第四十六話 休まりの帰路
荒木が去り、5人は残されていた。
「まったく、クリスタルを渡したということ評価をしろということか」
フィースは荒木がランクを上げてもらえるのだろうと思って、クリスタルを渡していると思っていた。しかし、散々振り回されたフィースは評価したくなかった。
「女王に気に入られているみたいだから、私たちが何もしなくても、高ランクになるんだろうけどね」
メーベルは先ほどの王の証明書から荒木が女王に気に入られていると判断していた。
「そうだろう。エアスト帝国内で女王の命令なら大体融通が利くからな。さらに言えば、血の気の多い場所はシンパも多いから特に」
フィースは女王がエアスト帝国のほとんどを動かすことが出来ることを知っていた。
「冒険者ギルドはその内の一つだからね。女王が惹かれるほどの実力を持っている荒木くんがランクを上げていることを知れば、何もしていなくてもトントン拍子で上がるでしょうからね」
メーベルは女王に気に入られている荒木の今後の展開が大方予想出来ていた。
「まぁ、それに求婚されていたからね」
すると、今まで気を失っていたジャネットが会話に入って、女王の求婚話を二人にした。
「起きたか。ジャネット」
「はい」
ジャネットは迷いなくフィースの言葉に反応した。
「そうか。(荒木くんに気を取られ過ぎだな)」
フィースはレノールの内容を理解していたことと反応の迷いのなさから、だいぶ前から起きていたのだと気づいた。よくよく見るとレノールとメーヴィスの二人も目を覚ましていた。フィースは荒木に集中しすぎて、目を覚ましていた三人に気づかなかったことに納得した。
「夫が死んでいたようだからね。あれだけの力。女王なら普通でしょう」
女王の大体の性格を理解しているメーベルは当然のように答えた。レノール以外の他のみんなも納得していたが、レノールだけはよくわかっていなかった。
「亡くなっていたんですか?」
「女王も死んだ人には興味が無くなってしまう性格の持ち主で、情報が出回っていませんでしたから知らないのも無理はないですね。最近は徐々に話は広まっているみたいですけどね」
レノールが訪ねると情報がどれくらいの規模で知れ渡っているのか把握しているメーヴィスが答えた。フィースとメーベルは情報ギルドのメーヴィスがいたので、説明を任せていたため、答えなかった。
「へー」
「女王は強い男が好きだからね」
「そうだな。呆れる話だが、あの女王は容姿や性格よりも強さに興味を持っているからな。死人に興味ない女王なら普通に求婚するだろう」
メーベルとフィースは死んでしまった夫に興味を微塵も牛なしすぐに求婚する女王の男癖と性格に呆れていた。
「荒木は今まであってきた誰よりも強いですからね。当然ですね」
「あぁ、実力は間違いないな」
「実力はね」
「そうですね」
「うん」
全員荒木の実力に納得は持つものの、他者を気にせず振るわれるその力の使い方には心底あきれ果てていた。
「(確かにでも、私にとってはいい取引相手になりそう)」
メーヴィスも一応頷いたがみんなとは違いチャンスがあると思っていた。メーヴィスは仕事相手には良い相手になるかもしれないと考えていた。
「いつ帰ってくるかわからないが、戻って来なかったら何もせずこの冒険者クリスタルは冒険者ギルドにでも預けておけばいいか」
何もしなくても自動的に冒険者ランクは上がるだろうと、考えたフィースは個人的な報復も含めて、評価はしないことにした。
「そうね。女王に気に入られているのなら、女王が勝手に支援をするでしょうからね。もうあの国なら何やっても許されるわね」
メーベルは何もしなくてもトントン拍子で支援される荒木を皮肉った。
「そうだな。もう荒木くんとは組むことはないと思いたい」
フィースはますます厄介になりそうな荒木に今後も苦労させられるのだと思った。そして、荒木がいなくなり気が緩んでいるフィースは切実に組みたくない願いを口に出した。
「でも、遺跡以外でならいいんじゃない?」
メーベルは壊されても心配のない場所ならまだ協力できるかもしれないと少しながら思っていた。
「ダメだろ。荒木くんは何をしでかすかわからないからな」
散々荒木の行動を見てきたフィースは自分たちにとって都合の悪い行動をとる印象が強く残されていたため、すぐさまメーベルを否定した。
「私たちに危害を加える可能性とか色々あるかもしれないけど、使いようによっては便利でしょ」
メーベルは荒木を適切に使えば自分たちに都合のいい効果をもたらしてくれると思っていた。
「それに、別の依頼で組むとしたら、かなりの面倒ごとの時くらいだろうな」
「そうね。私たちとは目的が違いそうだから、組む機会も少ないわね」
フィースとメーベルは荒木と会う機会が少ないと予想し、気軽に考えることにした。
「まぁ、何はともあれ、もう遺跡が荒らされることもなく平穏に遺跡を調査出来るから、いいか」
結果的に厄介者を帰らせることに成功したフィースはそれだけで満足だった。
「そうね。これで気を負わずに遺跡を調査出来るわね」
「はい。私も頑張ります」
そして、レノールも二人に続くように気合を入れた。遺跡調査ができることに喜びを得ているフィース、メーベル、師匠に続くレノールの三人を他所に残されている二人は止めることにした。
「遺跡調査も重要ですが、その前に一回地上に戻った方が良くありませんか」
メーヴィスはいきなり消えた自分たちに上にいる他の冒険者が混乱している可能性を考えて、まずは安否を知らせた方が最善だと理解していた。
「ほんとにね(これじゃ、荒木と変わらないわね)」
孤立している自分たちの状況を無視して遺跡調査を再開しようとする三人の姿にジャネットは、呆れていた。
「流石に何日も戻らなくなるのはまずいわね」
「そうだな。はやる気持ちもあるが、指揮は取らないとまずいから一度戻ろう」
Sランク冒険者であるメーベルとフィースは後々の予定を冷静に考えた。そして、メーヴィスに言われたことを踏まえて、戻らないと後々面倒なことになるので戻ることに決めた。
「はい」
レノールは師匠であるフィースが命令を変えると迷いなく従った。
「心配されても困りますからね」
「(本当に戻ることは考えていなかったのね。それにメーヴィスは孤立していることには何の不安も持っていなかったのね。メーヴィスも異常ね)
案の定三人が遺跡調査をこのまま行おうとしていた事実にジャネットは唖然とした。さらに、メーヴィスもまたこの場に残ることに関しては大丈夫のような発言に暗殺者である自分だけが勇逸まともなのかもしれないと思ってしまっていた。
そして、5人は少し時間が経ってしまったが荒木に続くように帰路を歩んだ。
○荒木
荒木は来た道を走り、行きに作り出した大穴にいた。荒木は糸で作り出した大樹木の根元をかき分けてその中心に入った。
「やるか」
荒木は大きく天井に向かって拳を下げた。筋肉に力を入れている様子は見られないが、力を蓄えるとそのまま、拳を振り上げてアッパーを繰り出した。荒木が拳を振り上げると大樹木の根元部分を残し、荒木の頭上にあった大樹木は消え去り、さらに大樹木が支えていた水を含む土砂も無 くなり、綺麗な青空が見えていた。
「道は出来た。これで空を飛べるフィースたちも帰れるだろう。それに、来た道を開通させただけだから、怒られないだろう。うん」
先程の言葉をちゃんと聞いていた荒木はフィースとメーベルがどう思うかは分からなかったが、遺跡は壊していないと自分に言い聞かせて、納得するとすぐに考えを忘れ去れ、次の行動に移すことにした。
「よし。帰ろう」
荒木は腰を落とすと両足に力を入れて跳び上がった。荒木はそのまま巨大な大穴を一回の跳躍で越え、落下した場所に着地した。地上に戻ると他の冒険者たちが驚いたように荒木を見ていた。
「今の何?」
いきなり大穴にあった物が全て消えた現象にみんなはその元凶であるかもしれない本人に尋ねざるを得なかった。そのため、そこにいた冒険者のうち、一人の女冒険者が荒木に尋ねた。
当然の疑問か。確かこの冒険者たちはまだ俺の力を知らないはず。面倒だから何かとかこつけて、帰ろう。
「なんか爆発したんだよね」
下にいるフィースたち以外、力を知らないであろうと思った荒木は面倒ごとを避けるため、自然現象に見せることにした。
「なんか爆発?」
しかし、漠然とした説明ではよく分からなかった冒険者は詳しく聞くために、聞き返してきた。
なんとなくではダメか。ガスが爆発したことに使用。地下とかにガスが溜まるっていうのはありうる話だからな。
「そう。多分下にそういうものが溜まって爆発したんだよ」
荒木は地下にある何かが反応して爆発してしまったという、おおよそこの世界では理解できない概念で説明した。
「?」
しかし、そんなことは知らない冒険者たちは余計に分からなくなってしまうだけだった。
どうしたものか。ガスだまりとか言っても異世界にはそんな概念ないのか。なら直接的に説明しないといけないな。だまり…マグマだまり。火山の噴火なら知っているだろう。
「火山の噴火みたいなものだよ」
荒木は身近にある自然から連想でとっさに思い付いた火山を例えに出した。
「へー、詳しいのね」
荒木に何度も説明されても、ピンとこなかったのか冒険者たちは分からなかったが、専門知識と思われたので、分からなかったが、正しいと思いそのまま飲み込んだ。
「新人くん。他のみんなは?」
時間が経ってもSランク冒険者が戻って来ないことに気づいた冒険者が心配になってフィースたちのことを荒木に聞いた。
「無事だよ」
「そう。今はいないけど、いつ頃戻ってくるのかな?」
冒険者はフィースたちがどれくらいで帰ってくるかによって今後の全体の行動などを臨機応変に対応しようとしていた。
いつか。今最深部にいるからな。あの遺跡大好っ子の二人ならそのまま留まって遺跡を調査してしまう可能性があるから、正確な時間は分からないな。
「遺跡に没頭するかもしれないから分からないけど、みんな無事だから心配はいらないと思うよ」
荒木は時間が分からなかったので、期間を伝えずに確実に戻ってくることだけ伝え、戻ってくる時間を不確かなまま今後の行動を考えさせることにさせた。
「フィースさんたちが無事なら、最初の作戦通りに進めても、大丈夫そうね」
そして、冒険者たちは賛同し、最初にフィースが出した予定と変わらずに遺跡調査を続行するように決まった。
「で、君は何をしに来たの?」
冒険者はフィースたちと別行動で一人だけ地上に戻ってきている荒木が何の目的で別行動しているのか聞いた。
別に言っても問題のない、内容だから別に嘘は言わなくてもいいか。
「急用でエアスト帝国に戻らないといけないんですよ」
「そうなの。それは時間を取らせて失礼した」
冒険者は先ほどから、急ぎの用があるのにも関わらず少しばかりの時間をフィースたちの情報を聞き出すのに荒木を拘束してしまったことを素直に謝罪してくれた。
律儀だな。事実を言ったけど私利私欲の行動だから、そんなに謝罪されることではないけど、まぁ、嘘は言ってないし、いい方向に勘違いしてくれているからそのままにしておこう。
「いいですよ。それじゃ、残りの試験頑張ってください」
本当のことを言ってしまったら、引き留められて時間を取られそうだったので、荒木はそのまま残りの試験がある冒険者たちに応援を送り帰ることにした。
荒木に話を聞いた冒険者の一人は遺跡調査の本部となっている、場所へと報告しに向かって行っていた。
報告はちゃんとしているな。これなら帰ってもいいか。帰る前に捨ててはいいものだけど、荷物を持って帰るか。
荒木は一応帰ろうと思ったが必要のない見せかけだけの荷物を置いていたが、持って帰ることにした。荒木は置いていた荷物を取ろうとしたときにふとセシーのことを思い出いた。
そうだ。エアスト帝国にはセシーがいたな。この依頼が終わったら何か企んでいそうな雰囲気があったからな。
荒木はセシーが何か企んでいるのを感じ取っていた。
セシーは門番から俺を割り出せてしまうからな。不法侵入しないといけなさそうだ。
門番もセシーの息がかかっていると見た荒木は正規の方法では見つかるので今回はセシーに帰ったことを気付かれないように不法侵入で変えることにした。
それに、確かリクシーとレジーナは王城にいるからな。セシーと接触する可能性があるか。
荒木は王城でセシーと接してしまう可能性を考えた。
なら、リクシーとレジーナと会ったらすぐに行動できるようにここで準備を済ませた方が良さそうだ。
荒木は王城でセシーに会う可能性を少しでも減らすため、あまり人目がないこの場所で準備を始めることにした。荒木は服装を変更すため、糸で今着ている服を全てほどきつつ新しい服を作った。戦闘用に動きやすいように作られて服装から、上下黒色の忍者みたいな服を糸で作り出して着替えた。そして、その上から黒色のローブを羽織った。
よし、準備完了。帰るとしよう。
荒木は準備を整えるとすぐさまエアスト帝国に向けて走った。




