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第十七話 エヴァンジェリア護衛候補

「体は切れていて使いにくそうだけど、使えないことはないわね。高値の付くところの重要な素材は問題ないから一体白金貨1枚分くらいよ」


「妥当でしょうね」


 女王のドラゴンの鑑定結果に女性騎士は上機嫌で妥当な判断だと納得していた。


「へー、そんなにするんだ」


 日本円で1億くらいか。白金貨この世界で2番目に高い硬貨だな。俺を嫌っている女性騎士が納得しているということはもう少し値段が高くなるかもしれないが、ドラゴンごときで1億円か。十分高いから貰えるものはもらっておこう。


「いつ換金できるの?」


「部屋に戻れば出来るわよ」


「じゃ、お願い」


 荒木と女王は先程までいた執務室に戻って行っていった。女王は金庫と思われる箱から白金貨3枚を取り、荒木に渡した。


「ありがとう。じゃ、俺は行くとこがあるから」


 よし。金は得た。次は奴隷商人に会いに行くか。


 荒木は金を受け取るとすぐに窓から飛び出て、奴隷商人を見つけに町に出て行った。


「あの失礼な子はいったい何なのでしょう」


「異世界人よ」


「い、異世界人? 何でここに」


「まぁ、細かいことはいいじゃない。強いんだから」


「はぁ」


 女王の荒木に対しての姿勢が変わることは絶対にないと悟った女性騎士はあからさまに溜息を付いて見せた。


 

 荒木は町を見ながら回っていくと奴隷を売っているかもしれないと思い、取りあえず中に入って行った。


「いらっしゃい」


 中に入ると少し痩せている男性の受付がすぐに返事をした。中は受付と男性の横に垂れ幕があるだけのみすぼらしい空間だった。


 垂れ幕で姿は見えないが奥に複数の気配がある。あたりかな。


「奴隷を見せて欲しいんだが」


 荒木はここが重要そうな場所だとは思わなかったので、もし奴隷商人の店でなかったとしても、失礼になってもどうでもいいと思い、推測で言った。


「こちらの奥になります。気になる奴隷が居たら私を呼んでください」


 荒木は奥の部屋に入って行ったが、数十名の奴隷が牢屋の中に収容されていた。荒木は檻の中を次々と見て回ったが強そうな奴隷は一人もいなかったので、すぐに受付に戻った。


「店員。戦闘向けのいい奴隷がいなかったよ」


「なら、スランダ奴隷に商行ってみては。そこならここよりも何もかもがいいですよ」


「なぜ他の店を紹介した?」


 荒木は競争相手である他の店を教えるのか気になったので店員に聞いた。


「私はそこから独立して、色々と支援してもらっているので、うちで満足頂けなければ紹介しているんです」


 そこまで言われている店なのかそれならその店に行った方がよさそうだな。


「なるほど。それで、その店はどこにあるの?」


「この大通りを中央広場に向かう道にあります」


 中央広場かたぶん王城の前付近にある広場のことだな。ならわかるから、行くか。


「わかった。じゃ」


 荒木は道を教えてもらうと、この店には興味がなくなったので軽く手を振って別れを告げると店を出て行った。それから、道を歩いて行くとスランダと中途半端に大きく書かれているそれらしき看板を見つけた。


 ここかな。結構、使っている人がいるのか。人気が何さそうで薄暗い場所を探していたから、気づかなかったのか。とりあえずはいるか。


 中に入ると、先程の奴隷商人の店と比べると待つためのイスが置いてあり、照明はシャンデリアで、店内は比べるまでもなく明るく豪華だった。受付には5人の女性の受付嬢とその隣に男性の二人がいた。


 明るい雰囲気だな。とりあえず受付と話すために列に並ばないとな。


 荒木は取りあえず受付の列に並んで自分の番が来るのを待っていると、前の人との会話が聞こえてた。


「どういった奴隷をお望みですか」


「家で働かせる奴隷が欲しいです」


「分かりました。案内よろしくお願いします」


 前の人は事務的なやり取りを終えると、隣の男性に後は丸投げした。そして、受付嬢はしばらくと待ちくださいの看板を出した。


 えーっと、しばらくお待ちくださいか。まぁ、仕方ない待つか。


 荒木は言われた通りにしばらく待とうとしたが、数分後に案内した男性が戻ると看板をどけた。


 以外に早かったな。


 荒木は異世界だから長時間待たせれるのかと思ったのに早く用事が終わったのか意外に思いながら、受付に歩いた。


「大変お待たせいたしました。本日はどういった奴隷をお望みですか」


「奴隷を買いたいんですが」


「どういった奴隷をお望みですか」


「戦える奴隷がいい」


「戦闘用の奴隷ですね。それでは案内よろしくお願いします」


 受付嬢が再び現れた隣にいた男性に案内を任せた。


「私に着いて来てください」


 荒木はその男性に大人しくついて行くと、多くの奴隷が収容されている牢屋が数十個ある大きな部屋に連れてこられた。


「この部屋全ての奴隷が戦闘用の奴隷がいます好みの奴隷が居ましたら奥にいる人に声を掛けてください。私はこれで」


 案内してくれた人はそう言って荒木を部屋に入れるとすぐに戻って行った。


 なるほど。後は自分の目で見て自由に選べということか。俺にとっては好都合だな。

 さてと、エヴァンジェリアに適する護衛役の奴隷はどれがいいかな。やはり、女同士ということで女性がいいな。といっても、この中で強い奴は女性の方が多いいからそれしか選択はないんだけど。後は鍛えて今後も使えるようにしたいから成長できて、若くて長生きしそうな生きいい奴がいいな。


 荒木は被っているフードを外して牢屋を値段の小さい順に一通り歩いて奴隷達を見ていった。すると、フードを取り荒木が子どもだと分かったのか。侮るような視線や、憎むような視線などの様々な視線を荒木に向けていた。


 おかしいな。他の安い奴隷が50万円なのにあの一人でいる奴隷。値段が1万円とこの中で格段に安いのに一番強い女性。なぜだ? 何か面倒ごとがありそうだが、面白そうだし、一人はこいつで確定だな。


 荒木は数個の牢屋を通り過ぎ予めマークしていた5千万円台の奴隷が集められている牢屋にいる耳の長いエルフ族たちを見た。


 やはり、この中にいる一番値段の高いエルフ族とダークエルフ族の中にいる二人がよさそうだ。他種族は軒並み憎悪が感じられて即席には持って来いだが、この二人はその憎悪に加え、他の同族より若いのに実力があるからな。

 今回はこの3人十分だな。エルフ族には他に良さそうなものが何人かいるが、金は他のもっといい奴隷使いたい。他の実力のありそうな奴隷は寿命の少ない種族しかないからな。


「決めたよ」


 荒木はエヴァンジェリアの護衛役に良さそうな奴隷を決めると早速奥にいる男性にフードを被りながら近づいて言った。


「分かりました。私を決めた奴隷まで案内してください」


「あのエルフと、あのダークエルフ」


 荒木は言われた通りに選んだ奴隷の牢屋の前まで行き指さすと男性が牢屋の中に入り、エルフとダークエルフの二人を連れてきた。エルフの奴隷は外に出ると多少荒木を睨みつけたが、ダークエルフは人間に対してかなりの強い憎悪があるのか物凄い形相で荒木を睨みつけてきた。


 いい憎悪だ。人間に大切な何かを奪われたのだろう。いい護衛になりそうだ。


 荒木はその憎悪に対し、少し笑顔で返すと次の問題がありそうな奴隷の前まで行った。


「あとこの奴隷をください」


「その奴隷は曰く付きの悪魔です。止めた方がいいですよ」


「どんな曰くがあるの?」


「その悪魔の実力は折り紙付きですが、その容姿で買われないのと買ったものが次々と散財して、不審な死をとげさせ数々の奴隷主を死に追いやってはこの奴隷商に戻ってきている悪魔です。それでも買いますか」


 へー、面白そうだじゃん。どんなことして来るのか興味あるな。まぁ、女王よりも弱そうな感じのするこの悪魔では興ざめかもしれないが期待しておくか。


「買う」


 男性が青色の肌の奴隷悪魔を連れて来ると悪魔はニッコリと荒木を見つめた。荒木もまた笑顔で悪魔を見た。


「それでは契約の前に奴隷と面談になります。奥の部屋に進んでくだい」


「あぁ」


 一応話すか。


 荒木は3人の奴隷を引き連れている男性が奥の部屋に入った。荒木もその後に続くとテーブルに向かい合うソファーが置いてあった。男性が奴隷3人を座らせたので荒木向かい側の席に座った。


 聞きたいことか。今聞くなら名前と生い立ちと使用武器の三つがいいな。他の情報は後で聞けばいいし、この二つの情報があれば護衛役のポジションを立てやすくなるだろう。


「じぁ、二つほど聞く。三人のここに来た生い立ちと使用武器を教えて欲しい」


「言うとでも?」


 荒木が皆聞こうとしたがダークエルフの女性は荒木に対して情報は一切上げないつもりか、挑発的に言った。


「別に言わなくてもいいけど」


 言わないのなら奴隷契約しよう。


「こちらが三人の詳しい資料になります」


 荒木が奴隷契約をしようとお金を取り出し、支払おうとしたときに男性が奴隷3人の資料をテーブルに出した。


「あるのね」


 荒木はその資料を手に取りまずはダークエルフの女性の資料を見た。


 ダークエルフの子がレジーナ・アビリアンフート217歳。人間との戦闘時に敗北して戦争奴隷になった。なるほど。それで人を憎んでいるのか。戦闘奴隷は確か。命令を拒否できるんだっけな。厄介だがまぁ、追い込めば何とかなるだろ。


「辛かったんだな。で、レジーナは何の武器を使うの?」


 荒木は多少同情する姿勢を見せたが、すぐに切り替えてレジーナの使用武器を聞いた。


「…」


 荒木が自分の生い立ちや苦悩など、どうでもいいと思っていることが容易に分かったレジーナは荒木を無言で睨んだ。


 後悔しなければいいんだけどな。まぁいい。次だ。


 荒木はエルフの方を向いた。


 次はユードラ・デイナール175歳。エルフ族か。魔王に村を滅ぼされて弱っている時に人間に捕まったか。後遺症のことは記載されていないのか。これは取引に利用できそうだ。修行不足のこの世界の住人たちにとってあの右腕は骨の芯からくる痛みだから、死ぬほど痛いだろうからな。


「ユードラの骨の髄まで染み込んでいるその右腕の後遺症は逃げるときに?」


「なぜ、そのことを」


 ユードラは今まで誰にも右腕の傷に対して気づかれなかったのか驚いたが、すぐに目を輝かせながら前のめりに荒木の話に食らい付いた。


 おかしいな。表情でバレバレなんだけど。うーん。


 荒木は試したいことが有ったので見えにくい糸を出した。その糸を前のめりになっているユードラの右腕に糸で後遺症の傷を突っついてみた。ユードラは激痛が走ったのかソファーに座り直し表情を戻した。


 表情を隠しいてる振りらしきことをしているみたいだ。だから普通の人には見抜けなかったのかな。


「その痛そうな顔見ればわかる。その傷治せるよ」


「この呪治せるのか」


「契約したら普通に直してやるよ」


 呪? まぁ、骨が変な感じになってるから一生治らないかもしれないという点で呪いと勘違いしているだけだろうな。


「で、ユードラの使う武器は」


「弓と剣を少々です」


 ユードラはレジーナとは違い痛みから解放されるかもしれないという喜びから、元気よく答えた。


 次は青色の悪魔の方を向いた。


 で、最後がリクシー・エスリア・アスカー242歳。魔族。買って行ったものが次々と散財し、奴隷主は死んでいった曰くと、その青色の容姿から敬遠されている。どこで手に入れたか分からないが犯罪奴隷。何でもできる奴隷階級の最上位か。これだけではリクシーについては分からないな。


「リクシーは何で捕まってるの?」


「気まぐれ」


 リクシーは荒木を遊びたいのか楽しそうにかつ適当に答えた。


 数々の奴隷主を使って遊んでいる奴が、真剣には答えてくれないか。答えてくれないのならば、別に武器以外は聞かなくてもいいか。


「そうか。じぁ、武器は」


「魔法しか使わないよ」


 魔法使いか。異世界の武器も使わない純粋な魔法使いがどんな戦い方をするのか楽しみだな。


「それより、君のことが知りたいな」


 リクシーは荒木の反応を見たいのか分かりやすく獲物を見るかのような目でプレッシャーを与えてきた。


 何も感じないんだがプレッシャーをかけている様子。自分の力に自信があるのか。まぁ、話はするが、今は人がいるから後で話すしかないな。


「俺のことは後で話す」


 荒木にとってはリクシー程度のプレッシャーでは弱すぎて感じ取れないが、気が微かなリクシーの変化を感じ取り気が付いたがどうでもよかったので、無視して話した。


「店員この3人で決まりだ。支払いを」


「白金貨1枚と大銅貨1枚になります」


「はい」


 荒木はお金を渡すと小白金1枚と、大金貨4枚と、金貨1枚、と小金貨4枚と大銀金貨1枚、銀貨4枚、小銀貨1枚、大銅貨4枚が戻って来た。


 予定よりも小銭が多くなったな。これで色々と買いやすくなったから運が良かった。


 こちらが金の確認を終えると、男性が無言で荒木の体に魔法をかけた。


 これが奴隷契約の魔法か。しかし、術を掛けるのが遅いな。俺の気を変化させて補助してやるか。


「…? それでは契約終了です」


 荒木は男性の奴隷契約の魔法を加速させてあげたがどうやら男性は気付いたが、よくわからなかったようで契約の魔法は終わった。


 今日は絶好調くらいにしか思ってなさそうだ。まぁ、初めて見た男性だし、この世界の魔法を補助するのは初めてだから、少ししかできなかったか。


「奥の部屋に装備や衣装などがありますので、よろしければそちらも見て言ってください」


 装備か。俺が趣味で作っている武器では流石に普通の武器よりは強すぎるから、まず持たせるのはこの店で売っている武器でいいかな。


「わかった。3人ともまずは装備を整えようか」


 荒木は言われた通り多くの部屋に行くとそこには色々な武器などが商品として置いてあったが、レジーナ、ユードラ、リクシーの3人とも立ち上がらず付いては来なかった。


 そうだった。奴隷って命令しない限り自由に行動できるんだったな。後、命令してもその命令の範囲内なら自由に行動できたな。取りあえず命令しないとな。


「3人とも付いてきて」


 命令をすると3人とも立ち上がり後ろを素直に付いてきた。


 よかった。命令を聞いてくれた。リクシー以外は無視しようと思えば痛みを伴うが命令を無視できるからな。まずは、ちゃんと答えてくれそうなユードラの装備から整えるか。


「ユードラはどれくらいの大きさの弓を使うの」


「ミドルです」


「それじゃ、剣は片手剣かな」


「はい」


「防具はやっぱり軽めの革かな」


「そうです」


 荒木は店内の武器を見つつ、ユードラに必要な装備を聞き終わると、適当に武器を選び始めた。


 弓はこの木製弓と矢、剣はこの鉄製の片手剣、防具はこの何かの生物の鱗で出来ている皮でいいかな。どれも、この店では平均的な値段だからいいだろう。


「これでいい?」


「はい。これで大丈夫です」


 ユードラは装備を少し触り、堅さ、伸縮性、フィーリングなど、自分が使いやすいかどうか確認した。満足は行っていなかったが一応戦うには十分だったのと、奴隷なので高そうなものを買ってもらえそうもなく気が引けたので荒木が選んだ装備で妥協した。


「じゃ、持ってて」


 荒木は全部を持ちきれないのでユードラ用に選んだ装備をユードラに持たせた。


 次はリクシーか。魔法使いの武器は魔法の補助能力のかかった装備だが、魔族は魔力保有量が多いいからそんな小細工はしないはずだからいらないか。


「リクシーはいらないでしょ」


「うん。魔族だし、武器や防具は必要ないよ」


 リクシーは荒木を誘惑するような視線で見ながら言った。リクシーは荒木の様子を見て情遊ぶための情報を得ようとしていた。


 俺を料理する前に情報を引き出そうとしているのか。注意くらいはしておこう。

 

 次はレジーナか。レジーナか~。まだ無理だよな。レジーナは人間嫌いだから。打ち解けないと話を聞いてもらえそうにない。無難に剣でいいかな。


「レジーナは剣でいいか?」


「…」


 面倒だ。脅すか。


「まぁ、答えないのはいいんだけど、武器くらいはちゃんとした武器を持ってないと死ぬよ。それでもいいなら構わないんだけど」


「剣」


 脅しが効いたのか。レジーナは俺と話したくないのか渋々小さな声で話した。


 こういう復讐心に燃えている普通に聞いても、親切にしても何も話してくれない面倒な頑固者タイプにはちょっと悪戯が必要だな。

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