第三話 何はともあれいざ異世界へ!
荒木に大火球が迫っていた。
こっちも大火球か。
荒木は高久が放った大火球もあっさりと躱した。高久は大火球を放ってしまったせいで、前が見えなくなっていたため、反応が遅れていた剣で防御が出来ていなかった。荒木は剣との間に腕を入れ肘で手首を弾き、その勢いのまま高久の首元を掴んで一気に走り出した。
高久も抵抗しようとしたが勢いがすごく身動きが取れず反撃できる状態ではなかった。荒木は庭の壁まで高久を片手で持ち運びそのままの勢いで高久を壁に叩きつけた。
「荒木君…は何で…そんなに強い?」
高久は荒木に首を掴まれ壁に叩きつけられている状態にもかかわらず、荒木にその強さについて質問してきた。
「ようやく理解してくれたね? 俺は強いよ。だから高久さんも本気出して欲しいな。出ないと本当に死んんじゃうよ」
後輩のこともあるから本当に殺す気はさらさらない。確かにもうちょっと身を引き締めて抵抗してくれないと手加減を間違えて、うっかりと殺してしまう可能性ある。まぁ、本当のところはこの世界の人の実力を知りたいから、全力を出してもらうために挑発をしているだけ。
荒木は徐々に掴んでいる首の圧力を上げて行っていき、そのまま窒息させて気絶させようとした。高久はすぐに剣に力を送っているのか剣が光り始めていた。そして、剣が爆発した。
荒木はすぐに高久から離れて、剣の爆発から逃れた。荒木は高久を見たが無傷だった。
今の爆発は結構な威力だったな。しかも、あの爆発本人には効かないのか。いよいよ本気を出してきてくれたか?
高久はその場から剣を振るうと剣から光の斬撃が飛んできた。荒木は一回地面に伏せてから庭に履いている草を引きちぎりその斬撃に当てた。光の斬撃の先端に葉っぱが触れると葉っぱは真二つになった。斬撃の上に乗った葉っぱは原型を着られずに原型をとどめていた。
なるほど。あの光の斬撃の切れ味は先頭部分だけみたいだな。どうせ能力は変えて来るだろうが、今のうちなら怖くはないな。
高久がさらに斬撃を飛ばしてきたが気にせずにそのまま前進しつつ斬撃を軽く躱した。斬撃を軽く躱された高久はさらに剣を振り無数の斬撃を飛ばしてきた。荒木は少し跳びその斬撃を足場にして斬撃を蹴り加速して高久の元に近付いた。高久はすぐさま荒木との間に剣を入れて防ごうとしてきたが荒木はそれを難なく躱してお腹を殴った。
「かはっ!」
お腹を殴られると高久は口から血を吐いた。どうやら内臓に傷がついたようだった。荒木は少し距離を取り高久の様子を見ていた。
普通の人なら戦意をなくすんだけど、やはり実践が豊富だとこれくらいの負傷で倒れるわけはないか。胃を少し切っただけで、大したダメージではないからな。
「仕方ない。エタナ」
高久は何かを諦めると剣の名前を呼ぶと高久の体が若干光りだした。壁際にいた高久がさっきよりも早く動き俺に近付いてきた。
なるほど、身体強化か。けど、身体強化をしたとは言えそんなに早くはない。期待外れだ。
高久が荒木に近づくと剣で突きを出した。荒木はそれも普通に体を右に捻り躱した。荒木は体を捻ると同時に左手に力を入れて、高久の背中に拳を振り下ろして背骨を折った。荒木の痛打を食らった高久はそのまま地面に叩きつけられて動けない状態になった。
これでしばらくは立ち上がれないだろうけど、陽川の回復があるからすぐに治せるだろう。後は剣だけだな。
荒木は高久が動けない状態でも握りしめている剣に向かって軽く掌底を放った。掌底を放たれた剣は姿を変え地面に倒れ伏した青い服の少女に戻った。
「じゃね。お嬢ちゃんと剣の少女エタナちゃん」
「ふっ」
荒木がそういうと、高久は少し笑った。なぜ高久が笑ったのか理解できなかったが、荒木はそのまま地面を蹴ると一蹴りで城の壁に登り周辺を見渡した。
へー、辺り一面森か。どこへ行っても一緒だな。そう言えばまだ肉を食べていなかったな。肉を食べたい。が、金がないからな。森に行って調達するしかないか。その前にこの服では目立ちすぎるから、目立たない服に変えないと。
「糸術-織糸」
荒木は今来ている制服の糸を解きつつ、城の町にいる市民と似たような服装の糸を手のひらから気で生み出した。その糸でこの世界に合う服を作り、変装した。そして、最後の仕上げに昼間だと見にくいクリーム色の糸を気によって生み出しクリーム色のローブを作り、この世界の住民に溶け込んだ。
「よし。これで完璧だな」
荒木は上手く服が出来ているかローブを手に持ち裏表を見て確認した。服の確認が終わった荒木は壁を跳び降り、城の町の屋根に音もなく平然と降りた。荒木は真っすぐに屋根を伝って行きこの国の防壁でもある3枚の城壁を飛び越えて出ていった。
そして、荒木は肉を求めて森へと入って行った。
○高久司視点
生徒の回復を終えた陽川が立てない高久の傍まで近づき、回復を始めた。
「司、大丈夫?」
「あぁ、平気」
高久は背骨を折られて起き上がることが出来なかったため、辛うじて動く手を振り元気であることを示した。
「まさか。司がここまでボロボロにされるとわね」
さらに暇になっていた光武が近づき地面に倒れ伏している高久を眺めながら言った。
「あの子はいったい何者なの?」
「よほどのステータスでも振られていたのを隠していたのかな」
「それはない。現時点で戦い慣れていたからな」
高久はさっきの戦いによって荒木が明らかに戦闘慣れしていることに気付いていた。そのため、光武の疑っていたことは違うと断言出来た。
「じゃ、一体」
「それにエタナの存在にも気づいていた」
「まさか」
「(コクッ、コクッ)…それに解除もされた」
エタナは首を縦に振りながら、自分の存在を感じ取られていたことをこの場で勇逸自分の存在が見える高久に示した。
「エタナも頷いている」
高久はエタナが頷いているのを見ると見えない二人に伝えた。
「確か、特殊な状況でもない限り、聖剣の少女は勇者の称号があるものにしか見えないはず」
「そのはずだが」
陽川が一つの事実を言うと高久もそれを当然の如く知っていたため、さらに悩んだ。
「もしかして勇者?」
光武が一つの可能性を思いついた。
「いや勇者の剣を抜いたものが現れたから違うだろう」
「じゃ、勇者とあって見てエタナが見えるかどうか試してみれば」
「そうだな。試してみるか」
光武の提案に高久は確かめるだけなら、簡単なので確かめて見るのもいいかもしれないと思い現勇者に接触することに決めた。
高久たちは生徒たちを元いた部屋に戻すと、勇者と皇女がいる部屋に向って行った。
○学校の先生とアンドレア皇女
「牛迫様あなた方がこの学生たちの代表者ですか?」
「はい。一応代表者者です。話をしたいのですが…」
牛迫は折角、位の高い人に自分が会えたのだから、現在の詳しい状況などを皇女から聞き出そうとしていた。何をされるか分からないので、少し緊張気味だったが話を進めようとしていた。。
「大丈夫ですよ」
アンドレアは牛迫の緊張をほぐそうと透き通るような優しい声で落ち着かせようと話しかけた。
「勇者やその仲間になれなかったものはこれからどうするのですか?」
牛迫は自分たちの優遇は良くなることは何となく感じていたが、他の場所に連れていかれている人たちが今どんな状況に置かれているのか心配になっていたのと、先生としての義務から聞いた。
「勇者に選ばれなかったものも普通の人よりは断然強い能力ステータスを持っていますので、魔王を撃退するまで、この首都の防衛を行ってもらいたいのです」
アンドレアは異世界人がこの世界の普通の人よりも強いことは当然知っているので、万が一魔王の軍勢が来た時に利用しようと考えていた。
「学生たちを戦わせるのですか」
「えぇ、魔王軍が攻めてくる可能性もあります。それにこの首都を出たとして外にはモンスターが出現しますので、何れ(いずれ)にせよ誰もが戦いは避けられないです」
「この城からでなければ、戦闘を避けられるのではないですか?」
「いえ、この内部に悪魔が侵入するかもしれないので、安全は保証できないのです。ですので、私たちが皆さんを王城で保護しつつ訓練をしてもらいます。皆様が死なないように訓練を行い、実力を身に着けてから、この城または国を拠点に自由に生活してもらう予定です」
牛迫は国が支援してくれることを聞き、一定の安全が確保されているのだと思い一安心した。
「それは理解しましたが、私たちは帰れるのですか」
牛迫は先生と言いう立場から生徒たちを守らないといけないので、この世界に呼んだアンドレア皇女ならば帰れる方法を知っているのではないかと思った。牛迫は自分たちが元の世界に戻れるかということを確認のため聞いた。
「残念ながら、今まで戻ったという記録はありません」
「そうですか」
牛迫は異世界に呼んでおいて返し方を知らない失礼なアンドレア皇女に失礼な気持ちを持ちながらも、帰る方法を知らないというのなら仕方ないと思った。牛迫は違うことを聞こうとした瞬間、合図もなしにいきなりドアが開かれた。
ドアが開かれるとこの城の兵士が現れた。
「皇女様。異世界から召喚した学生が一人城から脱走しました」
「脱走ですか?」
アンドレアはこの城が高い壁に囲まれていてまだ力を使いこなせていないこの段階で、脱出が極めて困難であるということを知っているため、本当かどうかを兵士に聞き返した。
「はい」
兵士は聞き返してきた皇女様に事実だと告げた。
すると、突然部屋がノックされ、みんながドアの方向を向いた。
「アンドレア皇女様、入ります」
「はい。大丈夫ですよ。どうしました高久さん」
アンドレアに入室の許可を取るとすぐに高久が入ってきた。アンドレアは急いでいる高久に質問した。
「勇者に確認したいことが有りまして、いいですか?」
「私は構いませんよ」
「私の隣にいる子がわかる」
アンドレア女王に許可を貰うと高久はお辞儀をして、勇者にそう問いかけた。エタナを自分の隣に連れて来て若藤に見せた
「隣?」
若藤は高久の隣を見るが、何も見えなかったので頭を傾げて不思議に思い、隣に何かあるのだろうかとずっと見ていた。
「じゃ、もしかして」
「荒木君が勇者か」
「そうみたいですね」
光武と高久と陽川の三人は顔を見合わせて、自分たちが思っていたことが事実だということが分かり、荒木が勇者だということを確信した。
「ですが。若藤さんが聖剣を抜いていますよ。どういうことですか?」
アンドレア皇女は自分の目で若藤が聖剣を抜いていたところを見ていたので、そんなはずはないと思った。
「なぜかは分かりませんが、勇者にしか見えない聖剣の精霊を普通に見ることが出来ていました」
「それでしたら、その荒木さんをここに連れて来て下さい」
アンドレアは勇者が違ったのならば連れてくればすぐに問題は解決できるので、連れて来るように兵士に伝えた。
「それが脱走したのがその荒木君です」
「えっ!? 兵士の皆さん早く追ってきてください」
アンドレアが脱走した人を聞いて驚いた。アンドレアはすぐに冷静になり、脱走したとしても早めの段階ならばすぐに捕まえられると思い、兵士たちに急いで命令した。
「荒木君は模擬戦でも私を倒すほどの強さです。捜索は私達が行きましょう」
高久は模擬戦の試合で自分が倒された事実をアンドレアに伝えた。
「高久さんを倒したのですか」
アンドレアは高久の実力を少なからずとも知っているため、高久が荒木に倒されていることにかなり驚いた表情を浮かべていた。
「はい。ですので、私たちのクラスは他の人にお願いしました」
「わかりました。では、その荒木さんは高久さんに任します」
アンドレアは高久が倒されたのであるならば、他の兵士ではその荒木という人を連れ帰るのは困難だと思った。アンドレアは自分の兵士を連れ戻しに行かせるのではなく高久を行かせることにした。
「では、早速行ってきます」
高久は今から探しに行けばすぐ見つけることが出来るかもしれないとアンドレアと同じことを思い、急いで外へ行くための準備行うため部屋を出ていった。
「このことは他の皇国の兵士達にも伝えて、荒木さんを見かけたら城に連れ戻すように命令してください」
「はっ!」
兵士はアンドレアの命令をされるとアンドレアに忠誠を尽くしているのか迅速に他の兵士に伝えに行った。
この部屋にいた荒木を知っている他の生徒たちは荒木が逃げ出したと聞いて驚いていた。
「荒木君が逃げ出したとはどういうことですか?」
「この城を抜け出して、モンスターのいる外の世界に出たということです」
「まさか。そんなはずは」
荒木のいつもの姿を見ている牛迫は荒木がそんなことをする子ではないという印象が強いので驚いていた。
「私こそ聞きたいのですが彼はそちらの世界で何をなされていた方なのですか?」
アンドレアは荒木がステータス0で何もできない存在だということをスタータス測定の記録から印象に残り知っていた。そのため、ステータス0にも係わらず荒木が模擬戦とはいえ高久に勝てるほど強い理由を探るために聞いた。
「普段の彼は人より成長が遅くそんなに運動も得意ではない子で、大人しくそんな急に危ない世界に飛び出すことを想像つかない程真面目でいい子ですよ。家も特には普通の家庭でした」
牛迫は荒木の安全を確保できるならと自分が把握している荒木の情報を全てアンドレアに伝えた。
「ですが、私が知る中で一番強い高久さんが模擬戦とは言え、こちらの世界に来たばかりの慣れていない環境にも係わらず勝っています。その荒木という人はよほどの実力者で、そちらの世界でもその名が轟いていてもおかしくはないんですが」
アンドレアは高久を倒した実力があれば、向こうの世界では有名になっている可能性があるのではないかと思っていた。さらに、アンドレアは牛迫から荒木の情報を色々聞きだして連れ戻す対策を立てようと考えていた。
「それは本当ですか?」
牛迫はアンドレアの推測を聞いてまさか普段小さくて力の弱そうな姿をしている荒木がそんなに褒められるほど強いとは想像もできなかったので、聞き返した。
「はい。それに彼はステータス0だったんです」
「ステータス0?」
牛迫はステータスなどの概念などは少し前に教えてもらい分かってはいたが、0とはよくわからなかったので、疑問を持った。
「ステータスはこの世界の力の基準で異世界人はこちらの世界では普通の人よりは高い数値になっています。それによってこちらの異世界でモンスターたちとも戦っていけるのですが、そのため、ステータスが低いと普通はかなりの差がある場合はほとんど勝てませんが彼は余裕で勝ってています。ですので、例外の場合もありますがステータスが0ということは彼本人の素の状態でかなりの実力があるということです」
「例外?」
牛迫は荒木が強いということは実感できなかったので、例外の可能性が高いと判断してアンドレアに聞いた。
「例外は彼本人がステータスを隠し、強さを隠す行為ですが、これはかなり低いです」
「なぜ低いのですかですか?」
「過去にもこういった召喚を行ったときにステータスを隠す人がいたらしいので、それから隠された時のためにばれないように罠を仕掛けて、強制的に見えるようにしているんです。その罠にも掛かってはいませんから、可能性が低いのです。ですから、実力がある有名な人物だと思ったんですが心当たりはありませんか」
アンドレアは牛迫が荒木に関する情報を何か思い出している可能性を考え、再度荒木に関する情報を聞くために問い直した。
「ないです」
牛迫は再び荒木について思い出してみるがやはり自分が知っている情報にはその強さに関する事を思い出すことはできなかった。
「そうですか情報があれば捕まえることが速くなるんですが」
「高久さんは荒木君を連れて帰って来られるのでしょうか」
牛迫はアンドレアが信頼している高久が荒木に負けているということは、力ずくでは荒木を連れて帰ることはできないという疑問がふと頭によぎった。どうやって連れて帰ってくるのか分からないので不安になりアンドレアに聞いた。
「分かりませんが、高久さんなら何とかしてくれますし、国全体で探しますのですぐに見つかるでしょう」
「分かりました。荒木君を探すのはアンドレア様に任せました。それで、勇者出なくなった場合、若藤さんはどうなるんですか」
牛迫は現状が混乱している中、他の生徒も守らないといけない教師である立場の自分が探しに行くことはできない。アンドレア皇女が信頼している高久という人物がどうにか連れ戻してくれると信じて、荒木の問題は先延ばしにして、割り切ることにした。
牛迫は荒木の問題を割り切ると、次に心配している。もし、荒木が本当の勇者で若藤が勇者ではなくなってしまった場合若藤の扱いはどうなってしまうのだろうと、若藤の身を案じてアンドレアに聞いた。
「いえ、剣も光っていましたので、勇者の重要な役目には選ばれているので、何も変わりませんよ」
「そうですか」
牛迫は若藤への待遇が変わらないことを確認すると、自分の中での心配ごとが解消された牛迫は一安心して話を終えた。
「皆さん疲れましたでしょう。今日のところは転移、初日ですので体を休ませてください。明日から訓練などを行いますので、私はこれで失礼します」
アンドレアは牛迫が話すことが無いのを悟ると自分には急いでやることが今できたため、まだ異世界のことなど色々と話をしたかったが、早々に皆を休ませてその部屋から退出した。
「皆さんこれから荒木さんについての作戦会議を始めます。私に付いてきてください」
勇者の可能性を持つ荒木をどう対処していくかを決めるため、階級が上の兵士たちを集めると部屋を移動したアンドレアは兵士達と相談しながら作戦を練り始めた。
○一方高久たちは城下町に行くための準備を整え終え、町へ行く道を歩いていた。
「それでどこから探す?」
光武が度から探すのかチームのリーダーである高久に今後の方針を聞いた。
「まず町で荒木君の姿を見たか聞いてみるか」
「確かにそれが速いですね。背が小さいという特徴がありますし、それに制服で外に出れば目立ちますからね」
高久と陽川は今の段階で闇雲に探すだけではただ時間が掛かってしまうことを考え、町の人たちから荒木の情報を聞き、どの辺りに行ったのかある程度特定してからそこに赴いて探したほうが速いと思い方針を決めた。
「しかし、魔法も使わずに私に勝つとは荒木君は地球で一体何をしていたのだろう」
「高久に勝てる人なんてほとんどいないからね」
「そうですね。確かに彼の生い立ちには私も興味ありますね」
三人は荒木が高久に勝てる程強くなる過程でどんな生活をしていたのか興味を抱き、荒木を探し出したら聞いてみようと考えていた。
そして、荒木の姿を見ていないか情報を集めるため、町にいる顔見知りの人達に会いに行った。
「あの小さな子供みたいな変な恰好した子が来ませんでしたか」
高久は取りあえず町にあるお店の店主から情報を聞き出していた。
「いいや見なかったわね」
「見ないな」
「来なかったぞ」
しかし、様々なお店や、この町の情報通でも荒木の姿を見たものはいなかった。
それから、しばらく様々な場所にいる人たちに聞いて回ったが荒木を見かけたという情報は三人の耳には一切入ってこなかった。
「一体何処へ行ったのだろう」
高久は一切の情報を得られることが出来なかったため、どこを探せばいいのか途方に暮れることになり、空を見上げて困ったように口に出した。