第二十五話 お出迎えは何故ですか?
半日くらいたち日が真上に上ったころ、町まであと3分の1くらいの場所まで来て馬車は壊れた。
「きゃ!」
「何?」
「壊れたか」
俺と紅の予想通り壊れたか。もう近いし、荷物と紅はしまおう。馬車は燃やしておこう。
「なるほど、馬車が壊れたのか」
「歩くしかありませんね」
荒木は荷物を気の世界に全てしまっていくと、状況を理解したみんなは馬車から降りてきて歩くことにした。
「それでは私はこれで」
役目を終えた紅は姿を消してもといた場所に戻っていた。
荒木は馬車に近づき火をつけて馬車を燃やした。その光景をみんなは何も言わずにいていた。
何も言ってこない。誰かしら何か言ってくると思っていたが、馬車を燃やすことってこの世界じゃ当たり前のことなのか。ならよかった。
よし。片付けも終わったし、走るかな。いや走ったらみんなついてこれないか。それに走ったとしても、エヴァンジェリア並みの速さじゃないと走る気はしないな。
「歩くか」
そして、主にレノールとユードラ、次にリクシー、レジーナは無言な感じで雑談をしながらのんびりと歩いていくと関所の行列が見えてきた。
「並ぶのが面倒だな」
荒木は何気なく邪魔な列を目の前に簡単にいこうかと気分のままに考えた言葉が漏れた。
「え?」
「飛び越えようかな?」
「やめて」
何かやらかしそうな一言にレノールは荒木の肩を全力で掴み必死に止めた。
「まぁ、昼間だし見つける人は見つけられる可能性が高いからな」
「そういうことじゃないんだけど」
「荒木は少しルールを気にしたほうがいいと思う」
困っているレノールの姿を見て哀れんだのかリクシーが呆れながら世間知らずの荒木に指摘した。
「別に良くない? 不法侵入くらい」
俺はこの国の人間になったわけでもないからな。
「よくない。よくない」
「だってねぇ、自分よりも弱い国のルールに従ってもね」
地球の場合は情報の広がりが早いで大人数を相手どらないといけなくなる可能性が高いから向こうの損害が大きすぎるからな。手はあまり出さないようにしてるんだけど、情報の伝達が限定的なこの異世界なら、国と戦っても問題はなさそうなんだよね。
「弱い?」
「俺ならたぶんこの国を一人で落とそうと思えば落とせるよ」
「おかしい、おかしい」
「だって、この国の人間で俺の基準をクリアしている人は二人しかいないからな」
俺が戦ってもいいと思う最低限の力をもっているのが二人しかいない国で、さらにその二人も余裕で倒せるだろうからな。落とそうと思えば息を吐くだけで落とせそうだ。
「基準とか何言ってるかわからないけど、ともかくなんでルールを破ったくらいで国を滅ぼすことになることがおかしいの!」
「ルールっていうのは力があって初めて効力があるからな。それにあの女王なら不法侵入したとしても俺なら許してくれるだろう」
まぁ、後々の処理とかが面倒になるからこの規模の国を今は落とすつもりはないけど。
「異世界人怖い」
レノールは全然話の通じない凶悪な考え持つ異世界人に恐怖した。
「本当に馬鹿だな。これだから人間の考え方は野蛮なんだ」
荒木の世間知らずな姿を見ていたレジーナは今までの仕返しと言わんばかりに罵った。
「むぅ、まーた主様に向かって失礼な言葉を」
「別にいいじゃん。あいつ以外誰も迷惑してないから」
「私はよくないんです。それにその人間嫌いはどうにかならないの?」
「人間に親しくする価値なんてない」
「それはあなたの偏見です」
「またレジーナとユードラの二人か」
レノールはだんだん話が脱線して言い争いになっている光景を見たことがあるので、荒木に引き続きこの二人にも呆れていた。
「偏見じゃない。人間が襲ったんだ。同罪だろう」
「人間が襲ったからと言って荒木が襲ったわけではないですよ」
そして、二人の言い争いは続いたが一向に意見が合うことはなかった。
「やるか」
面倒になったレジーナはダンジョンでの戦闘によってボロボロになっている剣を抜きユードラと対峙した。レジーナは決闘で決着しようと考えた。
「いいでしょう」
ユードラも一度レジーナに教育したほうがいいと思い、ダンジョンの戦闘によってくたびれた剣を引き抜き、正面に構えて決闘を受けた。
いいね。戦うつもりか。決着はユードラが勝つだろう。ダンジョンに入る前だったらレジーナが勝ったが、ダンジョンの修行で目覚ましく成長したユードラならリクシーにだって遅れは取らないほどに成長したからな。
「ちょっと二人とも落ち着いて」
レジーナとユードラが剣を抜いて本当に戦い始めたので、流石に危ないと思ったレノールは止めようと声を掛けた。
それから、ユードラが押している二人の決闘を止めようと声を掛けていたが、検問所近くに迫り始めた。
「二人ともそろそろ、検問だから静かにして」
検問が見えてくるとレノールは検問近くで暴れられると問題になると思ったので、剣を抜き二人の間に割って入り剣を受け止めた。レノールは物理的に止める強硬策に出た。
ユードラは主に迷惑がかかるかもしれないと思い剣を収めた。レジーナは今の段階で面倒ごとを起こして人間に目を付けられたくは無かったので、剣を収めた。
「仕方ありません。話はあとにしましょう」
「わかった。人間がいかに悪いか教えてやる」
剣を収めた二人だったが、怒りを収まっていなかった。二人はいったん収めることで決着がついた。
「終わったか」
「大変だね」
二人の争いに興味を持って見ていたリクシーと話の当事者の荒木は面白い光景だと思い、のんきに眺めていた。
「荒木のことなんだけど」
荒木が他人事のように言っていたのでレノールは突っ込まざる終えなかった。
「どうぞ」
荒木たちは身分証明書を見せて町に入っていった。
「冒険者ギルドに向かうか」
「さっきの続きをやるか」
「分かりました。受けて立ちます」
二人は町に入るとすぐに剣を抜き放ち決闘を再び始めた。荒木とリクシーはのんきに見物していた。
「町の中だから止めて」
止める気のない二人を見てレノールが再び止めに入った。
それから、多々あって冒険者ギルドに辿り着いていた。
「はぁ~。荒木たちといると疲れる」
レノールは主にレジーナとユードラの喧嘩、荒木の予想外の行動の二つを主になどなどがあって疲れていた。
「でも、これでCCランクまで一気に上がるだろう。たぶん」
依頼を一切受けてないのに本当に上がるのかな。上がらなかったら、のんびりとやろう。
「私は気絶してたからモンスターの姿は見てないから分からないけど、クリスタル見たら知らない名前のモンスターが信じられない数を記録してるからモンスターが最低ランクでもCCランクくらいならいけるわよ」
「夕方だし、混んでるな。また並ぶのか」
タイミングが悪く報告の受付は今日も並んでいた。
「この時間は混むから仕方ないわよ。でも、並ぶのか―」
レノールはレジーナとユードラが何かまた揉め事が起こるかもしれないと思い、それを止める労力を考えていた。レノールは仕方ないと思いつつも、元気はさらになくなった。
すると、冒険者ギルドの受付嬢がこちらに来ていたどうやら荒木に用があるようだった。
「荒木様ですよね」
「はい。そうですけど、何か用ですか?」
「はい。部屋に来てください」
「分かりました」
受付嬢は前にドラゴンを解体した部屋に案内された。
「何かしたの?」
「冒険者ギルドで何かした覚えはないな」
「気づかないだけじゃない?」
確かに。異世界の感覚はまだよくわかってないからな。知らないうちに何かしていたんだろう。まぁ、あまり気にしなくてもいいか。
部屋に入ると受付嬢と副ギルド長と金色の長髪で、体が副ギルド長のヘーゼルと変わらないのにもかかわらず全身の筋肉がはっきりと目に分かる形で鍛え上げられていた見知らぬ女性の3人が待っていた。
あの鍛え上げているいい体つきの人は誰だろう。しかし、ギルドの偉い方が集まっているということは何かしてしまったのだろうか。
「ギルド長、連れてきました。」
女性のギルド長か。やはり、この世界で強い人は女性だから当然か。確か名前は王都で見た本にマルグリットとか書いてあったな。
受付嬢に座るように促された荒木たちは荒木とレノールが椅子に座り奴隷の3人は椅子の後ろに立つような形になった。
「彼が荒木です」
「君が荒木くんか。冒険者登録ありがとう。私は冒険者ギルドの長マルグリットだ。よろしく」
マルグリットは挨拶のため手を先に差し出して来たので、荒木も差し出して握手した。
「ギルド長がなぜ俺に会いに来たんですか?」
「ドラゴンを倒したほどの人物が冒険者ギルドに入ったから、どんな人物なのか一目見たくてね」
なるほど。俺に用があるわけでもないのに抑えられない気持ちが先行して見に来たのか。確かに俺はそんなことはしないが、強いやつを取りあえず見てみたい気持ちは理解できるな。
「後ろの3人は誰?」
ヘーゼルはまだ3人を見たことのなかったため気になったようだ。
「町で買った奴隷です」
「手が早いな。それで今日は何しに来た?」
奴隷には興味はないようで、ヘーゼルは今日の荒木の要件を何の迷いもなく聞いた。ヘーゼルには荒木の行動のほうが重要だった。
「レノールと一緒にランク上げのためにモンスターを狩ってきたから、報告に来ました」
「今ここで見せてもらうことはできるか?」
「はい」
数が数だし受付では処理できずに、偉い人と個室で作業を置こう事になるとは思っていたが、まさかいきなり予想通りになってしまったか。
まず、最初にレノールがヘーゼルに自分の討伐の証であるクリスタルを渡した。
ヘーゼルは鉄みたいな素材で出来ているボードを取り出して机に置き、レノールから受け取ったクリスタルをボードの上に乗せた。
あれが他の人のクリスタルの中の記録を見るための補助用具のボードか。
すると、クリスタルに記録されていた情報がみんなに見えるようにボードの上に小さめに表示された。3人は荒木たちが最近クリスタルを受け取っていることを知っているので、白紙の状態からどれだけ倒したのかを見るため、まず倒した合計を見ることにした。




