第三十一話 レノールは暇つぶし
荒木はレノールを見つけた。荒木はレノールで暇を潰すため、一緒に南門に向かっていた。荒木は奴隷3人をセシーに預けたので、レノールと二人になっていた。
「もしかして、私にもあの奴隷3人みたいな扱いをするの?」
荒木と二人きりになってしまったレノールは3人と同じ状況になっているのかもしれないと思っていた。聞かれた荒木はレノールの体を上から下まで一旦見た。
やっぱり、まだ基準以下だな。制約のある奴隷でもないし、そんな無理させても強くなるとは思えないか。今のところは見込みないな。
「まだ、見込みもないし、しないよ」
「見込みがないの?」
「戦闘面では3人よりも弱いだろう?」
「確かに」
レノールは3人との自分の実力差を理解していた。レノールは荒木が思っていることに納得した。
師匠にしっかりと教育されているみたいだな。
荒木はジャネットと比較して、レノールが出来ている子だと思ってしまった。
「ここで待てばいいみたいだな」
荒木は遺跡調査に向かいそうな格好をしている感じの人たちが集まっていると思われた。荒木はここが集合場所だと思い、その場に留まることにした。
「あの馬車が遺跡調査の部隊みたい」
荒木の前には数台の鹿みたいな魔物が2匹で引く馬車があり、数人の冒険者と思われる人が見張りをしていた。
「だろうな」
レノールが言わなくとも荒木も他の人でも見分けることが容易にできるほど明らかだった。
別に調査だから隠す必要は無いか。
荒木は昨日から隠蔽性が気になってしまったが、必要はなかった。
「集まってませんね」
「念のため早めに来たからな。気長に待つしかない」
「そうね」
「あっ、そうだ。これでも食べて待つか」
退屈だった荒木はダンジョンで戦闘中に食べていた味のしない棒状の食べ物を2本取り出して、1本をレノールに分けようとした。
「出来ることなら食べたく無いよね」
しかし、レノールにはすこぶる評判は悪いようだった。
「そうだよね」
俺みたいに修行のために日頃から率先して、まずいものを食べる馬鹿はいないよな。
レノールは当然のように断ったが荒木も当然不味く作っているので、同じように思っていた。
「不味いのを分かってて、よく食べるわね」
「それも、修行の内だからな」
「その修行に何の意味があるの?」
レノールにはこんな誰にも得のない無意味そうな食べ物を食べる修行にどんなメリットがあるのかどうか理解できなかった。
理解はされないか。まぁ、暇だし、答えて上げよう。
「他にも理由があるけど、一番は普通の食べ物よりも圧倒的に栄養があるから体作りにはもってこいだからだよ」
「でも、それを他の人に上げなくてもよくない?」
実際に迷惑を被ったレノールは出来ることなら食べたくはなかった。
「いや、最近忙しくてこれしか食べ物を作ってないからな」
「他の料理も作れるの?」
レノールは荒木が不味い料理以外の他の料理も作れることに意外感を示した。
普通にこの不味い料理も作れるんだから、他の料理も作れるだろうと思うんだけど。
「もちろん。普通においしい料理も作れるよ」
「じゃ、何で私たちにおいしい料理を出してくれないの?」
レノールはおいしい料理を作れるのにも関わらず荒木が不味い料理を出してきた理由が分からず気になっていた。
「時間もないし、俺の主食だからだし、栄養も取れるから、俺は好きだけどね」
味は不味いけど栄養を考えれば、俺の作る料理では完璧な食べ物なんだけど。共感はされないか。
荒木は自分でも不味いと思っている食べ物だったが良く出来ている食べ物だったので、気に入っていっていた。
「別に味が良くて体に良い物を作ればいいじゃないの?」
レノールは料理を作るのが上手ならば体にも良くて惜しいものを作れるのは当然だと思っていた。
「不味い食べ物を食べ続けるのもまたポイントだからね。それに完璧な食べ物が出来てしまった以上、普段おいしい料理を作る意味も食べる意味もないからな」
「つまり、これからも一緒にいるあの3人はこれからもあれを食べることになるのか」
荒木の奴隷でありしばらく一緒になるであろう3人がこの辛い食べ物を食べ続ける未来を考えて大変そうだと思った。
「でも、二人には多少評判はいいみたいだから、問題はないだろう」
そいえば、エヴァンジェリアに至ってはかなりおいしそうに食べていたな。レノールは知らないから言わなくてもいいか。
荒木はレノールにはエヴァンジェリアの話をしても意味はないと思ったので、レノールの知っている範囲だけに留めた。
「あの時は驚いたけど、エルフは薄味のほうが好みだったんだね」
「だから、大変なのは俺とリクシーだけだな」
荒木は正直に自分も含めて苦労すると思われる人物を上げた。
俺は慣れているから大丈夫だけど、これから俺の料理を食べていく以上リクシーは苦労するだろうな。
荒木はリクシーが苦労することを内心どうでもいいように思い、リクシーが大変だからといって何かを変える気は一切なかった。
「自分も入れちゃうのね」
レノールは皮肉で自分も不味いと思っているうちの一人に入れいている荒木に呆れた。
「当たり前だよ。そういう風に作っているんだから」
「美味しくても大丈夫だと思うけど?」
「味のないものを食べていれば、感覚も研ぎ澄まされるし、それに精神も鍛えられるからな。持ってこいの完璧な修行食だ!」
荒木は何の悪気もなく美味しくない方が良い修行になるので、助言を兼ねて実際に感じている成果をレノールに自信満々で伝えてあげた。
「それはいいんだけど、自分たちだけでやってよね」
レノールは不味い料理をあの3人には良いが自分に食べさせないで欲しいと思っていた。
あくまでも不味い料理は食べたく無いのか。
「いや、強くなれるからいいじゃん。それとも、レノールは強くなりたくないのかな?」
荒木は食べれば有用なのが確実だと思っているので、少しは分かってほしかったので、レノールを軽く挑発してみた。
「そうかも知れないけどね。食事は美味しく食べたい」
「修行の基本は食事からって知らない?」
「何それ。知らないわよ」
レノールは全く知らない様子だった。
知らないか。軽く説明すれば分かってくれそうだな。
「レノールだって、食べ物を食べなければ死んでしまうだろう。つまり、命にも係わるほど食べ物が重要だってことだよ」
荒木は食事が命にも直結することで、食事が重要だということをレノールに分からせようとしてみた。
「確かにそうなんだけど。やっぱり、美味しく食べられれば良くない?」
熱心に話した荒木の説明もむなしくレノールは荒木の思う食事の重要性に気付くことはなかった。
「まぁ、普通の人はね。でも、強くなりたい人なら、こういったものを毎日意識して食べたほうがいいよ」
「うーん」
しかし、レノールには荒木の言葉は届かなかったようだ。
「そうか」
説明しても、一向に納得のいかないレノールの姿を見て、荒木は諦めた。
レノールは強くはなりたくないのかな? でも、冒険者のランクを上げていくのだから、やはり、強くなりたいと思っているはずなんだけどな。あの料理を食べ続ければ強くなれるんだけど、この程度では気付けないのか?
荒木はこの食事をし続ければ、強くなれると自負していた。レノールが荒木の思っていることを最後まで気づくことが出来なかった。荒木はレノールが強くなる予定はないのだと評価した。
「まぁ、でも、俺といるときに食事を用意していなかったらこれを食べることになるだけだからな」
「大丈夫。準備は出来てるし、訳の分からない危ないところに連れていかれるわけでもないからね」
レノールは自分の持っているカバンを持ち上げてそこに食糧が入っていることを示した。今回の依頼が危険そうではないのでその出番はないと自信を持っていた。
「しっかりと準備してきているか」
良い保存食を知っているということか。数日以上遠出する人が多いい世界だ。保存食が発達しているのは当然か。
荒木はレノールの言葉からこの世界には保存食でも美味しいものがあるということを理解した。レノールは事前に用意しているのだと思った。
「もちろん。自分の力を見極められる大事な昇格試験だからね。荷物もちゃんと持ってきてるよ」
レノールは遺跡調査に向かう道中の荷造りなども評価されるかもしれないと考えていたので、抜かりのないように準備を整えてきていた。
「試験だからな。準備もチェックされるだろうな」
厳しい試験ならそこも評価に含まれている可能性は高いだろうな。荷物を準備していない人はその時点で落とされそうだ。
荒木はレノールの考えに納得がいっていた。
「抜かりはないわよ」
レノールはどこからでもかかってこいと言わんばかりに臨戦態勢になって、昇格試験を望む体制を整えていた。
「まぁ、張り切っていきなよ」
そんなレノールの姿を見て荒木は他人事のようにレノールのやる気を後押ししてあげた。
「うん。頑張る」
荒木の言葉を一応、応援だと受け取ってくれたレノールは頷いてくれた。
まぁ、レノールはいいとして、俺はどうしようかな。俺は別の空間にしまうことが出来るから手ぶらでもいいんだが、念のため準備はしておこうか。
荒木は荷物を気の世界から取り出すかどうか迷った。他の人にも説明するのは手間になるかもしれないのと、不安もあり、気の世界から装備を一式取り出すことにした。
「別に出さなくてもいいんじゃないの?」
荒木が遺跡調査に行くための服装を気の世界から装備を取り出している姿を見たレノールは荒木が空間に物を収納できると知っているので、別にそのままでも問題ないと助言してきてくれていた。
「不安だから、一応持っておいた方が面倒にならなさそうだからな」
荒木はみんなと似ているような今着ているローブと同じ色のリュックを気の世界から取り出して背負った。
「やっぱり、ローブと同じ色なのね」
面倒の一言からレノールは大体色を統一して来るであろうと察していた。
「目立ちにくいからな」
荒木はレノールと話しながらもリュックに細々とした装備を気の世界から取り出していき、リュックの脇などに小物を付けていった。
「それなに?」
レノールは荒木の装備に興味を持ったようだった。レノールは顔を近づけた。レノールは荒木が説明してくれるだろうと思っていた。
服の裏以外はカモフラージュ用の装備だから。話してもいいか。まぁ、秘密にしないといけないことはほとんどないんだけど。そのことはレノールにいう必要はない。
荒木は色々言っていないことはたくさんあるがどれもレノールに言う必要は皆無に等しいほどなかった。
「何も付けていないリュックは不自然だろうから、さらに目立たなくするための小物類だな」
「この鍋は何で出来てるの?」
レノールは色々な素材の材質などに興味を惹かれているようだった。
「普通に素材は鉄だけど」
「へぇ。綺麗ね。どこで買ったの?」
レノールは日の光によって輝きを綺麗に放っているように見える鍋を指していった。レノールも同じようなものを買おうとしていた。
なるほど。俺の持っている装備類がレノールの目に留まったわけか。しかし、これが綺麗か。
「これは俺が作った物だから、どこを探してもないよ」
荒木は自分で作っているので買うことは出来ないことをレノールに伝えた。
食べ物以外は暇つぶしの趣味で作っていたが、最近は案外退屈していないから作れていないな。
荒木はここ最近暇らしい暇がないことに嬉しくなりながら、昔趣味で作っていたものを思い出していた。
「自分で作ってるの?」
「暇なときに趣味でね」
退屈しのぎの趣味。懐かしく感じるな。
荒木は百年前くらいの記憶を懐かしむかのように思い出していた。
しかし、在庫が山のようにあるから。一つくらいレノールにあげてもいいか。
「欲しいなら上げるけど」
荒木は在庫が山のようにあったのと、特にいるようなものでもなかったので気軽にあげることにした。
「いいの?」
「いいよ。鍋はたくさんあるからな」
荒木は気の世界にある在庫から、作った順番の最初の方の鍋を取り出して渡した。
「ありがとう」
「初期に作った物だから出来は良くないけどな」
「こんなに綺麗なのに出来が良くないの?」
レノールは受けっとったばかりの新品同様の鍋をまじまじと見つめていた。
確かにこの世界では良さそうに見えるな。まぁ、これを基準にしても俺が作った際椎の鍋には遠く及ばないからな。出来は良くないな。
「出来のいい鍋は見た目、耐久度、熱の伝わり方、使い勝手全てにおいて、いいからな」
「そうなんだ。私はこれで十分いいと思うけど」
「なら、よかった」
「そのスコップも良さそうね」
レノールは鍋をもらえると他にも何か良い物をもらえるかもしれないと、思い次に付けている小さめのスコップに目を付けた。
これからダンジョンに行くことを忘れていないかな?
「いいけど、このままだと重くなるよ」
荒木はレノールがダンジョンに行くことを忘れていると思った。荒木はレノールに思い出させるために、重量のことを指摘してあげた。
「確かにそうね」
レノールは荷物が多くなると、動くのも大変になることを理化できていたので、素直に貰うのを止めた。
「じゃ、依頼が終わった後では?」
レノールは良い物を手にできる隙を逃したくなかったのか、予約をしてきた。
まぁ、入らないものが多いいからあげてもいいか。
「時間があればね」
荒木は大量に余った在庫を使う機会もないので、他の物も後であげることにした。
そして、黒いローブを着ている女性がこちらに向かってきているのを荒木は捉えていた。




