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第五十五話 狙われている姉

「送った暗殺者が殺されました」


 魔王は使用人が送った兵士が一人殺された報告を受けていた。


「ほう、逃がさずに暗殺者を殺すとは調子に乗っている平和ボケ異世界人にしては意外とやるじゃないか。だが、勇者でもないし無用な被害が出る前にどんな手段を使っても良いから、殺してしまえ!」


 使用人も送っていったが、そのことごとくは全て異世界人の前で殺されて行っていた。


「魔王様、追加で送った暗殺者たちが一日立たずに補足され全滅させられました」


「一日で倒すのか。ただの調子に乗った異世界人ではないか。今まで以上に強いか」


 暗殺者を見つけ出して、殺していくのは相当力があると思われた。


「はい。相当強いようです」


「いいだろう。その異世界人の名前は何という?」


 今までになく、てこずっている相手に敬意を改め名前を覚えることにした。


「荒木武勝です」


「荒木武勝か。さて、どうやって殺すか。まずは弱点を探し見てようか。なら、偵察兵を出してその異世界人を観察させてみようか。それから、異世界人を殺すための作戦を考えるか」


 魔王は異世界人をどう料理しようか思惑した。すると、魔王の元に走ってくる兵士が現れた。


「魔王様大変ですあの異世界人は」


「なんだ?」


 大体異世界人は大変な連中が多いいことを知っている魔王は期待しないで聞いた。


「異世界人は人間国の勇者のようで3名でこちらに乗り込んできたようです」


「聞いたことのない名前だが、生き残りの勇者なのか。帰り方でも探しに来たのか?」


 魔王は生き残りの勇者がいることを知っていた。


「いえ、転移門から魔大陸に来たのは今回召喚された勇者のようです」


「はぁああああああ!? トチ狂っているバカなのか!! 今回の勇者は?!」


 魔王はあまりにも予想外の自治に変な大声をあげて今回の勇者荒木武勝を罵倒することしか出来なかった。


「決めつけることはよくありませんが、現状はその可能性が高いでしょうね」


「仕方ない。殺すのは止めだ!! 恐怖を教えて追い返すしかない」


「それで魔王様どのように追い返すのですか?」


 殺すなら単純明快であったが、追い返すとなるとそう単純ではなくなっていた。


「暗殺者を追い返すような強さ、それ相応の戦闘で目立ちそうだな。今気付かれるのも嫌だ。勇者の弱みでもないだろうか」


 使用人から聞いた勇者の情報を思い出し勇者の対策を考えた。


「確か悪魔とダークエルフの敵がいたな。となると、男と二人は女か」


「はい」


「そうか。異世界人のことだ。奴隷も大切にしているだろう。なら、その奴隷を使おうか。とりあえず二人との近辺を詳しく調べさせろ」


 経験から異世界人の行動をだいたい予想立てている魔王は勇者の周りの人間を使うことを考えた。


「分かりました」


 そして、使用人は二人を調べ終えた。


「ダークエルフの女レジーナ・アビリアンフートは村を人間に襲われ、奴隷にされ売り飛ばされていたところを買われたようです。その際村の住人は全て殺されたようで、生き残りはいなく天涯孤独の身のようです。もう一人の悪魔はリクシー・エスリア・アスカートという名で、わざと犯罪奴隷として捕まり主人を裏切り、遊んでいるようですね。そのリクシーにはパラメ・トルリア・アスカートとう姉が一人、世界樹の麓の村に住んでいるようですね」


「親族は一人だけか。なら、最後の奴を人質に取れ。肉親の人質がいれば楽に勇者を追い返せるだろう」


「はい。では、一緒に付いてきた魔族の親族を人質にとって手早く済ませましょう」


「うむ。頼んだ」


 魔王が返答すると使用人は去っていった。


「勇者か。その時ではないし、まだ私たちは何一つ動いていないのに勇者は何をしに来たんだ?」


 予想の付かなさそうなまだ見ぬ勇者荒木を夢想して、空を仰いだ。


「荒木武勝とう人間は一体どういう人物なのだ。よほどのお調子者か? 全く分からないが何かいやな予感がする。何が目的か知らないが、追い返せばいいだけだ」


 侵入してきた勇者の読めない行動に魔王はいやな感じを覚えた。



△荒木たち一行


 荒木たちは数多送られてくる暗殺者を屠り、遂にリクシーの姉がいる村付近に着替えも辿り着いていた。


「もしかして、この先にある村がリクシーの姉のいる村か?」


「そうね」


「小競り合いが起きているけどどうする?」


「小競り合い?」


 リクシーは村で何故小競り合いが起きているのか分からなかった。


「リクシーに思い当たる節がないのなら、魔王が絡んでいるのかもしれないな。まぁ、つまり、俺の予想が当たってリクシーの姉が狙われているのかもしれないな」


「急ごう」


 リクシーは姉が心配な様子で率先して荒木よりも前に出て、村の方向に進んで行った。


 姉が心配ということか。


「あぁ、俺も死なれたら困るし」


 荒木は納得という顔でリクシーの背中を追った。急いでいる二人に遅れてレジーナも後をついて行った。




 木造の家屋が点々と建てられている村の中央では悪魔同士が争っていた。装備をしている兵士が多数おり、その代表と思われる一人の男悪魔が女悪魔を庇うように老人が割って入っていた。女性は明らかにリクシーと似たような容姿の悪魔がいた。どうやら荒木の予想はあったっているようでリクシーの姉はすでに巻き込まれてしまっているようだった。


 他の村人と思われる色々な色の悪魔たちも遠巻きにその行方を見守っていた。一人一人が違う色でカラフルに彩られているようで、中心にいる兵士たちが目立っていた。


「魔王様のお達しだ。巫女を渡せ!」


「何度言ったら分かる。世界樹の巫女この村を離れることは出来ん!」


「魔王領の魔族なら、大人しく巫女を渡した方が身のためだぞ!」


「身も何も巫女がこの地からいなくなれば、世界樹の封印が解かれて世界が崩壊するんじゃぞ!」


「そんな。嘘を信じると思うのか? それに巫女は転移ですぐに返すから渡せ」


「一時この地を離れるだけでも危険なのじゃ」


 魔王軍と村の住人の押し問答が繰り広げられていた。


「まぁ、いい。強引に連れていくだけだ」


 話し合いが面倒になり、気が変わった兵士は老人を弾き飛ばした。


「ダンさん!!」


 ダンと呼ばれる老人を弾き飛ばした魔王軍の兵士はリクシーの姉を自分に引き寄せて、強引に確保した。



 いつもの着替えも終え、その一部始終を荒木たちは遠目から様子を見ていた。


「拘束されているのか」


「早く助けないと」


 リクシーは姉のピンチで感情的に何も考えず動き出そうとした。


「まぁ、待て」


 荒木は姉を助けようと行動を移そうと動き出そうとしたリクシーの服を掴み制止させた。


「なに?」


「多分、あれは俺たちに対する人質みたいなものだ。だから、傷つけたり痛めつけたりするだろうけど、命までは取らないから何も心配ない」


「いや大丈夫じゃないよね!? その話で行くとお姉ちゃんが傷ついちゃってるんだけど!」


 予想の中にはリクシーの姉が傷つく未来は確かにあった。


 傷がついても命があれば、いいと思うんだけど。姉には甘いんだろうな。


「過保護だな」


 荒木はリクシーの姉に対する保護欲がいささか多いと思えた。


「私のお姉ちゃんは私たちみたいに体が強くないのよ」


 レジーナが一瞬全員同じ括りにされて嫌な顔を見せたが、すぐに戻した。


 表情豊かで可愛い奴だな。


 一瞬の変化でも荒木には表情豊かには変わりなかった。


「ねぇ、聞いてるの?!」


 リクシーを無視してレジーナを見ていた荒木に尋ねた。


「あぁ、しっかり聞いてる。リクシーよりも体が弱いことくらいここから見ればわかる。まぁ、助けるから、任せろ。あと二人は手を出すな」


 力的には誤差の範囲内だったがリクシーよりも優しそうな雰囲気がしていた。大方把握出来ていた荒木はうるさくされないように最後二人に命令した。


「無事に助けられるんでしょうね」


「まぁ、助けるときに些細な傷はつくかもしれないが死にはしない」


 死なせない自信は十分にあったが、一切傷つけずに助け出す自信はあまりなかった。


「傷一つつけないで」


「どんな傷でも俺なら治せる」


「そういうことじゃなくて、かわいそうだと思わないわけ」


「どう見ても子供じゃないんだから、我慢出来るだろう」


 荒木は多少の傷ならかわいそうだと微塵も考えていなかった。


「うちのお姉ちゃんは繊細なのよ」


「まぁ、分かったよ。もう準備も整ったし、後は祈ってろ」


 すでに村中に悪魔の視力では捉えることのできない薄く糸が村中を漂って展開していた。もちろん、後ろの二人にもその糸を見ることも気配を感じ取ることも出来なかった。


「準備は整った。着いて来い」


「え? 何かしたの?」


 リクシーとレジーナの二人には何をしても認識できず、何も分からなかった。


「見てれば分かる」


 荒木は隠れるのを止め、村へと出ていった。村人全てが兵士に注目しているため、難なく気づかれずに成り行きを見守っている村人の輪に入った。村人の中に荒木たちが入るが、馴染むように服装を変えているので、周りの村人と溶け込み違和感が一切なかった。

 そして、そのまま迷うことなく観戦している村人を通過して、荒木はリクシーの姉を助けるため、兵士の元へと向かって行った。偽装がうまく働いているため、周りも同じ村の仲間が前に出たと思っていた。


「何だ!? 貴様は? 巫女の知り合いか?」


 もちろん兵士もまたこの村にいるリクシーの姉の知り合いの村人だろうと思い込んでいた。


「まぁ、知り合いだ」


 リクシーの姉だし、知り合いの知り合いだから知り合いだろう。


 荒木は知り合いの知り合いだったので知り合いとした。


「心配するな。危害も加えないし、魔王の作戦が終われば返してやるから安心しろ。だから、あまり怒るなよ」


 リクシーの姉と親しいと村人と勘違いしている兵士は無益な争いで危害を加えないように配慮した。


「その作戦は行われないな」


 村人と思い込み油断している兵士たちの周りの空中に漂っている糸を気で操り、太く丈夫な糸にしたうえで兵士たち全員を捕らえて拘束した。遅れて村人の中から、リクシーとレジーナが姿を見せた。


「お姉ちゃん!!」


 早く助けたいと思うはやる気持ちから言葉に出た。


「リクシー何でこんなところに」


「巫女の妹と女のダークエルフ。貴様が!」


 リクシーの姉という言葉から妹と思われ、その容姿とさらにレジーナの姿を見た兵士はその正体にすぐに気付いたが、最後の大事な部分は抑えた。


 後ろの二人で感づいたか。俺の情報はあまりないのか。


 後ろの二人で勇者だと気づいたことは荒木にとって結構な収穫だった。


 勇者と言わないのは周りの混乱を避けるための、配慮だろうな。


 巫女に配慮している姿から荒木は魔王軍が基本悪魔全体の味方をしているのだと思った。


 それにしても、この兵士たちはとことん使えそうにない。村の人にでも判断を任せようか。


 兵士の悪魔を捕らえたもののどうでも良かったので、捕まえたとの処遇は村人たちに任せることにした。荒木が色々と考えていると、身動きが取れず抵抗できないと判断した代表の兵士は諦めたかのように手を挙げると全員がすでに決意していたようで、その場で即座に自決した。兵士たちの自決は決められていたかのように不自然に迅速で、村人からしたら異様な光景だった。糸で拘束していた荒木だったが、特に止めることもせず気にせずそのまま兵士たちを好きにさせた。

 兵士たちが自決した後、荒木は宙ぶらりんになっている死体を地面に投げ捨てた。そのまま処理しても良かったが、村人から希望が出されるかもしれなかったので、一応村人たちが確認するまで放置しておくことにした。


 死んだか。こいつらは俺と出会った場合は情報を漏らさないように徹底しているようだな。まぁ、暗殺者や門番のおかげでいい情報は手には入れているからもう魔王の兵士はいらないからね。


 正規の兵士ならなおのこと情報など徹底されていると思われるので、新しい情報はもう魔王軍の兵士の誰からも良い情報がもたらせないと思っていた。


 兵士や暗殺者の自決が甘かったのは自分で考えていたからだろうな。


 今まできたどの者よりも一番迅速な自決だったため、今までの命令は緩かったものだと思われた。


 ようやく本格的に魔王が動き出してきたということか。でも、時すでに遅しか。


 今更魔王がいくら対策を考えようが、荒木の配事はすでに無くなっているため、どんな策を練ろうとも無駄に終わると思われた。


「お姉ちゃーん!」


 姉が解放されるとリクシーは一目散に姉の元へと駆け寄っていった。そんな、姉への愛情を見ながら荒木もゆっくりとリクシーの姉へと近づいて行った。


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