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巻き込み系異世界転移~世界や魔王なんて、どうでもいいから修行がしたい!~  作者: うるす
第一章 聖剣なんて押し付けて異世界に繰り出そう! 編
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第一話 王城と聖剣と教育係

 荒木はみんなと同じ体制で目を動かし周りを確認すると、何かしらの絵が描かれている大きなステンドグラスから少しの光が入り込んでいた。辺り一面は灰色の壁に囲まれた大きな空間の部屋になっていた。この大部屋には必要最低限の松明で明かりを取っているが窓からも少しの光しか入って来ていないので、薄暗い空間になっており印象は良くなかった。そして、この空間には大勢の白いローブを着た人たちが全員を取り囲んでいた。


 やっと着いたが周りに人が見ているから、一番先に起きることは避けた方がいいか。なぜ俺だけが起きているのか疑問に思われるかもしれないからな。動けないが危険になったら動けばいいだけだからな。


 荒木は細目を開けてさらにあたりの様子を見回すと下には何かの線が書かれていた。さらに見てみると中央に階段がありその先に一人の王冠を被っている白いドレス姿の女性が立っていた。その女性は何かを待っている様子だった。


 この下に掛かれている魔法陣がたぶんあの瞬間移動の正体だな。そして、この白いローブたちが何かしらの力注いで発動させたのだろう。みんな俺たちに何もしてこないということは俺たちが起きるのを待っているのか。なら、みんなが起きてから俺も起きるか。


 それにしても、あの正面の女性は王冠を被っているから偉い人なのは分かるが、あんなに目立って恥ずかしくないのかな。


 そして、数分が経つと少しずつ床に倒れていた全員が続々と起き始めてきた。


「え?」


「何が起きたの?」


「ここは?」


 皆は起きると起きた瞬間頭に? マークを浮かべてから辺りを見回し、何が起こっているのか探っている人や、冷静に分析する人などみんな様々な反応をして驚いていた。そんな中、荒木も皆が起き始めると半分くらいの人数が起きた時にそれに乗じて、自然に起きた感じで立ちあがった。


「異世界人の皆さん。ようこそマドラスフィ大帝国へ。私はマドラスフィ大帝国の第三皇女おうじょアンドレア・アドリントンです」


 しばらく、みんながガヤガヤしていると、階段の上に立っている皇女が前に出てきて大きな声でみんなに聞こえるように言った。女生徒たちやラノベやアニメなど異世界系の知識を知らない人たちは「何を言っているんだ! このお姫様は!」という表情で見ていたが、こういう話を知っている人一部の女性たちや男は「本物の異世界だー!」と喜んでいた。


 異世界か。この人たちが異世界から俺たちを瞬間移動させた技を掛けたのは分かったがこ、れから先どうすればいいのかな。地球にある地獄などの異界に召喚するとかは聞いたことも行ったこともあるが、異世界に召喚するなんて噂を聞いたこともないからな。噂がないということは戻った人が居なく、行った切りの可能性が高いな。正攻法で戻ることは諦めたほうがよさそうかもしれない。なら、この世界を楽しむしかないか。


 荒木は少し楽しそうにしながら、どう事が運ぶのかを暢気に眺めていた。


「異世界人の皆様をお呼びしたのは魔王を倒してもらいたいのです。そして、あなた方の中に魔王を倒すためのカギとなる勇者を探しています。私の後ろにあるこの聖剣を握ってみてください。反応があれば魔王を倒すカギとなる者になります。その聖剣を抜けばその人が勇者です。皆さん並んで一人ずつ聖剣に触れて行ってください。聖剣を触れ終わった後はその後ろに言う魔法使いの皆さんに一人ずつ並んでステータスを見てもらってください」


 皇女様の説明を聞くと異世界ものなどの知識がある人たちは一気に乗り気になって聖剣に触れに行こうという気持ちになっていた。そういった異世界の知識がない人たちはどうしたらいいのか迷っていた。しかし、皇女様の奥から剣を持った戦士みたいな女性たちが現れると、ここに来ている数百名の人たちを並べようとしていた。その姿を見た乗り気ではない人たちは多少委縮して、聖剣を触るための列に手早く並んで行った。

 荒木も成り行きに任せてその列に並んだ。


 なるほど。選定の剣の儀式というものか。なんかこういう展開ってオカルト部のみんなが喜びそうだな。しかし、みんながその場の空気に流されてしまっているが、大丈夫なのかな? まぁ、先生もいることだし、みんなのことは先生方に任せて、俺は好きなようにするだけか。


 そして、次々と聖剣に他の人たちが触れていくと荒木が聖剣に触れる順番になった。荒木は並び順で後半になっていたので、荒木が触れる前に聖剣が光ったりして反応を示した人が出ていた。皇女が言ったようにカギとなる人物をいたが、まだ剣を抜く勇者は現れていなかった。


 荒木は皇女の後ろに刺さってある聖剣に向かって行った。


 これが聖剣か一見すると単なる剣にしか見えないけどな。選定の剣は持ち主が持たないと輝かないからな。迷わないでとっとと触れて、行くか。


 荒木は聖剣に手を掛けた瞬間、聖剣から感覚が伝わった。


 この剣を抜こうと思えば抜けるな。もしかして、俺が勇者にならなければならないのか。せっかく面白そうな世界に来たのだから、そんな呪みたいなしがらみに縛られたくないな。それに、俺の主要武器は剣ではないからな。俺が剣を持つのも面倒だからオカルト部の後輩にでもその役目を押し付けるか。聖剣に選ばれてなくてもその気になれば勇者出なくても魔王を倒せるだろう。それに戦うときは使わないが俺の武器は糸と針だけで十分だからな。


 荒木はこの中で誰も視認できない程に細く、透明な糸を気で作り出した。誰にも気づかれないように人の目に映るよりも速くその糸を気で操り、糸を聖剣に巻き付けた。


「どうかしましたか?」


 すると他の人より、長く持っていたのを違和感に思ったのか皇女様がニッコリとしながら荒木に話しかけてきた。


「全く動きませんでした」


「そうですか」


 荒木はその美しい笑顔を軽く真顔であしらうと、皇女様は勇者でもなくそのカギとなる人物でもなかったので早々に興味を失い次の人を見ていた。


「抜けると思ったんだけどなー」


 そのまま下手に嘘をつき、ステータスを見てくれる白い服を着ている魔法使い数十人の元に向かって行った。


 意外とよく見ているんだな。流石は皇女様だね。やはり人の心を見る能力は長けているみたいだな。だけどまぁ、人を見るのに必死過ぎて俺が作った糸には気づけなかったけどな。


 荒木はステータスを見てくれる魔法使いが数名いて、それぞれに並んでいたので、とりあえず適当に後ろに着いた。すると目の前に同じクラスの友人的存在の守川が並んでいた。守川は俺が後ろにいるのを気づくと話しを私用と後ろを振り向いてきた。


「荒木よく皇女様に話しかけられたね」


「そうか?」


 皇女様と話したかったのか守川は荒木がたわいのない会話をしたのに少し嫉妬していたのか少し怒り気味に荒木に話しかけてきた。


「僕なんか緊張して話しかけられなかったよ」


「まぁ、たしかに皇女様だから人徳や人間の器が違うから気後れして話しかけづらいけどな」


「何で荒木は話し掛けられたの?」


「あの皇女にあまり興味はないからな」


「そうなんだ」


 守川は荒木の答えではないものをなぜか納得してしまった。荒木は守川が納得してくれたので、あまり何も伝わっていないが「まぁ、いいか」と自分も納得した。


「あれ? なんかちょっと背伸びた」


「よくわかったな。違う世界に来たからか調子がいいんだよね」


 こいつも皇女様並に人の特徴を捉えているな。確かに背は伸びてはいるが、本当によく見ないと伸びたか伸びていないかの違いは分からないからな。


「それでも僕よりも背は低いけどね」


「まぁな」


 守川は最後に余計な一言ったが、言っていたことは正しかったので、特に怒ることもなく荒木は切実に速く背が伸びないかなと心の中で静かに願っていた。


 守川と話しているとオカルト部の後輩である若藤という眼鏡をかけた女の子が聖剣に手をかけているのが見えたので、荒木は聖剣に付けていた糸を操り、抜いたと同時に聖剣を糸で引っ張って抜いてあげた。


 やはり俺が触れていれば抜けたか。後輩に任せればいいか。誰でもいいが、見知っている人に渡して置けば後々いいことが有るかもしれないからな。


「えっ」


「あなた様が今回の勇者様ですか。後の方々はそのまま続けて、ステータスを確認してください。勇者様はこちらへ来てください」


「えっ、ちょっと」


 皇女様は上機嫌になりながら聖剣を抜いてまだ今の状況の整理が追い付いていない若藤の手を強引に引いて、どこかへと消えて行った。


 皇女の態度の急変が著しいな。まぁ、あのパターンはいい待遇をしてもらえるから、結果的には良かっただろう。しかし、「今回の」ということは前回もこんな感じの選定の儀式でもあったのかな。あったなら魔王を倒した後の結末を何か知っている人が他にもいる可能性が高いな。


 若藤がどこかに連れていかれてから数十分後、荒木のステータスを見る順番も近付いてきた。


「じゃ、僕は先に」


 守川は先にステータスを見てもらうと魔術師の後ろに立っていた案内役にどこかへと連れていかれた。


 これはたぶん選別をしているみたいだな。まぁ、どうでもいいが、これで気になっている確認が出来るな。


「では、手を出してください」


「どうぞ」


 白い服装をしている魔術師が支持を出してきたので俺は疑問に思わずにそのまま手を差し出して、ステータスを見せた。


「あれ?」


「どうしましたか」


 何故か戸惑って何回も俺の手を取っている魔術師に向かって聞いてみた。


 どうなっているのかな。何かしら具体的な反応がないと分からないな。こちらから直接聞くのは疑われるから自然と魔術師の口から出る方が良さそうだ。このまま成り行きに任せるか。


 魔術師は後にいる案内役と守川の時よりも長く相談して、何かを決めていた。


「あなたはこちらへ来てください」


 荒木は案内役に導かれて、全面が灰色の石で出来ている殺風景な通路をついて行き、数々の部屋を通り越して、暗がりにある薄暗いドアの前に辿り着いた。


 結構薄暗い廊下だな。これから投獄されるのかな。まぁ、それは流石にないか。


「ここに入って、しばらくお待ちください」


 荒木は案内役の男性に丁寧に部屋の中に案内されると案内役の言葉を素直に聞くことにした。荒木は扉を開くと目の前には学校の教室位の大きさの空間が広がっていた。内装は廊下と同じ壁で窓は小さいのに、数本のろうそくしか明かりがないので、儀式の場所よりもさらに薄暗い空間になっていた。そのため、本当に牢屋に見えた。

 この部屋には数名の荒木も知らない生徒がいた。しかし、薄暗い部屋でさらにあまり綺麗とは言えない椅子と机があった。そのせいなのか、どんよりとした残念な空気がこの場に漂っていた。


 しかし、暗いな。ここは何か一つ、皆が元気になれる言葉を掛けけたいが、この感じから察するにどうせ空回りするからこの場を和ませよるとか、余計なことはしないほうがよさそうだから黙っておこうか。


 それから、残念な空気のせいなのか誰も言葉を発せずに時間が経たった。無言の間の中、この残念な空間に新しい生徒が来るとその生徒が最後なのか、次にこのお城で見てきた服装ではない服装の人物が四人現れた。


 この部屋にいる生徒達みんなはこの後の展開がどうなるのか分からなくなり不安になっていたので、どんよりした空気から少し緊張した空気に代わった。


「今日から君たちの教育を行う高久司たかくつかさです。よろしくお願いします」


 高久司という青を基調としたシャツに青色のジーパンを履いている一見男に見える茶色のショートヘアーの女性は緊張している空気の中、物おじせずに自己紹介をして綺麗にお辞儀をすると後ろにいる二人にも自己紹介するように目線で促した。


「私は光武神影みつたけみかげです」


 次に黒色ミディアムヘアーの黄色い長袖に、黒色の長めのスカートを穿いている。黄色という服のため最初に挨拶した人よりも目立っていた。


「私は陽川秘月ひかわひづきです」


 黒色のセミロングヘア―でオレンジ色の長袖にグレーのスカートと、こちらもこちらで目立っていた。


 三人ともそうだけど数々の戦いを潜り抜けているような感じがする。けど、俺の見立てではこの中では高久が一番強そうだな。しかし、あの派手な服装からしてたぶん普段色んな人から認められている人たちだろうな。あの異世界の服装が普通ならば違うけどな。

 一回この世界の強さを知りたいから手合わせして欲しいが、今すぐにはよしておくか。


 しかし、最後の4人目だけどういうわけか自分の名前を名乗らなかった。荒木は疑問に思っていた。


 どうして4人目の俺と背が同じくらいの子は一緒にこちらの素性を一切聞かない? 一方的な自己紹介みたいなものを言わなかったのだろう?


 荒木は他の人たちの反応を見るため、横目になりながら他の人たちに注目してみると、誰一人として三人の中で、青髪で勇逸めだって小さいという特徴のある人物に一斉目を合わせていなかった。


 見えていないということか。特別な力を持たないと見えない地球にもいた妖怪と似たような類か。俺は目に気を纏って違う力も見えるようにしているから見えているのかな。疑問はあるが今は見えていないほうが、話が進んで都合がよさそうだ。


「教育?」


 他の誰か先ほど言った高久が疑問に思ったのか。緊張している空気の中いきなり来た4人に対して聞いた。


「えぇ、異世界からこちらに来た人たちにはトラブルなどに巻き込まれないように、この城を出る前には異世界での生活などの教養を一通り学んでもらいます」


 皆はなぜ来たのかの理由を聞いて、みんなが思っているマイナスのことをするのではないと知り、ほっとした空気になった。誰も質問をしようとはしていなかったので、荒木はもっと情報が欲しかったからどんどん質問していくことにした。


「どれくらいの期間でその教育は行うんですか?」


「だいたい3か月掛かりますが、早ければ1か月で終ります」


 長くてリアルだな。俺なら数時間くらいで全く違う土地に来ても何とかなりそうだが、確かに普通の人ならばそれくらいかかりそうだ。


「他の人たちはどうしているの?」


 この中にいた一人の女の子が他の人たちを心配してか。教育係の人たちに他の人たちの情報を聞いた。


「みんなさんもあなた達と同じように教育を行っています」


「このクラス分けってどうなっているんですか?」


 荒木はこの状況から自分たちが何かを基準にされて、分けられていると思ったので、教育係の人たちに聞いた。


「能力別になっています」


 なるほど。さっきの魔法使い達が見ていたのは能力だったのかそれで何かの基準によって分けられた。やはり、俺が目で見た通りあの光は何かしらの能力を付与するものか。そうすると俺は光を体に入り込ませていないから能力がないということか。とすると、この組は能力が低いのか。

 しかし、俺が見た情報だと能力はランダムだったが能力はこれから出て来る者もいるから、このクラスからも上のクラスに上がる人はいるかもしれないが…まぁ、危険な状況でもないし、俺には関係ないから今は目を使って調べる程のことでもないか。


「ここに集まっている人たちは能力が低いということか?」


 荒木は確認のために内部事情を知っている教育係3人に向かって残念なお知らせを周りの人たちに気を使わずにはっきり聞いた。


「でも、能力は発展途上なので、これから上に上がることもあるので気は落とさないでくださいね」


 すると、陽川が俺以外の他のみんなを気遣ったのか、救いの手を出すかのように優しい言葉で希望を持たせようとした。


「まぁ、上がらないほうが多そうだけどな」


 荒木は正直自分以外の人の今の状況を把握していないので、今の知っている情報だけだと自分は確実に能力に目覚めることはないので事実を述べた。


「あなたはよく質問しますね」


 荒木が空気を壊すようなことを立て続けに行っているとそれを良く思わなかったのか光武が注意した。


「情報が欲しいですからね」


 実際に俺はその光を受け入れてないからステータスなしだから、この世界での能力の伸びは皆無。能力がないということはどういう状態なんだろう。死んでいるのかな。険悪になる前に無駄な口を叩かないほうがいいか。


「しかし、今日は転生してすぐですから皆さん色々と疲れているでしょうから庭に出てレクリエーションでもしましょう」


 高久は優しいのか、みんながいまだ状況を飲み込めていないと思い休憩をさせてくれようとしていた。


「そんな、悠長なことをしていていいんですか?」


 荒木の中では修行をすると言ったら、休まずに鍛えぬくことが常識だったので、いきなり休むといった教育係に生ぬるいと思ってしまい思わず突っ込まずにはいられなかった。


「少しくらい休んでも平気だよ」


 しかし、優しい高久は荒木がこの異世界に連れてこられて、強くならなければならないと思い詰めているのかと勘違いしていた。


「なるほど、分かりました」


 余りスパルタではないんだ。俺の修行の感覚では常に死と隣合わせの修行とは言わなくても毎日修行するのが基本だけどな。まぁ、俺の修行は特殊だからこの人達の教育方針には口を出さないでおこう。それに、そこまで差し迫っている状況ではないのかもしれないからな。


 荒木は高久には高久なりの修行方法があると納得して引き下がり、無駄口を発生させる口を閉ざした。

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