


「なんてことを…本当にうちの妹が申し訳ありません」


 必死に話をさらしたり、空気を変えようと頑張ったりしているリクシーを他所にパラメは再び謝ってくれた。


「お姉ちゃんが謝る必要なんてないわよ。あんな表情をする人間が悪いのよ」


 表情に欲をそそられて、やっていたのか。死にそうになったり、困ったりしている姿を見ることが好きなS女なのだろう。


 仕方ないことと割り切りまたもや開き直ったリクシーがサディストなのだと荒木は思った。


「この子はまたなんてことを?! まったく反省の色が見えないですね。荒木様にものすごく過酷な罰を与えてもらいませんとね」


 いつまでたっても反省の色が見えないリクシーに対して、パラメは奴隷主である荒木に過酷な罰を与えてもらうことを希望した。


「うん、人間に遠慮なんていらない。よくやった方だと思うぞ」


 人間が嫌いなレジーナにとって、人間に不幸が訪れることはうれしい出来事であるため、レジーナはパラメと同時に反応して、開き直るリクシーをよく人間に被害を与えたと褒めた。


「まったく、褒めても何も出ないわよ」


 レジーナに褒めれられたリクシーは甲斐甲斐しく反応してみせた。


「レジーナさん。褒めるところではありませんよ。まったくもって褒められる行いではありませんよ。それをさも整然のようにまったく反省していませんね。分かっていますか?! あなたのやっていることは犯罪なのですよ! しっかりと反省しなさい!!」


 微塵も態度を改めないリクシーに憤慨したパラメはリクシーに対しての叱責の熱も増していった。


「まぁまぁ、パラメさん一旦落ち着いて」


 冷静さを欠き視野が狭くなってまともに相手をしてくれなさそうになったので、一旦空気を元に戻すために荒木はパラメの怒りを収めるため声を掛けた。


「ですが他所様を殺してしまった大罪を犯したのは事実です!」


「違う発想で考えてみればいいんですよ」


「違う発想とはなんですか?」


 荒木が何を言っているのかパラメは分からなかった。


「そう。リクシーは馬鹿で知識がなかった。そんな馬鹿なリクシー程度に騙される奴が悪い。馬鹿なリクシーに騙されても恥だから、馬鹿なリクシーに謝る必要はない」


「確かに馬鹿ですが」


 荒木がリクシーを散々に弄るとパラメも罰を与えるためか便乗して妹を馬鹿にし始めた。


「お姉ちゃんまで!?」


「失望していますからね」


「もともと希望なんて存在しないだろうがな」


「そうですね」


 評価が駄々下がりのリクシーをパラメも荒木に続くように貶して罰を与えた。


「くぅー、人間のくせに馬鹿にしてぇ?!!


 姉の前でもあるせいか沸点が低くなっているのかイライラ度が上がっていたリクシーはついに噴火して席を立ちあがり荒木を怒鳴った。


「荒木様は人間なのですか!?」


 リクシーが怒ったことはそこにリクシーが存在しないかのように微塵も相手をせず急転換荒木が人間であることに驚きをもって興味を示した。


「そう。これ変装だから」


 パラメに聞かれたので荒木は素直に変装を解いて見せて上げた。


 人がいない大陸普通にいる人間が珍しいのかな?


「良くここまで来れましたね。辛かったでしょう」


 パラメは大体何かを察しているようだった。


 確か人間は奴隷くらいしかいないからな。そういった対象に見られていることを言っているのだろうか。


「辛いことは特になかったですね。変装しているからそういった目には合わなかったんでしょう。それにしても妹を貶しても怒らないんですね」


「お仕置きですから、荒木様もリクシーをしごいてください」


「気が合いますね。お姉さん公認であることですし、俺も頑張りましょう」


「はい。よろしくお願いします」


 荒木とパラメで協力して罰を与えるという共通の目的を持った二人は握手を交わして、意気投合した。


「フフッ」


 そして、荒木は小さく笑った。

 その笑みから何かを感じ取ったのかリクシーに寒気が走った。

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