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巻き込み系異世界転移~世界や魔王なんて、どうでもいいから修行がしたい!~  作者: うるす
第一章 聖剣なんて押し付けて異世界に繰り出そう! 編
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第二話 庭と教育係のザル振るい

「そろそろ庭に行きますから、皆さんは私の後に付いてきてください」


 高久に促されるがまま、荒木たちは後を追って行った。先程から全く変わらない灰色の石でできている廊下を歩いているが、いまだに外の景色も見れずにいつ庭に着くのか荒木以外の皆が疑念を抱いていた。


「まだ着かないんですか」


 すると、まだ庭に着かないため、我慢できない生徒が一人不満を募らせていた。


「もう少しで外に出られます」


 高久は落ち着きながら静かに答えた。


 俺たちがいた部屋から外が遠い。あまりいいクラスではない分、部屋の利便性がないみたいだ。まぁ、必要とされていないから当然だな。


「ここから先がこの皇城の庭になります」


 高久は少し重厚感のある大きな門の前に立つと、その重そうな門を一人で押して開けた。


「すごい」


 女生徒の二人が普通ではない高久の力の使い方を見て驚いた。しかし、その二人と荒木以外の生徒は何がすごいのか分かってはいなかった。


 今のだけで力の使い方が分かるとは。あの二人は普通の人とは違うな。何かしらの武に関することを知っている。でも、見た感じそこまで強そうではないから、どこかの道場に通っている程度だろう。


 高久によって庭への扉が開かれると、城壁には囲まれていた。庭はかなりの広さの緑が広がっているためか、城壁による圧迫感をさほど感じなかった。


「大きい…」


 男子生徒がそうつぶやいた。他のみんなもあまりの広さの庭に驚いていた。荒木は辺り一面に広がる緑の庭よりも空を眺めていた。


 空が地球よりも高い。ちょっとこの世界の全体像でも拝んでみるか。


 荒木は再び白い四角い空間で使った天眼通を使いこの世界を見た。しかし、荒木の天眼通はこの異世界を全て捉えることはできかった。


 まさか。月までの範囲を満遍なく見渡せる俺の目でこの世界の一部分しか見渡せないとは。なら、少し時間が掛かるが視野を絞って距離を伸ばし見るしかないか。


 荒木は目に集中して天眼通を最長まで伸ばして今度は空ではなく地面を見た。


 集中すれば太陽の2倍先まで届く俺の目でもこの星の裏側を見れないとは。どれだけ大きい。この星は。取りあえず天眼通を使って何の成果もなしか。何か損した気分だから、他の場所の地表でも見てみるか。


 荒木はせっかく天眼通を使って何の成果もなかったら意味がないので、とりあえず視線を移動させて、他の場所を見た。


 荒木の目に映ったのは地中から海へ、海を見渡していくと陸地へ、森へと見渡していった。そして、そこには今までに見たことのない生物、草、鉱物などが見えた。


 凄いな。これは地球と違って趣味に関しては飽きが来なさそうな星だ。これだけ広いと、こんなところに拘束されているより、ここから抜け出して旅をした方が面白そうだ。選定の剣の面倒な役目も後輩に擦り付けたし、俺がいなくなっても問題なく解決するはずだ。なら、とっととこの城から出るか。


 すると、門の横にいた二人の兵士が高久の元に寄ってきた。


「高久さん準備は整っています」


 兵士たちが向いた視線の先には様々な種類の刃を潰していない武器が壁にずらりと立て掛けられていた。


「ありがとう」


 高久は兵士たちに礼を言った。兵士たちは仕事なのか再び門の横の定位置に戻り、見張りを始めた。


 何でこんな無意味なところに見張りがいるんだ。勝手に逃げ出さないようにかな? まぁ、深くは考えないでいいか。


「じゃ、みんなはこの中から好きな武器を選んでね」


「でもさっき修行はしないって…」


 高久が張り切って武器を選ぶようにみんなに指示をすると一人の女生徒が、話が違うと高久に抗議した。


「そうだよ。模擬戦なんてレクリエーションみたいなのもだから」


「…」


 女生徒はそれも訓練ではないのかと心の中で疑問に思っているが、異世界人の高久との価値観の違いに何も答えることが出来なかった。


 皆がどうしようかと迷っていると、二人の女生徒が色々な武器があるにも関わらずに真っ先に刀と薙刀を手に取った。


 あの二人は武術か武道を習っているせいか迷いがないな。俺も一応選んでおくか。


 荒木も女生徒に続き武器を取りに行くと、その後に続くように他の人たちも武器を選び始めた。そして、だいたいが剣を選び、男は数名が長い槍や斧などを頑張って持ち上げている者もいた。そんな中、荒木はまだ迷っていた。


 うーん。どれにしようかな。まぁ、一応全部の武器を達人並に使えるが、所詮達人並だからな。最近は糸術を遊び道具に使っている以上、糸に似ている誰も見向きをしなかった鎖鎌でも無難に使うか。


「選んだようだね。ここだと狭いからもちょっと広い庭の中央に行こうか」


 高久が庭の門の前から荒木たちを引き連れて庭の中央まで移動した。


「相手は私たち三人、皆同時に殺す気で斬りに来ていいよ」


 すると、高久の隣にいた陽川が模擬戦のルールを言うと背中の腰辺りに差していた棍棒を右手に持ち、光武は空中から槍を取り出し右手に持ち体を支えるようにして立ち、高久は左に差している刀を抜いた。


 俺は高久と戦えて嬉しいんだけど、何か流れるまま戦いになっているけど誰かしら文句とか付けないのかな。


 荒木は今更になってみんなが全く質問なり、文句を言なりを言っている姿を見なかったことを疑問に思っていたが、突如変わった空気に緊張しているのだろうと思い荒木もその流れに身を任せた。


 荒木以外の他の人たちは訳の分からないまま各々が武器を構えたが、誰も攻撃しようとしなかった。緊張感の中、武器選びすぐに武器を取った女生徒二人が前に出てきた。


「玖村流師範、玖村鉄花くむらてつか。では遠慮なく」


 玖村は刀の塚部分を左手で持ち、自己紹介と同時に刀身を抜き放った。玖村は柄を両手で持つと正面に構え、棍棒を持っている陽川に襲い掛かった。

 しかし、玖村の刀は陽川の棍棒によって軽く受け流された。


「古江流師範、古江刀花ふるえとうか。勝負」


 古江は薙刀を中段に構え、槍を構えている光武に一騎打ちを仕掛けた。槍対薙刀の戦いが始まった。


 師範か。やはりあの二人は武術を習っていたか。しかもあの程度で、人に教えられるレベルなのか。あの年では普通の才能の持ち主か。でも、実戦経験は乏しいから軽くあしらわれるだろうな。


 他のみんなはただその戦いを見ていることしかできていなかった。


「みんな攻撃してきていいよ」


 高久が指でこちらに攻撃してくるように指示をすると、みんなが状況に乗せられるがまま剣や斧などを振り回した。高久は余裕でそれらすべてを躱し、刀で受け流して防御をしていた。


 皆、武器の力の流し方とかが悪いけど、初めて持つから仕方ないか。俺は高久と一騎打ちがしたいから、みんなが倒れるまで他のみんなと同じレベルの動きをして、目立たないように鎖鎌を体に合わせていこうか。


 荒木は鎖鎌の鎌の反対側の鎖の先についている分銅を高久のお腹辺りに向かって一直線に飛ばした。高久はその分銅を軽く弾き躱した。荒木は弾かれた分銅を自分に当たらないように力を逃がして、手元に戻した。今度は鎌を高久の頭部付近に向かって投げ飛ばした。高久はその鎌を荒木に帰らないように配慮したのか横に弾いた。荒木はその鎌を引っ張り、手元に戻した。


 鎌も周りに配慮して弾いてる。優しいやつだ。


 それから、荒木はその行動を何度も繰り返した。数分が経ち、剣などの武器を振るって高久に軽くあしらわれていた他生徒たちは体力を消耗して力尽きていた。


 やっぱり、初めてだと武器の重さとかを考えていないから、無駄な動きをして体力のことを考えていないか。よくあることだから仕方ない。初めてにしては良く戦った方ではないな。才能はないか。


 荒木は高久の刀を見た。


 しかし、高久が使っているあの刀。たぶん、鉄製ではないよな。あれは何で出来ているんだろうな。今、言えることはあの刀が今持っている鉄の鎖鎌よりいい者なのは確かだな。


 荒木は他の二人を武器を体になじませている最中横目で見みることにした。



 玖村は勢いよく陽川に刀で切りかかっているが、高久程余裕を感じられないがその全てを棍棒で逸らしていた。玖村はまだまだ戦える様子だった。


 古江は光武と薙刀と槍の攻防を繰り広げていた。古江もまだまだ戦えるような表情だった。



 荒木が二人の様子を確認していると高久が急激に加速して、刀を振った。高久が刀を振った瞬間、血が噴き出し、皆の腕や足などの体の一部が斬り落とされた。


「イダイ…イダイよ」


「うわあぁぁぁー!」


「・・・」


 体の一部を切られた皆は泣いたり、叫んだり、気絶したりする人がいた。もう模擬戦への復帰は期待できない情けない状態だった。

 

 すると、その光景をみた庭の門の門番たちが着てそそくさと戦の邪魔にならないように現れた。門番たちは倒れている学生たちを緑の地面に赤い血をつけながら引きずり、安全なのか庭の門付近にまで連れて行った。


 なるほど、一人一人の力量を測るための振るい落としの攻撃か。俺には効かないけどね。鎌も十分馴染んだし、攻撃していくか。


「君は中々やるね。名前は?」


 荒木は最後に刀の斬撃が振り上げられていたので、その斬撃を鎌で受け止めていた。その、光景を見た高久は荒木が受け止めたこと評価して、荒木に興味を持ったのか名前を聞いてきた。


「荒木」


 荒木は自分の名前を言ったのと同時に刀を受け止めていた鎌を外して後ろに跳んで距離を取りつつ、分銅を高久の刀の手元に向かって正確に飛ばした。


 高久はその分銅付きの鎖を刀で弾いて躱した。


 他の生徒もいなくなって一対一になった事だし、そろそろ高久の本気を出させてもらうか。


 荒木は鎌の柄の部分と鎖部分を引きちぎり、鎌の部分を地面に突き刺して捨てた。

 鎖部分を体の中央に持って行き、中央で普通の円ではなく何重にも渦を巻くように回しながら一気に高久に近付き、遠心力を利用して分銅を高久の左肩に向かって、叩きつけるように振った。高久はそのまま鎖を両断しようと刀を上げて力いっぱい振り下ろした。荒木は鎖を引いて分銅の勢いを一気に殺して高久が振り下ろした刀に絡めるように鎖を巻き付た。荒木は鎖に力を入れ、鎖を刀に固定して左手でその刀の根元辺りを殴り刀の刃を破壊して一切使えない状態にした。


「何!? アダマンタイトを素手で?」


 高久は素手で自分の刀が折られたことに目を見開き驚きながらも、刀を破壊するほどの威力を持つ手は流石に当たるのは良くないと判断したのか荒木から一度距離を取った。


「本気を出してもらわないと面白くないからね。出してもらうよ」


 荒木はさらに高久に余裕を与えないために鎖を振り回し、上下左右から分銅で攻撃を仕掛けた。高久も躱しているが荒木はだんだん分銅のスピードを上げていき、高久を追い詰めていた。そして、高久が何もしてこないので、流石に飽きてきた荒木は止めを刺すため左足を軸足にしてその場で回転して遠心力を付けて、体に当たれば致命傷になる力強い分銅の一撃を放った。


「エタナ」


 高久は荒木の全ての攻撃を躱しながら、そう言葉にするとこの戦いを見つめていた青色の服を着ている少女がその場から光になり消え、高久の手の中にその光が集まると剣になった。


 やはり。高久の武器はエタナと言う剣か。しかも、珍しい。他の妖怪を変形させて武器にする術を持つ妖怪と戦った時以来だ。こういうタイプの妖怪はそこそこ強かったし、個性ある能力や戦い方をしていたからな楽しみだ。


 荒木は久々に正面切っての面白い戦いに心躍っていた。荒木は相手が本気を出してくれたと思い、ここからは真面目に戦うため、要らなくなった手にしていた鎖を高久に向かって投げ飛ばした。


「?」


 高久はなぜ武器を飛ばしてきたのか分からなかったので、頭に疑問符を浮かべて飛んできた鎖に向かって剣を振り下ろし、一気に無数に両断した。


 無駄に切る意味はあったのか? 高久の警戒のしすぎか。それとも俺に力を示そうとしてやっているのか。まぁ、どちらにしても戦いには関係はなさそうだからあまり考えなくてもいいか。


 荒木が攻撃しようかと考えている瞬間、高久の目の前に赤い球が現れた。


「おっ!」


 荒木は何か面白いことが起きるのではないかと思い期待に胸を膨らましていた。


 その赤い球はすぐに荒木に向かって飛んできたが、荒木は赤い球を見ると期待が薄れつつも体を捻り難なく躱した。


 何かと思ったら単なる火の球か。攻撃するならもっと威力とかある攻撃にして欲しかったんだけど、あの程度の威力なら生身で食らっても無傷だな。


 火の球を避けた荒木の姿を見ていた高久は何か頷いていた。何かを確認している様子だった。


 なるほど。二段階目の力の測定か。しかし、力の測定であの程度の威力とは、さっきの剣も折っているのだから、その程度の威力では効かないことくらいわかると思うんだけど。目はあまりよくないか。


「はぁ」


 荒木はあまりの威力の低さに見積もられたため溜息を吐き呆れていた。すると、高久は無数の火の球を出して、たくさんの火の球を飛ばしてきた。


 今度は連続か。今度も威力が低いが、さっきの火の球も躱してしまった分今更まともに受けるのも決まりが良くないから、躱すか。


 荒木は次々と飛んでくる火の球をさっきと似たように体を捻りながら最小限の動きで躱していたが、少し暇だったので、まだ疲れていなかった二人がどうなっているのかをこの攻撃が終わるまで見ることにした。



 玖村と古江の二人はまだ拮抗して戦っているが実戦経験がないせいか二人とも疲れが見えていた。


 玖村は刀で攻撃をしているが陽川の棍棒で刀を受け流され続けていた。そんな攻防戦の中陽川は一瞬だけ、後ろに引いた。玖村は陽川が後ろに引いたがそんなことはお構いなしに、何も考えずただひたすら攻め続けようとしていた。が、突如目の前に高久が荒木に向かって放った火の球が現れた。玖村は目の前に火の球が出てきた瞬間なんの躊躇もなくその火の球を刀で切り、火の球を消滅させた。


 陽川は驚きもせず、さらに玖村の周りに火の球を出現させて全方位から攻撃しようとした。

 

 玖村は再び刀を持ち上げて振り下ろし、火の球を切り裂いた。しかし、切り裂いたのは前方だけで、前方以外の火の球を切ることはできずに全部の火の球を食らってしまった。玖村は少し刀を地面に突き立ててその場に踏ん張ろうとしたがそのまま倒れた。


 陽川は玖村が倒れたのを確認した後、模擬戦の邪魔にならないように玖村を持ち上げて、庭の隅に連れて行った。陽川が火傷を負っている玖村に手を当てると薄色の緑色の光が光ると、見る見るうちに玖村が模擬戦で負った傷が消えて行った。


 あれが陽川の回復方法か。俺の気で回復させるよりも早くて便利だな。



 次は古江と光武の戦いを見た。


 古江と光武はいまだ薙刀と槍の付き合い繰り広げていたが、古江がこの攻防に我慢できなくなったのか。薙刀で槍を思いっきり弾き、強引に隙を作りその隙に薙刀を後ろに引き全力で古い相手を両断しようとした。


「いいね。でも時間だね」


 光武はそういうとすぐに高久や陽川と同じように古江の目の間に火の球を出した。古江はそのまま火の球を切り裂き、体の左側に流れた薙刀をすぐに戻し、光武を薙ごうとすると光武は槍でその薙ぎを阻止すると同時に古江の周りに火の球を出現させた。


 古江は玖村がやられていた光景を見ていたので、火の球が大体どこに来るのかを知っていた。そのため、すぐに薙刀の柄を長く持ち横に一回転させて振り回して、全ての火の球を消し去った。


 そして、再び火の球が現れ始めた。しかし、今度は薙刀でも相殺できないほどの大きさの火の球だった。古江は避けることも出来ないので、薙刀を振るい火の球を切り裂いたが、相殺仕切れずに火の球に飲み込まて、倒れた。


 古江もまた光武に引きずられて、庭の端に寄せられて陽川による回復を受けていた。


 結果、玖村と古江武術師範の二人は魔法の前に倒れた。



 普通の人は妖怪や魔女などの存在と戦ったことはないからこの手の攻撃で倒されるのは仕方ないか。


 荒木はやれやれと思った。

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