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第十五話 冒険者ギルドに謎の種族とお使い

 しばらく王城を歩き回るとようやく一階にある図書室に付いた。


 誰もいない。勝手に使っていいのかな。まぁ、普通に読んだら数日掛かってしまいそうだが、誰かが来る前に力を使えば一時間くらいで終わるからとっとと始めるか。


「糸術―見通糸けんつうし、気術―識翻訳しきほんやく


 荒木は手から今までとは比べ物にならないほどの無数の糸を作り出し、糸を本に入り込ませると一斉に複数の本を調べ始めた。それから、一時間が経過し本を全て読み終えた。


 エヴァンジェリアを目的の敵が来るまで守るには奴隷の護衛がよさそうだ。俺の式神は観測的不確かな者にはもったいない。もっと確実な情報の者に付けたい。他の用途にも使いたいからな。式神は完全に俺が見守らなくなってからではないと勿体ない。10秒くらいだけでいいから持ちこたえてくれればいいからな。この町にある奴隷で強い奴隷を買えばいい。まずは金を集めないと。そのためには金も情報も手に入るギルドを活用したほうがよさそうだな。


 それにしても、誰も来ないな。くる気配すらない。まだ早いからかな。この時間からやっているかどうか分からないが取りあえずギルドとやらに行くかな。


 ギルドに行く間エヴァンジェリアが一人になってしまうが、情報収集のために数日はこの警備の手厚い王城にいるだろうから、俺が気を配っていれば問題ないだろう。何も言わないで出て行くと後で何か言われそうだが、寝ているだろうし、会いに行くのが面倒だから気にしないことにして出かけよう。


 荒木は自分の行く場所は伝えなくてもメイドが城を出るのは目撃するだろうから、大丈夫だろうと思い誰にも何も伝えずに王城を出て行くことにした。


 服はどうしようか。このままの黒色だと暗い場所以外は浮くだろう。昼間用のクリーム色のローブに変えるか。フードは被ったままでも大丈夫だろう。


 荒木は糸を操り、服を替えると冒険者ギルドのある街に向かって行った。


 見つけた。ここが冒険者ギルドか。首都だからか思っていたより大きいし、しっかりと建てられているな。


 そこには石で作られている建物の正面に大きく冒険者ギルドと書かれた看板が掲げられていた。


 やってるのかな。とりあえず入ってみるか。


 荒木はやっているかどう変わらなかったが早めに入会しときたかったので、迷わず冒険者ギルドの中へと入って行った。冒険者ギルドの中は誰もいなく閑散としていたが、ちゃんと暇そうにしている受付嬢が座っていた。


 やっててよかった。朝早いのにやってるんだな。取りあえず冒険者登録を済ませるか。


 荒木は受付嬢の元へと歩いて行った。


「冒険者登録をお願いしてもいいですか?」


「はい。冒険者登録ですね。まずこちらは規約が書かれている用紙になります。まずお読みになってください」


 まぁ、規約なんて気にしなくてもいいか。多少金が得られればいいだけだからな。それに、行き当たりばったりでも何とかなるだろう。


「読み終わりました」


 規約に興味なかった荒木は適当に呼んだ振りをして、規約の書かれている紙を受付嬢に手渡した。


「こちらの用紙に必要事項を書いてください。代筆が必要の場合は銅貨1枚が必要になります」


「分かりました」


 荒木は渡された用紙に眼を落して、書き始めた。


 名前と、年齢は普通に描けば大丈夫か。使う武器を書かないといけないのか。必要ない思うけど、無難に剣とでも書いておくか。適正魔法。魔法は使えないからな。使えないと書いておくか。出身は適当にタチツ村とでも書いておこう。他は得意な戦闘の仕方とかか。まぁ、たぶん指名依頼とかがあった場合に必要なんだろうな。受ける気はないから適当でいいか。


「書き終わりました」


 手渡された用紙に偽りを混ぜた全ての情報を書き終えると、受付嬢に手渡した。


「試験はこちらになります」


「試験か」


 冒険者ギルドでは二十歳未満は未成年だからな。まぁ、筆記も実技も魔法さえ絡んでこなければ問題ない。


「えぇ、見た目が弱そうな人には試験をやってもらうことになっています」


 受付嬢は荒木に対して事実だがあまり言われたくないことを平然と言い放った。


 判断基準見た目かよ。年齢じゃないのか。確かにこの国ではどうか知らないが未成年ではあろう年齢だからだと思ったのに、寄りにもよって見た目か。確かに身長も低くて貧弱そうな見た目はしているから仕方ないか。


「わかりました」


「ふふっ、嘘ですよ。からかっただけです。試験はどんな人にも受けてもらう決まりです」


 荒木の落ち込んでいそうな様子を見ていた受付嬢はその様子を見るのが楽しいようでうっすらと笑みを浮かべていた。暇つぶしに利用されたみたいだった。


「はぁ」


 荒木は早朝にも係わらず、絡んでくるる受付嬢の元気さに溜息を漏らした。


 朝から元気だな。受付嬢のお姉さんと話したいならこれに反応したら好感を持たれるのだろうけど、そこら辺の受付嬢なんていい情報を持っているとも思えないし、どうでもいいから無視しよう。


「で、試験はいつ頃ですか」


 受付嬢はニヤニヤしていた。受付嬢は荒木を退屈凌ぎのおもちゃにしようとしているのが見て取れた。荒木は面白い反応をすればいじられると思い、いじられないように一切の反応を示さないように無表情で淡々と聞いた。


「今日の午後からです。今日の午後に試験を受けに来てください」


「分かりました。午後に来ます」


「可愛くないわね」


 受付嬢は何の感情も示さなくなった荒木に興味を失ったようで、嫌味を言って来た。


 俺はあなたの暇つぶしを満足されるために来たわけじゃないからな。


 荒木は受付を去ると冒険者ギルドにある依頼書が貼ってある掲示板の前に立った、


 移動中、色々と採集していたから、採集依頼とかないかな。ギルドに入ることが出来ればすぐに納品できて金を作ることが出来るからな。


 荒木は依頼書を満遍なく見始めた。


 一応都会というだけあってびっしりとある。採集から護衛、何かしらのモンスターの討伐、新しく発見したダンジョンの調査、何かしらの偵察まで満遍なく依頼がある。試験が終わって冒険者になったら問題なく受けられそうだな。


 午後まで暇だな。次のギルドに向かうため町を見て回るか。


 荒木は依頼を見終わり満足すると暇つぶしのため町に繰り出した。荒木は市場らしき場所に辿り着いた。市場はまだ朝早いので人通りは少ない物の、そろそろ店を開けようと準備していた。


 まだ早いか。俺の能力で金を作るには糸で作り出した服を服屋で売るか。趣味で作っている武器又は使えそうなモンスターの素材を鍛冶屋で売るか。薬屋とかでモンスターの素材を売るかだ。まぁ、どれも大量に物資はあるし、いつでも売ることができるから後でも大丈夫そうだ。


 とりあえずもう一つのギルドに向かうための情報を得ないといけないが、まだ早いか冒険者ギルドに戻ろう。


 荒木は再び冒険者ギルドに戻ると、数人の人がテーブルに座り食事をしたり、雑談をしたりしていた。


 朝は誰もいなくて分からなかったが食堂見たいなのがあるのか。結構賑やかなようだな。受付に聞けばいいのか? あの列に並べばいいのか。


 荒木は取りあえず受付に並んでいる列の最後尾に並んだ。受付の奥を覗いてみるとせっせと忙しそうに動いている受付嬢たちの姿が見えた。


 こんなに混むのか面倒だ。今度からは好いている時間を狙ってこよう。


 暇だったので受付嬢たちの動きを見ていたら、一人他の受付嬢たちに指示をしている受付嬢と他の受付嬢たちと雑談している受付嬢が目に入った。


 今後このギルドを利用していくのならば、あの二人と仲良くなった方が情報を手に入れやすそうだ。考えておこう。


 そして、そんな受付嬢たちの姿を見るのも飽きた荒木はボーっと横から顔を出して眺めていると、稀に前の人たちがどこかへと連れて行かれて行った。


 たまに連れて行かれる人たちも俺と同じで試験を冒険者になろうとしている人たちかな。


「用紙を書き終えているので、登録のための試験をしたいんですけど」


「分かりました。あちらの部屋に行って待っていてください」


 受付嬢は手で目的の部屋を示した。荒木は受付嬢に言われた通りの部屋へと入って行った。部屋の中は何もなく皆適当に座っていた。荒木もそれになり適当に後ろの方に座って何かを待つことにした。


 これといって、強そうな人はいないな。エヴァンジェリアよりも弱い人たちばかりだ。


 荒木は他の人達を見てみたが面白そうな人はいなかったので、再びボーっと時が来るのを待っていると、受付嬢らしき人と女性が現れ目の前のボードに草のえが描かれている紙が張り付けられていった。


 あれはクテパ薬草、トリパ薬草、ナルピ薬草、コンダ草、ルメナ草、ミノマ草、パイト草、ソイノ草、トルイ草、ジュリト草だな。どれも回復量の少ない回復薬と治癒薬を作るのに必要な素材だ。俺が通って来た道には別の種類の物しか生えていなかったから捕りに行かないといけないな。


「私は副ギルド長のヘーゼル」


「私は受付嬢のミーシャです」


「これから皆様にはギルド試験を行ってもらいます。今張り付けた紙に書いて有る10種類の素材のうち3種類の素材を1週間以内に10本ずつ採取してきてください。一週間以上経過したらその時点で失格になりますので注意してください」


 生えている場所はここから南東にあるミサナ森林か。俺ならばすぐに着く距離だが、普通の人だと魔法で強化されている異世界の馬を使っても休まなければ1日と少し、休めば2日くらい時間が掛かるから一週間もの猶予があるのか。


「それでは試験開始です」


 ミーシャが合図すると冒険者を目指そうという人たちはぞろぞろと部屋を出て行く瞬間荒木より少し背の高い黒いフードを被っていて素顔が見えない人が素早くみんなの横を掠めて、装備品の高そうなものを膨らまないポケットに手袋をはめている手で詰め込んでいった。


 あっ、盗賊だ。人ではないような気配でなんの種族かさっぱり分からないが、これは一回情報収集のために話しておきたい方がいいかもしれないな。


 荒木は手からよく見ないと見えない細くて透明な糸を盗賊の腰付近と後頭部に糸を張り付けるとその盗賊の後を追った。盗賊が路地に入ると、荒木は誰にも見られないように家の屋根に跳び、そこから盗んだ装備を確認し始めた盗賊を見た。


「あの程度の連中しかいないのか」


 盗賊は取られたことにも触られたことにすら気づかず余りにも、無防備で無警戒な者たちの弱さに目的を妥協せざる終えないのかもしれないという考えに至り落胆していた。


 こんなところで盗品を確認とは下っ端だな。まぁ、いい。何かしらの情報は掴めるだろう。


 荒木は腰と頭部に張り付いた糸を伸ばし、腰と口を糸で覆うと、盗賊をそのまま屋根の上まで引き上げた。


「んーー!(きゃー!)」


 盗賊はいきなり人生で一度も体験したこともない浮遊感が体を襲い、悲鳴を上げたが口を白い糸が塞いでいたので悲鳴は遮られていた。


「何!? 何!?」


 盗賊は何が自分の身に起こったのか訳も分からずキョロキョロと可愛く頭を振りながら辺り見回していた。


「盗賊だよね。さっき試験の説明終了後に他の人達のアイテム盗ってたし」


 荒木は盗賊に適当に言っているのではなく、見抜いたことを信じてもらうためにしっかりとその時の状況を交え簡単に聞いた。


「あの場にいたのね。あれは挨拶代わりとパートナー探しのためにしたことなんだけど、高いものは何も盗ってないと思うから被害はさほどないと思うけど、誰も気づかなかったよね」


 盗賊は自分の盗みを見抜くことが出来るパートナーになりうる実力者の持ち主の存在が、その場所にはいない事実に期待外れだった感を醸し出していた。


「そうか」


 なるほど。誰かとチームを組もうとしていたのか。まぁ、そんなことより情報を聞き出さないと。


「あれ? 捕まえに来たんじゃないの?」


 盗賊は荒木が盗みを働いた自分を捕まえに来ていると正義感の強い人なのかと決めつけていたのか勘違いしていた。


「あー、そんなことはしないよ。ただ、闇ギルドを知っているかどうかを聞きに来ただけだ」


 荒木は下っ端程度の盗賊がそこまで詳しく何かしらの情報を持っている可能性が低いと思い自分にはどうでもいい話を無視して、早速闇の者が知っている言葉を最初に聞いた。


「闇ギルド?」


 盗賊は本当に聞いたこともないのか聞きなれない言葉のように言った。


「盗賊なのに知らないのか」


 この程度の盗賊では知らないということか。それともまだこの町に来て間もないのかもしれないな。


「盗賊は盗賊でも私はダンジョンとかで罠や部屋などを探したりできる専門の盗賊なんだけど」


「盗むのが本業じゃないんだ」


 荒木は目当ての情報が手に入ることはないと思い、変な奴と捕まえて話してしまったことにガッカリしてしまった。


 取りあえず試験を終えてから闇ギルドに繋がりそうなものを探すか。


 荒木は目的の情報を得られず盗賊に用がなくなったので置き去りにして、試験の課題を終えるために森に向おうと、この場所を後にする前に盗賊が話しかけてきた。


「私とチームを組んでもらえませんか?」


「えっ、何でそうなるの?」


 荒木はなぜ今よくわからないタイミングでチームに誘うのかよくわからなかったので、少し考えた。


 何か目的があってその目的のために強い奴と早くチームを組みたいのか。余裕があればまた次の機会に選べるからな。


「チームは組まないんですか?」


 考えている荒木に盗賊はこれならばチームを組んでもらえるのではないかと思い追い打ちをかけるように誘って来た。


 組むか組まないか。こいつが何の種族か分からないが人間ではないからこいつの種族の寿命が長ければチームを組んで見てもいいか。


「種族は何?」


「オクリタですけど」


「オクリタ? なにその種族。聞いたことないんだけど」


「まぁ、知りませんよね。有名じゃないですし」


 エルフやダークエルフとかだったら即決なんだけど。


「ちなみに寿命ってどれくらい?」


「500歳くらいですけど」


 俺との半分くらいの寿命か。長寿の種族かな。これは有用だ。この国を拠点にしばらく情報を集めたいからチームを組んでみてもいいか。


「わっかた。チームを組もう」


「ありがとうございます」


「とりあえず。自己紹介か。俺は異世界人の荒木だ。気軽に荒木と呼んで。よろしく」


「異世界人なんですか!?」


 また驚かれるのか。異世界人と言っても驚かないほうが普通みたいだ。


「そんなことはどうでもいいじゃないか」


 荒木は毎回異世界人と言ってから、驚かれてから説明するのが面倒なので、異世界人について無視してもらおうと言った。


「はい。自己紹介でしたね。私はレノールです。よろしくお願いします」


 レノールは探られたくない雰囲気から異世界のことに関して何か聞かれた葉都合が悪いのかもしれないと思い善意からそのことは流して、自己紹介した。


 何か勘違いされているが、これまでの話を省けるならこれくらいの誤解なら何も言わなくてもいいだろう。


「といっても、チームを組むにはまず試験に受からないと」


「そうですね」


「レノールはそこら辺で待ってな。俺がすぐに取ってきてあげる」


 荒木はそのまま屋根伝いにミサナの森の方向へと消えて行った。


「なんかすごい人とチーム組んじゃったな。これでいいのかな?」


 レノールはそれから、屋根から壁伝いに盗品を見ていた場所に降りると人混みに紛れるようにどこかへと消えて行った。

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