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第五十一話 食い気味なリクシー


「それでお姉さんはどこにいるの?」


 作戦が決まった荒木はリクシーにその姉の居場所を聞きだそうとしていた。


「何をするつもり?」


 荒木の行動にリクシーは理由も何も聞かずに怪しんで警戒していた。


「そう警戒しなくても」


「私たちが荒木を警戒しないとでも思っているの?」


「当然だ」


 うーん、どこをどう見ても俺を本当に警戒しているようには見えない。


 荒木の瞳には二人が警戒しているようには映らなかった。それだけ実力差があった。そのため、警戒心に気づかず、リクシーの疑問に自信をもって頷いた。


「レジーナの言った通りあなたの頭は壊れているわね」


 頑なに今までの行動を認めない荒木の頭がレジーナの行っていた通り壊れていると改めて認識した。


「別に何か危害を加えるつもりはないんだけど」


「それで、私たちがあなたに受けてきた扱いを知らないわけじゃないわよね」


 俺の親切心からダンジョンに連れて行っただけなのに、そこまで言うとは。誤解を解かなければ。


「あれは親切心からダンジョンに連れて行っただけさ」


「普通の人は親切心から死地になんて連れて行かないわよ!」


 気軽に言われてしまったリクシーは怒った。


「馬鹿だな」


 いつまでたっても二人の意見を聞き入れない、聞き分けもなく現実を受け入れない荒木にレジーナは呆れ果て自然と悪口がこぼれた。


 だいぶ話が逸れてしまっているな。時間もないかもしれないから、二人に構うのは、やめて本題に入らないと。


 作戦がすでに失敗している可能性や、追手が来る可能性などの様々な可能性があり、時間はなかいことを思い出していた。


 ここはリクシーを脅して俺の話に引き込もう。


「離さなくてもいいんだけど、リクシーの姉さんが人質に取られてもしらないよ?」


「人質?」


 荒木の口から出た人質という単語にリクシーは頭の中に思い浮かべてすらいなかった。


「悪魔や魔族の軍隊って拷問するんだろ? 領地に敵の親族がいるのなら、人質を取るのも作戦の一つに考えられるだろう」


「そこまではしないんじゃない?」


 思いつかなかったため、リクシーは楽観していた。


 たぶん、悪魔と俺はほぼ同じだからな。俺と同じなのだから、あっているはずだ。


「俺ならするけど?」


「悪魔みたいなあなたと違って同族にはそこまでしないわよ」


「魔王軍も悪魔が指揮しているから考え方は同じということだな。それに、万が一は心配にならないのか?」


「それで姉にあって何をする気?」


 荒木を悪魔と肯定していることになるが、思い当たるふしが大有りなのかリクシーは急に意見を変えた。


 良し。のってきてくれたな。説明のチャンスだ!


「敵が来るかもしれないからな。黙っていても侵入者だから刺客を送って来るかもしれないが、刺客を送ってこない可能性もある。人質なら、絶対に兵士を送ってくる可能性が高いからな。その場合、俺の欲しい情報を得られる可能性が高い。だから、俺がお前の姉を守ってやるんだ」


 荒木は意気揚々と二人に説明した。


「また拷問をしたいということね」


「敵対関係の敵がやすやすと情報を渡すわけがないからな」


「確かにそうだけど、荒木が言っている欲しい情報って何なの?」


 不確かだからまだ言えないし、行ったところで邪魔してくる可能性が高いから、言わずにはぐらかした方が吉。


「それは調べてからのお楽しみ!」


 邪魔されそうだったので荒木は予定通りはぐらかした。


「私がその情報を先に手に入れるかもしれないわよ」


「俺の欲している情報を知らないから、情報を得たとしても気付かないだろう」


「そうね。なら私に欲しい情報を言えば捗るとは思わないの?」


 リクシーはどうしても情報を抜き出したいのか食い下がってきた。


 必死だな。俺に仕返しをしたくてたまらないんだろう。面倒になってきたから相手にならい現実を分からせて上げよう。


「別行動するわけではないからな。それに、ダンジョンの中層くらいで死んじゃいそうな貧弱とは力量さがありすぎて、組みたくはないよ。もし、協力をするとしたら、馬車を引いてくれたべにとかにお願いするよ」


 荒木はリクシーをとの力の差を誇示するため、単に実力不足で協力を断っていることを主張した。


「何!」


 今まで人間と話したくないのか黙っていたレジーナは軽く見られているようで、荒木が気にいらなかった。


「ヒィヒィ言いながら、逃げていたよね」


「…う!」


 確かに敵から逃げ回る無様で恥ずかしい姿をレジーナはふと思い出していた。事実は事実だったの言われても仕方なかないと、観念して怒りはすぐに静まった。


「…分かったわよ。姉の場所を話すわよ」


 図星だったリクシーも何も言い返さなくなってしまい、レジーナに続き降参した。


「いいよ。話して」


「私の姉は世界樹の里とか呼ばれる場所にいるわよ」


「世界樹?」


 これはまた面白い話になって来たな。確かエアスト帝国の図書館にこの世界では世界を作り変えるような物語があったな。


「里の近くに大きい木があって、それを世界樹と呼んでいるの」


「なんだ、単なる木か。期待させるようなことをいうなよ」


 面白くなりそうだったが、世界樹の正体が普通の木と知った荒木は落胆した。


「世界樹なんてこの世に存在するわけがないじゃない」


「暴れたりしてないの?」


「暴れる? どんな木を想像しているのよ」


「世界樹っていうくらいだから、世界を破滅させるみたいな物語てきな感じを思い浮かべているんだけど」


「残念ながら大きな木に世界樹と名付けただけ、その変わった物語のようなことは起きないわよ」


 元居た世界ではあったのにないのかよ。もうすでに伐採されているかもしれないな。


「でも、世界樹と呼ばれるものなら向こうの世界にもあったから、こっちでもあっても不思議ではないだろう」


「荒木のいた世界にもあったの?」


 荒木の世界を知らないリクシーにとって異世界の話はいくら嫌いな人の話とはいえ、大変に興味を惹かれた。


「あったな」


「へー、それで普通の物語のように豊かにでもなったの?」


 リクシーはことの顛末を知りたくなっていた。しかしながら、半信半疑でこの世界のセオリーで疑った。


「いや、周辺に種をまき豊かな自然で世界を埋め尽くそうとしていたな」


「いい木じゃない」


「自然に侵食されるからな。それに切っても、燃やしても生え続ける草木たち、定住する人たちや住処を形成する動物たち乗っては脅威だったみたいだよ」


「実際に見たことがあるの?」


「あるよ」


「で、その迷惑な世界樹はどうなったの?」


 見ているということはことの顛末を知っているだろうとリクシーは思っていた。


「伐採されたな」


「世界樹が? どうやって?」


「普通に近づいて引っこ抜いたな。あれは動かないから、世界樹というより、盆栽だったよ」


「あなたがやったのね」


 荒木が関わっているいつもの現象にリクシーは呆れていた。


「そうだな。リクシーにだって出来ることだから、そこまで驚くようなことでもないよ」


 本当に驚かれるような話ではないんだけどな。


「驚くことよ」


「まぁ、俺の世界のことも話したし、案内してくれよ」


 興味のある情報を渡して、対価として十分だと思った荒木は知っているとは思っていなかったため、期待せずにリクシーに聞いた。


「ここがどこだか分からいないから無理よ」


「村の場所とか東西南北で聞いたけど、この場所がどこか二人は知ってる?」


「「…」」


 回答はなく二人ともこの場所がどうか分からなかった。


「レジーナは知らないのかよ。年季が入っているのにださいな」


 二人が黙っていたので、空気が良くないと思った荒木はレジーナをからかうことにした。


「お前も知らないだろ!」


 怒っているから本当に知らないということだろう。


「リクシーは?」


 怒らせたレジーナを放置して荒木はリクシーにも確認のため聞いた。


「私も知らないわよ」


「荒木はさっき兵士から情報を抜き出さなかったの?」


「近くに敵の拠点があるとか場所の情報は抜き出したけど、移動していたから、ここがどこか抜き出せなかったな」


「ということは、私たちってこの森で迷子ってこと?」


 すると、リクシーは今置かれている状況に気づいた。


「そういうことになるな」


 驚くことではない。転移門に入る時点て迷子は確定なのはわかりきっていたことだからな。


「そういうことって、なんで遭難しているのに一瞬たりとも驚かないで落ち着いていられるのよ」


 予想の付かない荒木に気が気ではないリクシーは荒木と行動を一緒になってから、集中力を割いていた。ずっと、荒木を警戒していたリクシーは初めから特に気にしていなかったことに気が付いていた。


「別に森で遭難したって水も、食料もたくさんあるから死ぬわけではないし、川を進んだり、山頂に行ったり、適当にまっすぐに進んで行けば、どこかには出られるから何も心配する必要がない」


「あなたと一緒だと心配になるわよ」


「それに忘れているようだが、魔法で空を飛べるようだから人里には出られるだろう」


 荒木はレジーナがゴーレムの頭上を飛び越えている光景を見ていて、高く跳ぶことの出来る能力を保有していることは察していた。


「じゃ、見てくる?」


 リクシーも空を飛ぶ手段を持ち合わせていた。


 レジーナよりも強く、魔法が得意だからな。飛ぶ手段を持っていても不思議ではない。なら、空飛ぶ魔法も見てみたいし、ここから探ってもらおうか。


「そうだな。とりあえず敵拠点でも良いから、悪魔が住む人里に出ればいいか」


「どこに行ったって、人間のあなただと警戒されるわよ」


 普段人間が余りいない魔族の土地で人間は目立ちやすかった。


 リクシーは来ている装備を分かっていないようだな。


「そのためのステルス装備だ」


 フードを被ってアピールした。


「そんな怪しい姿で近づいたら逆に警戒されるわよ」


「ステルスの意味を理解していないな。人里に付いたら教えてやろう」


 リクシーに向かってあざけるように荒木は言った。


「はいはい。分かったわよ。フライ」


 何かを言っても仕方ないと諦めたリクシーは荒木から逃れるように周辺を調査するため空中へと飛んでいった。


 魔法は便利だな。俺が使っている気だと空を飛ぶのに時間が掛かったんだけどな。

 俺もあの光の玉を受け入れて、魔法を覚えようかな。


 荒木は簡単に空中へと飛んでいく魔法を目で見て、若干魔法に興味を惹かれていた。


「ここからは何も見えない」


 リクシーは飛んだことは良いものの辺りには人里など見当たらなかった。素直に伝えるかどうか迷ったリクシーは荒木にどう告げようか迷っていた。

 しかし、そのつぶやきは地上にいる荒木の耳にははっきりと聞こえていた。


 全くもって期待していなかったが、リクシーの視力ではこの程度だろう。


 ダンジョンでの戦闘からリクシーの大体の力は荒木に知れていた。


 飛ばせたのは魔法を見る目的だし、しっかりと俺が見るか。


 荒木は空中で静止して辺りを見回しているリクシーに向かってその場から跳んだ。


「飛んだのか!? どうやって!」


 跳ぶ姿を見ていたレジーナは魔法の痕跡を見受けられず、レジーナの理解を超える不可解な人間の跳躍に驚かされていた。


 そして、跳んだ荒木はリクシーの背後まで移動していた。まだリクシーは荒木が背後にいることに気が付いていなかった。


「肩借りる」


「わーーーーーー!」


 飛ぶことが出来ないと思っていたリクシーは空中に荒木が来るとは思っていなかった。

 そのため、いきなり荒木に背後から声を掛けられてリクシーは驚いた。


 驚いているリクシーなどどうでも良かった荒木はリクシーの頭に手を置いた。その手を起点にしてリクシーの頭の上で二回転して、周囲を見渡した。


 大きい町みたいなところと、小さい村みたいなのがあるな


 周囲に人里らしきものを発見できた荒木は重力に引かれて地上に降りた。


「どんな力を使ったんだ?」


 レジーナは荒木の様々な行動から、自分の知らない脅威的な力があると思い。荒木に問いただした。


 聞いてきたか。レジーナだし答えて上げよう。


 訓練以外のことを口に出すレジーナは珍しかったので、答えて上げることにした。


「肉体以外の特別な力は使ってない」


「あり得ない」


「確かに」


 そこに、空中から戻ってきたリクシーが同意した。


「私には見えないように使っているのに違いない」


 そりゃ、今は本当に何も使ってないから、見える力が存在するわけがないんだけど。言っても仕方ない。別の方法で話を逸らそう。


 荒木は見えない力を疑っている相手に力を使っていないことを理解させるのは不可能だと思っていた。なので、荒木は話を逸らしてみることにした。


「しかし、驚いたよ。まさか人間嫌いのレジーナが自分から負けを認めるなんてな」


「私が?! 負けを?」


 人間に負けた発言にイラつきどこが劣っているのかレジーナは敵意を向けながら疑問に思っていた。


「人間の俺に力を感知出来ないことを認めているじゃないか」


「グッ!!」


「フン! お前に聞かなくても、それくらいわかるわ」


「そう。頑張ってねー」


「…」


 荒木が適当にあしらわれるとレジーナはムカついていた。


 面倒な質問してこなくてよかった。


「じゃ、休憩は終わりだ。村に行くぞ」


 レジーナをやり過ごした荒木は休憩を終えて、先陣を切って森を歩き始めた。

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