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第二十七話 ばれていたが、ばれていた

 さて俺はどうしようかな。色々と情報を収集したいが、取りあえず依頼を見に行こうかな。レノールはどうするんだろう。


「俺は依頼を見てから考えようと思っているんだけど、レノールはどうする?」


「げ!」


「え、もう依頼を受けるの?」


 レジーナとリクシーは再び修行をさせられるかもしれないと勝手に想像して、荒木の発言に衝撃を受けていた。


「また修行をするのか?」


 レジーナはまたあの過酷な修行をするのではないかという不安から弱々しく荒木に尋ねた。


 レジーナが話しかけて来るとは珍しいな。まぁ、情報収取しないと修行は始まらないからな。しばらく、出来なさそうだな。


「どんな依頼があるか確認するだけだよ。それに、しばらく修行はしないよ」


「それならいいけど…ね」


 死ぬかもしれない辛い目に会っているリクシーは口では納得したものの、荒木なら強引に連れていく可能性があるかもしれないので、半分疑っていた。


「で、レノールはどうするの?」


「私は疲れてないし、依頼を見てから何もなかったらBランクの昇給試験を受けようかな?」


「じゃ、依頼を見に行くか」


 そして、荒木たちも部屋から出た。部屋を出ると夕日のオレンジ色が室内に入っていた。荒木は依頼書が貼ってある掲示板を眺めにいった。


 なんかいいものないかな。モンスター退治とか薬草採取とどうでもいいな。特にはないか。

 一応、体にガタが来ているだろうから3人も休ませている間が暇になるから情報収集を始めようと思っているんだけど。中々、暇つぶしが見つからないな。レノールの師匠の家で得た情報の遺跡にいってみたいが、俺の場合一回で最深部に行きたいからな。時間がどれくらいかかるか分からないから無理だし、手軽に調査できそうな依頼はないかな。

 なら俺も、Bランクの昇格試験受けるか。


「特にいい依頼は無いからレノールと一緒にBランクの昇格試験受けるよ」


「受けるの? どうして?」


 前にBランクから上はのんびりと上げるようなことを聞いているレノールは気になっていた。


「少しの間、暇になるからその暇つぶしのため」


「なるほどね。でも昇格試験は一人でチームに入れてもらうから一緒には受けられないけどね」


 そうだったな。すると、レノールは俺の力を当てにできないのか。レノールの実力次第ということか、どういった試験でレノールが昇格する見込みがあるかどうかは内容を知らないから分からないけど、応援だけはしてあげよう。


「そうだったな。なら、頑張れ」


「最初っからそのつもりだから問題ない。荒木は大丈夫?」


 レノールは師匠に言われた通りの修行を目指すため、胸を張って答えた。


「今は空いているな。早速、Bランク昇格の試験を受けるか」


「次の方どうぞ」


「Bランク昇格試験を受けたいんですけど」


「はい。承りました。こちらの書類にサインしてください」


 荒木は暇つぶしのためBランク昇格を受けるための書類を受け取り、名前などを書き受付に提出した。すると、受付嬢は紙を持ってきて荒木に渡した。


「そちらの紙に書かれている場所に戦闘を出来る体制で集合してください」


「わかりました」


「次の方どうぞ」


 荒木は受付から捌けるが、レノールを待つため出口で邪魔にならないようにして、早速手紙を開いた。



―――ニール小山で発見された遺跡調査の依頼のために作られた冒険者たちの合同チームへの同行。場所は南門前、2日後に装備を整えて集合してください―――



 ニール小山にある遺跡の調査か。ニール小山はルーバ森林の隣にある2000m級の山だな。あそこに遺跡があるのか。というより、遺跡に行くことになるのか。受けてしまったからやるけど、興味がない遺跡だったら上のランクの人の指示に従おう。ランク昇格の試験だから、少しの調査で終了すると思うからな。万が一興味がある遺跡だったら、不本意ではあるが時間を掛けないように攻略するか。


「次の方どうぞ」


 レノールも手続きを終わると荒木と全く同じやり取りを行い、手紙を渡されていた。


 レノールと同じところに行くことになるのか。いや、同じ内容だからと言って、同じ場所とは限らないか。


「俺はニール小山の遺跡調査なんだけど、レノールは?」


「一緒よ」


 レノールは荒木の力をまた借りることが出来るかもしれないと思い、また楽が出来るかもしれないと少し安心した。


「一緒のところか。チームは別になるだろうが、よろしく」


「確かに。頑張らないとね」


 レノールは荒木の一言に、力を借りることは出来ない可能性のほうが高かったので残念だったが、自分の力で頑張ろうと意気込んでいた。


 そして、再び荒木のもとに受付嬢が近付いてきた。


「すみません。荒木さまですよね。部屋に来てくれませんか」


「あれ?」


「また?」


「はい。いいですよ」


 今度は何だろうな~?


 荒木たちは再び部屋へと案内された。


「荒木様を連れてきました」


「入ってきて」


 受付嬢が扉を開けるとその部屋には先ほどと同じ様にヘーゼルとミーシャとマルグリットの姿があった。そして、その真ん中に荒木が知る人物がいた。


 入口から入ってきた形跡はなかったな。裏口から入ってきたのか。


「戻って来てましたか。荒木様」


 そして、荒木が知る人物は怒ったような少し低い声で名前を呼んだ。


 やはり、来たか。まぁ、利用させてもらおう。


「王女がなぜ冒険者ギルドなんかに?」


 荒木はそんなに興味はなかったが、挨拶ついでにここに来た理由を聞くことにした。


「あなたのせいでしょ」


 セシーは荒木が気付いて聞いていることに気付いたのかわからなかったが何故か怒っていた。


「なるほど。門番に聞いたのか」


 ここで、荒木は先ほど自分を異世界人である情報を漏らしてもいないにもかかわらず3人のギルド職員に自分が異世界人であることが知られてしまっていたことを思い出した。


 あの母親が俺の情報を娘に教えるとは思えないからな。たぶん、俺が戻ってくるのを見越して門番に通過したら、連絡が来るようにセシーが手配していたのだろう。


「そんなことはどうでもいいのです」


「確かにどうでもいいな」


 本当に自分の発言がどうでもよかったことは理解していたので、荒木は頷いた。


「まぁ、いいです。早一週間あなたはこの町で生活しようとしていますよね」


 セシーは少し荒木の言動が気に障りそうになったが、そんなことはこの際重要ではなかったので、忘れて本題に入った。


 異世界人はマドラスフィ大帝国でなるのが普通。ここの冒険者ギルドで冒険者になったことで生活しようと思われているのか。拠点にするだけだからな。教えてあげよう。


「拠点だけだ。生活はしないし、国にとっては国民が増えるからよくない?」


「よくないです。それに拠点にするのは生活するのとほぼ同じです」


 そうなのか。でも、住む権利の自由は誰にでもあるはずだからな。よし、プラス要素を話して説得してみよう。


「それに、長居はせずにちゃんと別の地域にもいくよ?」


「それって、帰らないことには何も変わりませんよね」


 セシーは別の地域に行くとしても、マドラスフィ大帝国に行かない可能性に気が付いた。


「ばれた? まぁ、細かいことは気にしなくていいじゃん」


 はなから説得できないであろうと思いながら説得していた荒木は潔く諦めて白状した。


「細かくはないですし、良くないです。あなたは大帝国召喚された異世界人ですよ。大人しく大帝国に戻ってください」


 セシーは他の人のことを考えているのか、自分に甚大な被害が来るわけでもないのに懇願していた。


 詳しい数は分からないが、あれだけ力を授かっている学校全生徒300人くらいいるんだ。犠牲を覚悟すれば魔王も余裕だろう。


「大丈夫だって、俺がいなくても」


 荒木は結論から問題ないだろうと適当な目測で言った。


「どうして、そう言いきれるのですか?」


「頑張ればなんとかなできる」


 荒木は元気だった。


「それだけですか」


 意味の分からない言葉にセシーは一瞬固まったが、頑張ったところでと否定していた。


「それだけだけど」


「もし、あなたと同じくらいの敵が出てきたとしてもですか?」


 荒木は今の自分とみんなの戦いを想像したが簡単だった。


 それだと、今のみんなじゃ、全滅は免れないよね。


「今までの情報の限り、そんな敵はいないだろうから安心しなよ」


 本当に情報がないから興味がないんだよね。本当に出てきてくれる確証でもあるなら喜んで、マドラスフィ大帝国に戻って教育を受けるんだけど。


「いや、戻ったほうがいいですよ」


「そのほうがいい。他のみんなも心配しているだろうしな」


 すると、セシーと荒木のやり取りを聞いていたミーシャとヘーゼルはこのとてつもなく強い異世界人が召喚されたということは、その強さに見合った敵が現れるのではないかという考えに二人とも至った。二人もセシーと同じ様に説得し始めた。


「?」


 マルグリットは危険になるかもしれないということに気づかなかったため、二人が積極的になったことに不思議に思っていた。


「個としては魔王よりも強いといわれている伝説のSSランクなんて狩れる荒木と同等の敵が来たら簡単に数国がなくなりますよ」


「確かに」


 この場にいるみんながミーシャの想定を聞いてみんがその現状を想像して同意した。


「やろうと思えばな」


 荒木が数国を滅ぼすことが出来そうだったので遅れながら答えた。


 まぁ、国を滅ぼしたところで強いやつは出てこずじまいで終わるのが関の山。さらに、情報がもらえる量が少なくなるデメリットがあるから、相当に暇か目的がないとやりたくない。


「世界の危機になるかもしれないんです。ですから、大人しく帰ってください」


 セシーの熱心な説得がみんなに影響しているようで、この場にいるみんなが荒木を否定する空気になっていた。


「強い敵が来たら俺が戦うから問題ない」


 そんな空気など気にしても意味ないと思い荒木は変わらず帰ることを拒否した。


「前にも言ったがやることやったら、ちゃんと帰る予定だからいいだろう?」


「そう聞きましたけど、定住しようとしてますよね」


「しばらくかかりそうだからな」


「どれくらいの時間が掛かるんですか?」


「分からないけど?」


 痛いところを突いてきたな。情報がないからな。魔王との戦争が終わってからになってしまうかもしれないし、数日で終わるかもしれないから、分からない。が、少なくとも監視下に置かれるマドラスフィ大帝国にいるよりは規制のなさそうなエアスト帝国のほうが俺の目的にかなった情報が得やすいからな。


「そんな適当な」


 セシーはいつかの日か分からないが確実に迫ってきている危機よりも、自分の無計画な欲を優先していた荒木に呆れていた。


「気にしないことだ」


「それで、やりたいことって何ですか?」


 やりたいことはエヴァンジェリアの護衛を作ること。だが、これを言ったら、目的に辿り着かれて、今よりも大変なことになる可能性があるな。絶対に。


「…」


 荒木は少し無言になって考えいていた。


「何を考えているんですか?」


 うーん、どうしようか。ここは冒険者ギルド、そうだ。冒険者のランク昇格には毎回上の監督が必要で上げるのに遅くなるな。なら、最高ランクの冒険者になることを偽りの目的にするか。そうすれば、一時しのぎになる。


「SSランクの冒険者を目指してるんだよ」


「何故ですか?」


「ほら、この世界を旅してみたいんだよ。SSランクになれば色々な場所を巡れるから、それまでだな」


「マドラスフィ大帝国にも冒険者ギルドはあると思いますけど」


「召喚されてすぐはどうせ城から出してもらえずに制限があるだろう。それが嫌だから、マドラスフィ大帝国の息の掛かっていないここまで来たんだよ」


「なるほど、ですけどSSランクに上がるまで、どれくらいの期間かかるのか分からないのですか?」


「Bランクから先のランクを上げるには一回一回、監督が付かないといけないらしいからな。どれくらいの期間からは分からない」


「マルグリット様、荒木様はどれくらいの期間でSSランクに上がれそうですか?」


「荒木くんならSSランクなんてすぐ行けそうだな」


「実際SSランクの化け物を倒しているからな」


 マルグリットとヘーゼルはSSランクにすぐ慣れそうな実力を持っているのを知っているので、なれるだろうと思っていた。


「荒木様ほどの実力の持ち主ならば、最短で数週間もあればSSランクに昇格できると思いますよ」


 昇格試験の現場を知っているミーシャは大体の流れから最短でとれる期間をセシーに伝えた。


「数週間なら荒木様の実力からすれば、訓練に追いつきそうですね。分かりました数週間は待ってあげましょう」


 やったー。よくわからない基準だけど何故か説得することに成功した。よし、余計なことは言わないでおこう。後は利用させてもらおう。


 荒木は話が問題なく説得されたので、余計なことをいうことは止めたが、問題ない範囲で利用することにした。


「この後ろの3人を一旦預かってくれない?」


 まぁ、レノールの家も借りれないだろうし、宿も考えたがお金が発生するからな。今一番お金が必要のない宿といえば、王城。3人くらいなら泊めてくれるだろう。


「いいですけど、どうしてですか?」


「じゃ、頼んだ」


 これも成功だな。


「え、なんで、なんで、ですか?」


 荒木に今回の依頼は一緒に行かないと告げられたユードラが自分の実力が疑われているのではないか思い込み、一番驚いた反応を見せていた。


「俺は全然疲れてはいないが、3人は今回の戦闘で疲れが溜まっているからね。休ませたいんだよ」


「私なら大丈夫ですよ」


 ユードラはまだまだ、やる気も元気もあり様に自分を荒木に示そうとしていた。


「休憩欲しくないの? ならいいんだけど」


 そんな駄々をこねるユードラのせいで、再びの悪夢になるかもしれないと感じたレジーナとリクシーの二人は目で合図した。

 そして、レジーナがユードラの口を押えて物理的に黙らせた。


「欲しいです。喜んで王城に行きます」


 リクシーは荒木の気が変わらないように素早く休む意思表示をして、荒木から離れてセシーのそばに移動した。

 レジーナもユードラを無理やり、連れてセシーのそばに近寄って行った。


「じゃ、よろしく頼んだよ。セシー」


「分かりました。その代り早くSSランクになってマドラスフィ大帝国に戻って、世界を救ってください」


「うぅん」


 荒木は守るつもりはないが、面倒になりたくなかったので、うれしい時よりは声が少し低かったものの、頑張って頷いた。


「では、約束も出来たことですから私はこれで失礼します」


 セシーは3人の奴隷を連れて部屋から出て行った。


「私たちも仕事があるので、失礼します」


 王女の対応に来ていたギルド職員の3人も中断されていた予定を再開するために足早に去って行った。荒木とレノールは二人きりになった。


「へー、荒木ってやっぱりマドラスフィ大帝国に召喚された異世界人なのか。なるほど、魔王と戦うために召喚されたのね」


 レノールもまたマドラスフィ大帝国の異世界人召喚を知っていた。


「まぁな」


 レノールにも知られているのか。異世界人召喚ってこの世界では世界的に有名なんだな。今度から簡単に異世界人だと名乗るのは止めておこう。


「あなたほどの強さがあれば待遇はいいと思うんだけど? 何で頑なに拒み続けるの?」


「待遇はよくなるが、その逆も起ったときの不毛な争いが面倒だからね」


 言えはしないが。自分達の力だけで、魔王をしのぎ切ろうとしないのがまさにその例だよな。


「確かにマドラスフィ大帝国の人たち全員いい人とは限らないね」


「だろう」


「まぁ、勇者でもないなら、一人くらい抜けても大丈夫でしょう」


 レノールは勇者が残っている前提で魔王との戦いを考えていた。レノールの頭の中には勇者が逃げるなんて、発想は微塵もなかった。


「(あっ)そうだ。遺跡探索の準備をしないと。じゃ、南門で」


 少し動揺した荒木は準備を理由に突然立ち上がり、この部屋から去って行った。


 それにしても、なんでみんなやたらと勇者を重視してるんだろう。やっぱり、戦いの象徴がいなくなると士気が落ちるとかかな。まぁ、気にしなくてもいいか。


「どうしたんだろう? …私も準備するか」


 レノールは急に部屋から出て行った荒木の奇行を不思議に思ったが、レノールも準備は念入りにしたいので、荒木の後を追っていった。



○セシー


「しかし、荒木様の口約束は信用できませんね。仕方ありません。自主的に帰らないのでしたら、奥の手を使いましょう」


 セシーは筆を持ち動かし始めた。

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