第三十二話 ツルカメ一千一万
荒木はレノールと他愛のない会話を続けて時間を潰していた時に黒色のローブで、つばが大きめの特徴のある黒色の帽子を被っていた。そして、肌は純白で水色の髪の毛に綺麗な顔を覗かせる女性が方向を変えて近付いてきた。
荒木は近付いてきている女性に気付いていたが、レノールと会話を続けた。
「いいね。いいね。お二人さん」
さっきからここで、色んな人に手当たり次第、色んな話を聞いている女性だ。手当たり次第適当に話を聞いているから、何が目的なのか分からないが、色んな情報を取っているのは確かだ。
「青色の冒険者クリスタルCCランクの冒険者ですね。お二人も遺跡調査のランク昇格試験で来たんですか?」
俺たちに話しかけてきた女性はふむふむと頷きながら何かを納得していた。
「そうですけど、あなたは誰ですか?」
レノールは突然話しかけてきた女性に心当たりはなかった。レノールは荒木の知り合いかと思い顔を荒木に向けた。
「俺の知り合いじゃない」
「じゃ、誰?」
レノールは友達のように話しかけてきたよくわからない女性に対して当然のように疑問に思っていた。
「私はメーヴィス。二人と同じCCランクの冒険者です。私も今回の昇格試験受けました。私は魔法が得意だから援護とか任せてください。私はー…」
メーヴィスは愛想よく笑顔で、自己紹介を勝手に始めた。
レノールと話しているときに、他の人たちにも似たような自己紹介していたな。もう何回も聞いているから、つまらないし適当に話を切り裂いて省略させよう。
「さっきから、他の人にも話しかけていたよね」
荒木は自己紹介がつまらなかったので話を遮り、同じ話を聞いていたことが分かるように言った。
「見てたんだね。関係ないけどー…」
「いつ、見てたのよ」
レノールは先ほどと荒木と会話していたが、そんな素振りを見た覚えがなかった。レノールは話を聞いていなかった事実に少し怒った。
「私はイクイセン種、先程も言ったように魔法は得意だから支援と後方からの攻撃は任せて。それでー…」
メーヴィスはめげずに再び自分を紹介し始めた。
「イクイセン種って何?」
聞いたことのない知らない種族の名前を聞き、疑問に思ったレノールは名前も聞いたのでどうでもいい自己紹介を遮り聞き返した。
「エルフは千年、イクイセンは万年生きるで、おなじみの種族ですよ。知りません?」
「そんなことわざみたいなの知らないわよ」
「有名ではないからな」
荒木は知っているかのような素振りを見せた。
イクイセン種か。確か。王国の本に少しだけ記載されていたな。名前すらも情報がないレノールのオクリタ種よりは有名みたいだな。ということは、希少性の高いレノールの種族は言わないほうがいいか。
「あなたは知っているのね」
レノールが最近召喚されたばかりの異世界人である荒木がこの世界の有名ではない情報をこんなにも早く入手していることに驚き呆れていた。
「もちろん」
「はぁ」
レノールは自分が呆れているのを気付きながら飄々としている荒木の姿を見て、再びため息がでた。
「? で、あなた達は?」
荒木について何も知らないメーヴィスは荒木とレノールとの会話を不思議に思った。気にはなったが、荒木たちのことも知りたかったので、そのまま続けた。
「聞くのか?」
「名前を覚えておくと、印象がいいですからね」
「情報は大事だからな」
「そうです」
荒木が補足気味に言うとメーヴィスも頷きながら「よく言った」っと言わんばかりに同意した。
なるほど。それを理解していて、情報を引き出そうとしているのか。
「お二人の名前も教えていただけますか?」
「私はレノール。メーヴィスの言った通りCCランクの冒険者よ。よくわからないけど、よろしく」
レノールはメーヴィスのことについて、不思議な人だなと思った。しかし、レノールはメーヴィスが同じ冒険者だったので、これから仕事などを手伝うことになるかもしれないと思い、素直な口とともに自己紹介をした。
普通だな。なんか面白そうだし、暇つぶしになるから適当に嘘の名前を言ってみよう。
「俺はアレク。一応よろしく」
荒木はレノールが素直に軽い自己紹介をする中平然と適当な偽名を口に出した。
「よろしくです。で、一応聞きたいんですが…」
メーヴィスは二人の名前を聞くと早速、次に聞きたいことを聞こうとしたとき、突然嘘のついた荒木に対して驚きの声が横から聞こえた。
「え? アレク?」
「どうしたんですか?」
話を中断させるほど、大きく驚いたレノールに何事かと思いメーヴィスはレノールを見た。
まぁ、俺の名前を知っているレノールが食いつくよね。
荒木はレノールが予定通りの行動をとり、疑問のまなざしを向けてきたが、当然のような顔をしていた。
「あなたの名前は荒木じゃ無いの?」
荒木が自分の名前はアレクですよ? みたいな顔をしているのを見るとその名前が本当の名前だと感じたレノールは真実を知ろうとした。
「荒木だけど…」
「何で嘘ついたのよ」
突然訳も分からず平然と嘘をついていた荒木に信じられないという顔で見つめた。
困ったな。予定通りメーヴィスじゃなくて、どうでもいいレノールが食いついてきたか。少しは面白いしいいか。
荒木はほんの少しだけ暇つぶしが出来ていたので、結果満足できるとして良しとした。
「嘘をついてたんですか?」
メーヴィスはそんなに驚いて様子も嫌な様子も何も示さず一定の感情だった。
「嘘の情報を教えたらメーヴィスがどう反応するのか見たくて」
荒木は笑いながらふざけた感じを出した。
何にも感じていいない表情だな。ということは俺が分かっていることに気づいていないのか?
「初対面の人にそういう態度は失礼だと思うけど」
「平気、平気」
嘘をつかれた当事者ではなくて荒木がレノールの質問に、砕けた態度で問題ないと断言した。
メーヴィスだってそう思っているだろうからな。
「何で荒木が答えるのよ」
レノールは急に失礼な態度を取り始めた荒木に良く分からないと呆れながら注意した。
「別に良くない?」
荒木は当事者であるメーヴィスなどよそにレノールに向けていった。
「私や荒木が良くてもメーヴィスさんが良くないでしょ」
「私は平気ですよ」
メーヴィスは自分がぞんざいに扱われているのは分かっていたが、その対応にだいぶ慣れているようだった。
「メーヴィスさん嫌なことははっきり言わないと、荒木が態度を変えることなんてありえないと思いますよ」
レノールはここ最近の付き合いから荒木に対してどう接したらいいのかだいぶ感を掴んできていた。
「そんなことはないよ」
「事実でしょ」
「へぇ、荒木さんって話を聞いてくれないタイプなんですね」
メーヴィスは荒木の顔を覗き込んで情報が本当かどうかを、その表情から読み取ろうとしていた。
リクシーと似たような表情だな。隠し切れていないのか。
荒木はリクシーの顔を思い浮かべメーヴィスの顔を比較して頷いた。
「そうです」
レノールはメーヴィスが出した荒木の解析に頷いて同意した
やけにあっさりと頷いたな。なんかレノールにとって俺って随分と人の話を聞かない嫌な奴と思われているんだな。でも、俺はちゃんと人の話は聞くからな。その印象は間違っている。そこは否定して置かないと。
「違うよ。俺はそんな嫌な奴じゃないし、人の話は聞いているよ」
話がさらに悪化していくと思っていた荒木だったが、何となく聞き捨てならなかったので、メーヴィスにもちゃんと聞こえるような大きさの声量で否定することにした。
「散々なことをしておいて、どの口が言っているの? 私は実際にその光景を見ているのよ」
レノールはダンジョンに強引に連れていかれた散々な記憶を思い出して、事実とは全然違うことが分かり切っているのに嘘をついている荒木に文句を垂らした。
「俺なんかしたっけ?」
しかし、荒木はレノールの文句に対して、過去を振り返ってみたが、一切身に覚えがあるようなものがなかったので、不思議に思っていた。そのため、冗談交じりだったが、半分本気で聞いていた。
本当に何かしたっけ?
「覚えてないの? 呆れた」
「覚えていないというより、そんなことをした身に覚えがないんだけど」
「犯人である加害者は気付かないのね」
レノールは加害者が覚えていないのは良くあることだと言いながら、荒木に対してわざとらしく大きめに呆れていた。どうやら荒木を挑発しているようだった。
「で、具体的には?」
「あの3人に酷い調教を行ったでしょ」
3人をエヴァンジェリアの護衛にするための訓練のことを言っているのかな? でもいつだ?
荒木は本当に思い当たる節がなかったので、思い返してみることにした。
いやあの3人で、それらしいことをしたのはダンジョンの移動中か? まぁ、揺れを耐えるには技術が必要になるからな。だけど、調教と呼べるほどの行為は異世界に来て一度もやってないからな。何も間違っていない、逆に好意としてやってるからな。ここは真実を言おう。
「言い方が悪いな。あれはみんなに強くなってもらうための好意でやったことだから」
荒木は考えに考えた末、みんなのために必要な行為だということにした。
「はっ、あの訓練が簡単? 荒木の頭はおかしいんじゃないの?」
「ひどいな。アレくらいは訓練の内にも入らないよ」
まぁ、準備段階だからな。訓練とは何にも関係ないからな。
「あのお二人が話している3人とは誰のことなんですか」
すると、過去の話をされて会話に入れなかったメーヴィスが良く分からない登場人物3人のことが気になったのか聞いてきた。
「荒木の奴隷のことだよ」
レノールが蚊帳の外にされているメーヴィスのことを思い、すぐに3人について話した。
軽く話すな。まぁ、いいんだけどね。
荒木は軽く3人のことを話してしまったレノールに思うところがあったが、それで問題が起こっても問題はなかったので、そのまま流した。
「その3人の方は今いないんですか?」
「確かに」
メーヴィスが3人の顔を見たかったのか尋ねるとレノールも便乗した。そして、当然二人は荒木の顔を見た。荒木は他の場所を見て聞いていないような感じを出していた。
「あっ、俺に聞いてるの?」
「はい」
「あなた以外に誰がいるのよ」
荒木がちょっとした悪戯で分かったうえで無視するとメーヴィスは普通に聞き返したが、レノールは突っ込んでくれた。
「今日は休みで知り合いに預けてる」
「奴隷に休みをあたえてるの?」
「そうだけど」
「へぇー、意外。簡単に使い潰さないんだ」
レノールは意外感を露わにした。
レノールは何でもとも子もないことを言っているんだ? 普通に十分に休ませないと使い物にならなくなるのは分かると思うんだけど。気づいてないのかな?
「使い物にならなくなったら意味がないし、それくらい俺も分かってるよ」
3人を使い潰すことじたいは否定せずに寧ろ、それを分かったうえでレノールを肯定していた。
「そこまで計算してるんだ」
レノールは奴隷をしっかりと使い潰していこうとしている荒木の発言を聞いて、3人への同情しつつ、荒木を冷たい眼差し見つめた。
「荒木さんの奴隷を見る機会があれば見せていただきたいですね」
「見たいの?」
荒木ではなくレノールがメーヴィスに答えた。
「今後奴隷を購入するのかもしれませんからその参考にでもしようと思いまして」
メーヴィスは同じ冒険者の荒木がどういった奴隷を持っているのかを参考にするつもりで、興味を持ったみたいだった。
「なるほど。でもメーヴィスさんは普通の人そうだからそんなに荒木と関わらない方がいいかもしれないよ」
レノールはメーヴィスに世話を焼いてあげようとしているようで優しい忠告のように言った。
「何で?」
「どうしてですか?」
荒木もレノールが自分を嫌っている理由が気になった。当然メーヴィスも疑問を持った。
「普通に肉体的に持たないと思うからね」
「一緒にいると疲れるということですか?」
「うん。色々とね」
「色々ととは夜のことですか」
色々と聞いて勘違いしたメーヴィスは男女の関係と勘違いしているようだった。
「え、違う。違う。普通の生活でよ」
「普通の生活でですか?」
荒木の普通の生活を知らないメーヴィスはレノールに聞き返して、知るしかなかった。
「うん。この可愛い見た目で身体能力が高いからね。行動を一緒にするのは良くないし、見ての通り頭も良く分からないから、苦労するからね」
レノールは荒木を見ながら名前を出さずにメーヴィスになぜ疲れるのかを説明してあげた。
「誰だ。そんなひどい奴は」
荒木は自分がどんなにひどいやつかレノールが説明しているのを、何も言わずに見ていたが、自分の名前が出なかったので、ちょっと誤魔化して遊んでみた。
「あなたよ」
「また俺のことか」
「またも何もずーっと、あなたのこと話しているの分かるわよね」
荒木が何度も繰り返している好意にレノールはいい加減止めて欲しいのか、気合を入れて怒ってきた。
「レノールさんの言いたいことはわかりました。後は同じ冒険者としてアドバイスか何か聞かせてもらいませんか?」
メーヴィスはレノールが荒木に相当苦労させられているのだろうと思い、レノールの助言を聞き受けた。そんな助言をしてくれたレノールに流れで冒険者の助言も聞いた。
「じゃ、俺が言ってあげよう」
荒木はレノールが聞かれているのにも関わらずここで会話に割り込んだ。
「えぇ、アドバイスをお願いします」
「何を言うの? 言うなら早く言って」
レノールは荒木がまた何か余計なことを言うのではないかと思った。しかし、止めることは出来ないので、早く余計なことを言わせることにしていた。
「情報を探るならもうちょっとスマートにやろうね」
荒木はここにきてメーヴィスが行っている行為がお粗末すぎることを指摘してあげた。
「どうゆうこと?」
荒木との会話に夢中でメーヴィスの行動を含めて周りの行動を何一つ知っていなかった。レノールは当然荒木が言っていることが理解できていなかった。
「メーヴィスって、手当たり次第に情報を聞き出すだけ聞き出しているからね。その情報をどうしているのか疑わしくなっているほどに」
荒木はメーヴィスがいる前でレノールにメーヴィスが先ほどからやっている情報収集の手口を教えてあげた。
「えっ、そうなの?」
荒木の簡易的な説明だけでは何も分かっていないレノールはただ首を傾げながらメーヴィスを見た。
「ち、違いますよ。誤解を与えるような言い方は止めてくださいよ。荒木さん。私はただ単純に一緒に仕事をするかもしれない人の情報を知りたいだけですよ」
メーヴィスは荒木の言葉を理解したため、すぐにまだ気づいていないレノールに向かって苦し紛れの言い訳をし始めた。
やはり、情報が欲しいのか。手あたり次第頑張っているということは、駆け出しの情報屋といったところか。駆け出しの感じから見ると俺にとってはどうでもいいんだけど、レノールに判断を任せてみるか。
「情報ギルドが存在するくらいだ。その情報は金儲けにも使えるからな」
荒木はレノールにどうにかしてもらうために、メーヴィスが好意的な意見を述べていたので、逆に情報屋ギルドの目的部分をレノールに伝えた。
「私は本当に唯々知りたいだけですよ」
「うーん。同じチームになって協力することになったら話すね」
レノールは荒木の言葉によってだんだん疑わしく見えてきたメーヴィスのことが怪しくなってきた。レノールは情報を話すことをその場の流れと勘によって、止めることにした。
「そこまで警戒されては仕方ありません。また今度の機会に聞きます。それではさようなら」
メーヴィスはあっさりと引き下がり、がっかりしながら二人の元を去っていった。
「可哀想なことしちゃったかな」
レノールは自分達から離れているメーヴィスの悲壮感漂う背中を見て同情しそうになり、声を掛けようとした。しかし、レノールが声を掛ける前にメーヴィスは離れていた。
そして、数秒後二人の目の前で、他の人に向かって愛想いい笑顔で自己紹介を始めて情報収集している姿が目に入り込んできた。
「…そうでもないみたいね」
「だろうな」
先ほどから他の人に対しても、あの感じだ。断られていることに慣れているは自然だろう。悪い子ではないのは雰囲気から分かるが、今のところ勇者の件があるから俺の情報を広められると面倒なことになる。
「さっきの余計な行動は演技だったのね」
レノールが荒木に弄ばれに弄ばれていたことを知り、ただ荒木を見るだけの抵抗をとることしか出来なかった。
「もちろん」
荒木は良い暇つぶしにすることが出来たので、機嫌よくなった。




