第八話 うーんめーいーのであーい
荒木が異世界に来て一週間が経った。
「ふぅー、今までのストレスが発散出来て満足な一週間だったな」
荒木は崩壊する洞窟の瓦礫などを平然とした顔で躱しながら、一週間のストレス発散を思い返して爽快な気分になっていた。
「しかし、道中にある外部と内部で大きさの違う洞窟はおもしろかったけど、及第点はいるがいい敵には巡り合えなくて残念だったな」
これだけ暴れまわって強い敵が出てこないということは他の人とかに倒されている可能性があるな。ならあの洞窟みたいなところを他に探すか? もしくは多大他人に迷惑が掛かるが、第二計画を実行するしかないかな。
「また服が汚れちゃったな。作り直さないと」
荒木が汚れた服を解きながら新しい服を気で編んでいると、空のさらに上から何かが落ちて来る感じがしたので、空を注意深く見ると隕石が落ちてきていた。
「何!? あれはサプライズストーン。隕石か」
まさか隕石が落ちて来るとは。まぁ、この星は地球よりも圧倒的に大きいみたいだから、隕石の1つや2つ落ちて来ても不思議ではないか。しかも、異世界の隕石だ。新たな鉱石が見つかるかもしれない。これを見逃すわけにはいかない落下地点に向かうか。
荒木はそう思うと隕石が落ちる地点へと走った。隕石に落下地点付近に着いた荒木は辺りを見回した。
どうやら近くに村などはないみたいだな。これなら隕石を適当に処理しても問題ない。さてと、受け止めるかそれとも砕くか。どっちにしようかな。
荒木は落下地点で隕石が落ちて来るのをのんびりと考えながら見つめていると、隕石に付着する物体を見つけた。
あの黒いゴツゴツしている物体は何だ?
荒木が大気圏に突入し高温を帯びている隕石に付着している黒い物体は大気圏を過ぎ隕石が三つに剥がれ落ちると、荒木の方に向かって落ちてきた。
あれは地球外生命体。
「エイリアンか!」
黒いエイリアンは荒木を囲むように降り立った。そして、すぐ後ろに隕石が落ち、地面を抉るほどの威力の衝撃と気をなぎ倒す爆風が荒木とエイリアン3匹に襲い掛かったが、両者ともその風を何事もなくそよ風のように受け、一切動かずに向かい合っていた。
なんか色んな所が角張っていてかっこいいけど、強いのかな? 戦ってみればわかるが、俺もエイリアンと似たような存在だからな。まずは文化交流がてらに会話でもしてみるか。
「ここに何しに来た」
荒木は気を使いエイリアンと同じ言語に言葉を変えて、フレンドリーに会話をしようと話しかけた。同じ言語で話しかけているのも係わらず、エイリアンは一切の言葉に反応せずただこちらの動きを見ていた。
聞く耳を持たないか。そして、この状況とこいつらの視線。俺を敵と認識しているみたいだ。それは願ったりかなったりだ。まぁ、戦っても良いみたいだから、遠慮なく行きますか。
荒木は目の前のエイリアン一匹に挨拶代わりのパンチを顔面目掛けて放った。エイリアンはすぐに躱すと、他の2匹のエイリアンは右足からが銃を抜き放ち、容赦なく撃って来た。
「銃を撃つのか。おもしろい」
荒木は笑いながら楽しそうに言った。
貫通力のある固そうな鉄の塊の弾丸か。俺ならば体に当たっても何ら問題はないけど、最初の弾丸は定石どおりに避けてあげるか。
荒木は冷静に後方2匹のエイリアンから解き放たれた銃弾を目で追いながら難なく躱して、3匹のエイリアンから距離を取った。
油断は禁物だが今の感じから俺より身体能力がさほど高くなさそうだからな。少し遊びつつ、本当の実力を引き出してみるか。
エイリアン3匹は再び荒木を取り囲み撃って来た。荒木はすぐに三方向からくる銃弾を躱し、そのうちの一匹に近づき腹に一発パンチを食らわせた。荒木のパンチを食らった一匹はそのまま吹き飛び木に体をぶつけた。エイリアンが当たった木はぶつかった衝撃により折れた。
普通の人間よりは硬いな。まぁ、堅いのは見た目から見ても明白か。今の攻撃でダメージはあまりないみたいだな。
殴られてエイリアンはすぐさま起き上がろうとしていた。殴られたエイリアンの起き上がる時間を稼ぐためか銃を荒木に向けて撃ち、牽制攻撃を行った。
うん。連携も取れているがこのまま、ずるずると相手のペースに任せて長引かせていけば、向こうも戦法を変えて来るのは分かるが、それでは遅いから銃弾が俺の肉体には無力だということを知らせて奥の手を早めに見させてもらうか。
エイリアンが先程と同じ攻撃を行い、次もおそらく似たような攻撃をしてくるだろうと予測した荒木は同じ技では飽きてしまっていたため、手っ取り早く違う技を見せてもらうため、エイリアンの放った弾丸を避けずに自分の肉体で受け止めた。
体に当たった弾丸は荒木の体を貫通せずにそのまま砕け散って行った。
これでもし、エイリアンたちに違う手があれば違う攻撃をしてきてくれるだろう、同じ武器で攻撃して来たらその時は終わらせてしまおうか。
エイリアンたちは当たらないと見るや取り出した銃をその場に捨てて、4本の指の手をこちらに向けた。その掌の中心には穴が開いており、穴から光線が放たれた。荒木は銃弾と同様にしっかりと光線を目で追い見ながら躱した。光線は躱されると地面を焼きつつ、小さな穴を開けた。
俗にいうビームという奴か。やはり、銃弾は様子見か。しかし、見る限り威力はローブの人の虹色の力よりは低いが銃弾よりは強くて早いな。それでも、この程度なら問題なく躱せてしまうし、別に当たっても無傷だ。これももう一回見ても意味はなさそうだな。
荒木はビームも見ても意味はないと判断して攻撃を再び受けることにした。再びくるビームを真顔で受けて、その攻撃では効かないことを挑発しつつ、もっと強い攻撃はないのかとエイリアン3匹に向けて人指し指を立て、クイックイッと挑発した。
3匹は荒木の挑発には乗らないものの、現状の武器では何も効果がないと判断したらしく、ビームを出す掌を荒木に向けるのを止めた。エイリアンたちは左腿に右手を添えると左腿が開き、刀の柄らしきものが出現した。
しかし、あの武器を隠している足はどうなっているんだ。倒してから解体してみるか。
荒木は物騒なことを考えつつもエイリアンを注視していた。
エイリアン3匹はその柄を右手で引き抜くとエイリアンの体の3分の2ほどの刃を持った刀が現れた。エイリアンたちは刀の峰をこちらに向けて右手を下段に構えた。
あれは刀か。これがこのエイリアンたちの切り札なのかな? しかも、正面ではなく下段に構えるのか。受けて立とうじゃないか。
荒木はエイリアンが構えると相手がどんな攻撃をするのか観察したかったため、わくわくしながら3匹のエイリアンが攻撃してくるのを待った。
睨み合いが続く中エイリアン3匹はついに決意したのか足に力を蓄え始めた。エイリアンたちは足に力を蓄え始めると、エイリアンたちの背中から何か変な音が聞こえた。そして、荒木がその音が何なのか考えていると突然ジェットエンジンのような音がうるさく鳴り響いた瞬間。エイリアンたちが出していた銃の弾丸よりも速い速度で、刀を下段に構えた状態で同時に地面を風圧で抉りながら迫ってきた。
いい連携だ。この状況なら普通の人ならまず逃げられない。普通に逃げるとしたら上か下かな? まぁ、跳んで避ける方が普通か。
荒木は上に跳ぶと3匹のエイリアンの刀は荒木を追跡するように地面を切り裂きながら振り上げてきた。上から見るとエイリアンの背中にスラスターみたいなのが付いているのが見えた。
あの背中のスラスターみたいなものでいきなり加速したのか。さっきまではなかった。体の一部を変形させる能力を持っているのか。中々に面白いね。あれなら空も飛べそうだな。跳んで逃げることも想定していたか。
荒木は何もない空中を蹴るとさらに上昇し、エイリアンの刀が届かない高さまで到達した。3匹のエイリアンが刀を振り上げるとその刀から何かが放たれた気配を荒木は感じ取った。さらにエイリアンは先程ビームを発射した左手をこちらに向けてきた。
斬撃も放つことも出来るのか。さらに追い打ちと言わんばかりのビームか。さっき効果がないと思って刀を抜いたところから、たぶん、これがこの攻撃の一連の動作みたいだな。
3匹のエイリアンは左手のビームを発射した後斬撃と、ビームの後に続くように自分たちも背中のエンジン全開にすると振り上げた刀を上空に向けた。エイリアンたちはそのまま荒木に向かって突撃して来た。
まぁ、背中に弾丸よりも早く移動させることが出来るスラスターがあるのだから普通に飛べて当然か。しかし、突きは余裕を持って避けても大体同じになりそうだから、受け止めるか。
荒木は迫りくる斬撃とビームを空中で体を捻り全て躱すと、三匹のエイリアンの刀を両手と歯で器用に受け止めた。両手で受け止めたエイリアンは力任せに遠くの方に吹き飛ばして、歯で受け止めている刀のエイリアンは真下の地面にたたきつけるように顔を地面の方向に動かして吹き飛ばした。
どうせ攻撃を受け止めることになるんだったら靴脱いでおけばよかったな。それか、足袋とかの足の指を自由に動かせる靴を後で作るか。
荒木は重力に身を任せて地面に降ると次にエイリアンがどんな攻撃を見せてくれるのか興味津々で待っていた。エイリアンたちはエンジンを併用し、荒木の懐に高速で入り左手のビームをたまに荒木に向けて放ちつつ、右手の刀を振るいそして、エンジンを使い他のエイリアンと入れ違い逃げるヒット&アウェイ的な戦い方を始めた。
何か他に隠している技があるかもしれない可能性があり、見てみたいと思っていた荒木はそのエイリアン3匹の攻撃をしばらく躱し続けることにした。しかし、エイリアンたちは荒木に接近しては全ての攻撃をされては後退して、また攻撃することを絶え間なく続けてきた。先程から同じ動きしかしていなかった。
そうか。もう技は出し尽くしたか。案外早かったな。じゃ、もう興味はなくなったし、終わらせるか。
荒木は再び3匹が荒木を取り囲みエイリアンが手を構えたと同時に、3人のビームを撃つ手を荒木はその場で回転して両腕を刀のような切れ味の腕刀でエイリアンの両腕切り落とした。切り落とされたエイリアンの腕からは黒い血が大量に噴き出した。
黒い血だ。ん? この臭い。石油か。このエイリアンの血は石油なのか。可燃性がありそうだ。
荒木は黒い石油の血に視線を送っていると、エイリアンたちは黒い血をだらだらと出している状態で立ちあがった。立ち上がった3匹のエイリアンの雰囲気が変わった瞬間エイリアンが真っすぐこちらに向かって全速力で突撃してきた。
これは自爆特攻。神風というやつか。根性ある奴らだな。
荒木は命を捨てる覚悟をして迫りくるエイリアン3匹を褒めつつ、あえて攻撃を食らおうとその場を動かずに待機した。そして、エイリアン3匹が目の前に来ると3つの眩い閃光が3匹のエイリアンの体から現れた。
「やば」(核爆発エイリアンの数が増えるとその分威力が上がる)
荒木はそのエイリアンの爆発の閃光が始まる瞬間を目でしっかりと見つつ、すぐさま気を纏い両手を組んでガードした。そして、荒木は爆発の閃光に飲み込まれた。
エイリアン3匹の爆発により、周辺の木々は消失。遠くの方の木々たちは炭化。その衝撃でさらに奥の木々はなぎ倒されていた。爆心地付近はほぼ更地と化していた。その中で、荒木派は爆心地の近くにもかかわらず何事もなかったかのように無傷だった。
自爆か。今の一瞬で気を纏っていなかったら、服がボロボロになっていただろうな。やはり、油断は禁物ということか。
荒木は取りあえず辺りを見渡した。来た時の自然豊かな土地とは比べ物にならに程に風変わりした景色が荒木の目に映った。
いやー、酷いもんだね。これは俺が作り出した血の森とは違って再生するのに十数年の時が掛かりそうだ。幸いなことに人里とかはなかったから、被害者は出ずに済んだか。もし、人がいたらただじゃすまない被害が出ていたからな。取りあえず、爆発で何も残っていないと思うがエイリアンの死体を念のため探してみるか。
荒木は爆発により高温になっている地面を平然と歩きエイリアンが爆発したと思われる、クレーター付近を歩いて探索した。
「やはり、あの爆発でエイリアン体は消滅して死体は残らなかったか」
解体できなくなったか。もう、ここに用はないから、隕石の落下地点にでも行ってみるか。
荒木は死体がないことを確認するとその場を放置して、隕石が落ちている方角を急ぎ向かった。荒木は爆発地域から少し離れると服をその場に脱ぎ捨て、新しく同じ服を糸で作り出し着替えた。
あのエイリアンたち。最後俺に気を使わせるとは中々やる相手だったが、評価としても異世界に来てから今まで戦った敵の中では上位の部類に入るけど、弱かったな。
「さてと、どんな鉱石が入っているかな?」
荒木は隕石に辿り着くと隕石をペタペタと触ったり、砕いたり、齧ったりして、隕石を見て鉱石を確認してみると、イリジウムと鉄が主成分の隕石だった。
地球でも見ることも出来る隕石か。外れだ。表面上にはいい物はないみたいだから、後は中を確認してとっとと、元々の目標に戻るか。
荒木は目に気を集中させて、隕石の内部を覗き見てみるとそこには人型の形をした何かが体育座りの状態で存在していた。
あれ、鉱石じゃなくて人のようなものが入っている。気になるから取りあえず開けてみるか。
荒木は取りあえず、隕石に向かって手刀を放った。荒木が手刀を放つと隕石の中の人らしきものを一切傷つけずに隕石が綺麗に真二つに割れた。隕石が割れると気絶している髪の毛がキラキラ綺麗に光っているこの森に場違いな奇抜な服を着た女性が現れた。
「綺麗な髪」
荒木は今までに見たこともないあまりにも美しすぎる髪の毛に思わず見とれて自然と口に出して、綺麗だと言ってしまった。
どうやら気絶しているみたいだな。直接触って調べてみる方が速いか。
荒木は遠慮なくキラキラな髪の毛の女の子の手足と頭を触り彼女が今どんな状況になっているのか詳しく調べ始めた。
見た目通りしばらく起きそうにないくらい気絶しているな。少し脱水気味だ。たぶん長くこの中にいたのか。あと、多少骨も折れているが、まぁ、このまま放置していても健康状態に異常はなさそうだから、治すのは急がなくてもいいな。
ついでに、人間ではなさそうだかこの子の身体能力を調べてみるか。
荒木はすぐに腕や戦うために必要な部分などを手で揉み、この子の筋肉がどれくらいの性能を有しているのかを詳しく調べつつ、気を使い骨折している個所を治した。
あのエイリアンより身体能力は低いが、人間よりは身体能力が高い。とりあえず、色々と調べ終えたし、そろそろ起こすか。でも、こんな場所で起こすのも忍びないから、川辺とか便利なところに場所を移して起こすか。
荒木は髪の毛の綺麗な女の子を優しく担ぎ、川を捜し、川辺へと場所を移した。川辺に付いた荒木は髪の毛の綺麗な女の子をおろしてから、テントを張り、火を起こし、水を沸かしたりなどして、彼女が起きても何でも出来るように起こす準備を整えた。